世界食べ尽くしの旅 Españoleando

スペイン在住のフードライターが、素敵な人達に出会いながら、世界中を遊んで食べ尽くすの記録

スペイン料理のタパスとは何なのか、ピンチョスとはどんな料理なのか?

      2019/02/19

スペインの食文化を語るのに欠かせない存在がタパスとピンチョス。いったいどのような料理なのでしょうか。スペインは美しくて美味しい国。スペイン在住のフードライターがスペイン料理の魅力をとことん語ります。

 

スペインの食文化を代表するタパス、新勢力のピンチョス

スペインの伝統的な食文化、タパスとは飲み物やアルコールを楽しむ時に一緒に食べる、小皿で提供される料理の事。スペインでは多くのレストランやバーで、飲み物を注文すると無料でタパスがついてきます。本格的な食事に入る前に、軽く何かをつまんで食欲をそそり、食べる意欲を増進させるのがタパスの狙いです。

古くからある生活の知恵でもあり、空きっ腹でお酒を飲み、悪酔いするのを防ぐ働きもあります。タパスは古い歴史を持つ、スペインを代表する食文化。それを発展させたものがピンチョスです。実は最近のスペイン、タパスよりピンチョスをメインにするレストランやバーが増えていて、近い将来、タパス主体の勢力図が塗り変えられるのかもしれません。

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの新勢力、ピンチョスとはどのような料理なのでしょうか。タパスもピンチョスもアルコールなどを飲む時に食べる、小さな割り当ての料理を意味します。両者の違いはずばり、見た目。タパスは小皿で提供される料理なので、基本的に食べる時にフォークやスプーンなどが必要です。

一方ピンチョスはスライスしたパン、またはパンの代わりとなる食べられる土台の上に何かをのせたもの。手でつかんで、パクっと食べる事が出来る形態のものが多いので、フォークなどを必要としません。そして何よりもピンチョスはタパスより豪華に見えます。一つ一つ手が込んでいて、使っている食材もピンチョスの方がレベルが上。それはタパスが無料で提供されるのに対して、ピンチョスは有料の場合が多いからです。

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スペインのタパスとピンチョスの違い

通常タパスは選ぶ事が出来ません。何か飲み物を注文すると、お店側が適当に見繕ってタパスを出してくれます。選択される事がないので、見た目より内容重視。それに無料である場合が多いので、食材が安く、手間暇のかからない料理が理想です。例えるなら大鍋で一気に大量に作れるような煮込み料理でしょうか。その点ピンチョスはお客様が目で見て選ぶので、どれだけ人の目を引き、美味しそうに見えるかが勝負となります。その結果ピンチョスは見た目麗しく、まるでアートのような仕上がりになっているのが特徴です。

とは言ってもタパスとピンチョス、出回り始めた頃はそんな明確な違いがあったのですが、今では同じ扱いをされる事が多くなってきました。ピンチョスに影響されて手の込んだタパスが作られるようになったからです。反対にここずっと続く経済危機の影響で、安い食材を使った、簡単に出来るピンチョスを無料、または安い値段で提供するお店も多くなりました。今後はタパスとピンチョスの境目がどんどん曖昧になって、同じものとして扱われていくのかもしれません。

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スペインのタパスとピンチョスの歴史

タパスはレコンキスタの拠点となった、アストゥリアス王国時代(718年~914年)から存在していました。ピンチョスが生まれたのはごく最近、やっとスペインに確かな復興の兆しが見え始めた1970年代の頃です。

スペインは第二次世界大戦だけでなく、スペイン内戦も生き抜かなければなりませんでした。国に平和が戻っても、人々の生活は困窮し、飢える人も多くいました。スペイン人にとって食事とは、長きに渡って飢えない為の手段でしかなかったのです。そんな状況が少しずつ変わっていったのは、スペインに観光業がもたらされてから。1960年頃から国をあげて観光業に力を入れ始め、今ではスペインの経済を支える程の存在となりました。

スペインは歴史的建築物が多く残る、観光資源豊かなとても美しい国です。世界遺産も多く抱えています。それでも多くの観光客が、スペインを訪れる一番の目的は太陽と海。お金持ちで日差しの少ないヨーロッパ北部の人達が、こぞってスペインのビーチへ押し寄せてくるようになりました。その結果スペインは色々な意味で、海岸線を中心に発展していきます。飢えない為でなく、食事を楽しむ場所が増えていったのも、お金持ちの外国人が多く集まるビーチ沿いからでした。

 

スペインのピンチョスは何処で食べるのが一番か

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そんなスペインのビーチを代表するのが、北部バスク地方にあるラ・コンチャ海岸です。国内外のお金持ちが集まる事で有名なビーチでもあるので、レベルの高いレストランやバーが沢山あります。その中の、とあるレストランの主人が、食べやすいようにパンの上に何かをのせてお客様に振る舞い始めました。これがピンチョスの起こりです。

もともとバスク地方は食べ物に対する意識や愛が強い土地でした。スペイン随一の工業地帯で、他のどの都市より経済力もあります。舌の肥えた各国のお金持ち達だけでなく地元の人達も巻き込んで、この地に生まれたピンチョスはどんどん創意工夫され発展していきました。この辺りのレストランやバーが中心となって、美味しいだけでなく、見た目にもこだわった、才色兼備のピンチョスが競い合うように生み出されていったのです。今でも毎年ピンチョスの優劣を競う、多くのコンテストが開催されています。

そんなピンチョスの本場、バスク地方では、長いカウンターの上に所狭しと色々なピンチョスを並べているレストランやバーが多いです。美味しそうなだけでなく、色鮮やかで見た目も麗しいピンチョスが、ずらーっと並んでいる様は大変インパクトがあります。スペイン人はもとより、外国人の関心を大いに集め、とても絵画的なので多くの写真が撮られ世界中に発信されました。今でいうインスタグラム映えする料理です。

そんな影響も加わって、最近ではスペイン料理と言えば自動的にピンチョスを思い浮かべる人の方が多くなっていると聞きます。食べ物は五感を使って楽しむもの。目に見て楽しいピンチョスの文化が、今後はスペインに限らず世界中に飛び火するのではないでしょうか。目で見て楽しいだけでなく、ちょっとずつ色々な味を楽しむ事が出来るピンチョスのスタイルは、選択肢の多くなった今の時代の人達に最良な形なのかもしれません。

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