世界食べ尽くしの旅 Españoleando

スペイン在住のフードライターが、素敵な人達に出会いながら、世界中を遊んで食べ尽くすの記録

ベジタリアン(菜食主義者)となる理由

   

ヨーロッパに住んでいると、日に日にベジタリアンの人達が増えているのを実感します。人が数人集まれば誰かがベジタリアンである確率が高いので、ホームパーティの時は野菜だけを使った料理を何品か用意するのが当たり前となりました。統計によればヨーロッパ各国のベジタリアン比率は10%程度なのだそう。でも都心や若者層に限れば、30%を超える人達がベジタリアンだと言われています。

ベジタリアンとなる理由

人は何故、ベジタリアンになろうと決心するのでしょうか。肉を生理的に受け付けない、アレルギーがある、両親がベジタリアン。そんな理由で必然的にベジタリアンとなった人達もいますが、最近では動物愛護の精神や地球環境保護の為に、強い意志を持ってベジタリアンとなるケースが増えているようです。

完璧なベジタリアンではないけれど、肉や魚は偶にしか食べない「ほぼほぼベジタリアンの人達もいます。ポリシーや理由などなく、ただ単に野菜が好き、または野菜を中心とした生活が健康や美容に良くダイエットにもつながる、と考えている人達です。

そんな潜在的ベジタリアンを巻き込みながら、めきめきと拡大しているのがベジタリアン市場。ベジタリアン専門のレストランも増えましたが、たとえ普通のレストランであってもベジタリアン対応メニューを用意しているのが普通になりました。スーパーにはベジタリアン・コーナーが常設されるようになり、ベジタリアン専門のスーパーマーケットも多くなりました。

多くのヨーロッパの人達がベジタリアンとなった悲劇とは

ヨーロッパのベジタリアン事情を語るのに、20年前の出来事に触れない訳にはいきません。ヨーロッパの人達を恐怖に陥れた狂牛病パニックです。汚染された肉骨粉を飼料として与えらていた牛が感染源となって、イギリス一帯に狂牛病、正式名称で牛海綿状脳症が蔓延しました。

読んで字のごとく、感染すると脳に無数の穴があき、スポンジのようになってしまう病気です。脳の萎縮がおこり神経が侵され、全身が麻痺して死に至ります。

確立された予防法、治療法、治療薬はありません。しかも感染して直ぐ発症する訳ではなく、2年から10年に及ぶ潜伏期間を持ちます。そして一度発症すると急激に進行し、数か月で死んでしまうのです。

そんなまるでホラー映画のような設定に、イギリス人達は恐怖しました。牛肉を食べる人がいなくなりました。

その頃私はスペインに住んでいて、テレビで連日のように狂牛病の報道を見ていました。どこか他人事のようにも感じていて、私に限らず多くの人達が、イギリス産ではない自国の牛肉さえ食べていれば大丈夫だと思っていたのです。

ところが狂牛病に感染した牛がヨーロッパ各国で確認されるようになりました。あっと言う間に、ヨーロッパ全体が牛肉を食べる事に怯えを感じるようになりました。

時を同じくして、ヨーロッパに口蹄疫が流行しました。狂牛病は牛に限られた感染症でしたが、口蹄疫は蹄が2つに割れた動物、牛、豚、羊、鹿、イノシシなどに感染します。狂牛病とは違って人間には感染しない病気だったのですが、ウィルスの伝播力が強く、空気感染もします。

感染した家畜は早急に殺処分して、周辺を徹底的に消毒する必要がありました。宇宙服のようなものを着た人達が、山のように積まれた家畜に火を放ち、周辺を徹底的に消毒している、そんな映像がテレビに繰り返し流れるようになりました。

これはヨーロッパの人達に大きなインパクトを与え、牛肉だけでなく、肉全般に対する不信感へと繋がりました。あれだけ肉を中心に食べていたヨーロッパの人達が、意識的に肉を避けるようになり、ヨーロッパにベジタリアンの土台が出来上がったのです。

その後色々な対策がされ、肉の安全性を取り戻す事が出来ました。それでも20年前のあの事件から、肉を一切口にしていない人達が多くいます。再び肉を食べるようになった人達も、心のどこかに肉に対する不信感を抱えています。

増加するベジタリアン人口

現在では恐怖と不安からベジタリアンとなった人達が家庭を持ち、ベジタリアンの環境で子供を育て、ベジタリアンが当たり前となった世代が誕生しました。健康や美容、ダイエットのため、肉は大好きだけれど頑張ってベジタリアンとなった人達、動物愛護や環境保護のため、強い意志を持ってベジタリアンを貫いている人達も増えています。

ヨーロッパだけではありません。肥満大国であるアメリカもベジタリアンに傾向しています。インドのように宗教的な理由で、国民の大半がベジタリアンの国だってあります。今後もベジタリアンの人達は、世界的な規模でもっともっと増えていくことでしょう。

今後のベジタリアンの世界

ベジタリアンを菜食主義と訳すのは間違っています。野菜のベジタブルから作られた名前ではなく、ラテン語の「新鮮な、活気ある、生命力に溢れたの意味を持つvegetusという語源から発生しているからです。

ベジタリアンは人数が増えているだけではありません。恐怖と怯えから、仕方なく肉を食べる事をやめた時代は終わりました。新しい世代の人達が作るベジタリアンの世界は、ベジタリアンである事を誇りとし、ベジタリアンである事を楽しむ世界です。

それはまさにベジタリアンの語源通り、新鮮で生命力溢れた活気のある世界。色々と創意工夫されたベジタリアン料理が増えていて、今後のベジタリアンの世界が、どのように発展していくのか目が離せません。

2020年には東京でオリンピックが開催されます。世界中から多くの観光客が訪れる見込みで、その中にはベジタリアンの人達も多く含まれているはずです。日本にはベジタリアンの人達が安心して食事をする環境が整っているのでしょうか。2020年までに日本の人達にもっとベジタリアンの世界を知ってもらえるよう、今後も色々な情報を発信していけたらなと思います。

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