日本人の心のふるさと「伊勢神宮」をはじめ、豊かな海と山の幸、そして最先端のレジャー施設が共存する三重県。2026年、旅のスタイルが多様化する中で、三重県は「本物志向」の大人たちを惹きつけて止みません。歴史の深淵に触れ、絶景に息を呑み、至高のグルメに舌鼓を打つ。今回は、そんな五感を満たす三重の旅へご案内いたします。
日本の原風景に出会う「丸山千枚田」の造形美

Kiwachiiki, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
熊野市丸山地区の斜面に、小さな水田が幾重にも連なっています。1601年には2240枚の田がありましたが、過疎・高齢化による耕作放棄地の増加で530枚まで減少してしまいました。地元住民による保全活動が行われ、現在は1340枚まで復元し日本最大規模となっています。丸山千枚田の1340枚という数は、一枚あたりの平均面積が約10坪(約33平方メートル)と非常に小さいため、機械が入らず、今もそのほとんどが手作業で管理されています。
旅のポイント
毎年6月に行われる伝統行事「虫おくり」では、千枚田に無数のキャンドルが灯され、幻想的な雰囲気となります。「虫おくり」の行事は、かつて農薬がなかった時代、松明の火で害虫を追い払った実益を兼ねた儀式でした。
周辺の名物
熊野名産「新鹿(あたしか)のみかん」や、サンマの干物。
聖なる海岸線「夫婦岩」で結ばれる絆

Big Ben in Japan from Kawasaki, Japan, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons
2つの岩が夫婦のように寄り添うことから「夫婦岩(めおといわ)」と称されました。「夫婦岩」は日本各地に存在しますが、一番有名なのがこの伊勢市二見興玉(ふたみおきたま)神社のものです。夫婦円満や良縁のシンボルとされ、天気が良いと大しめ縄で結ばれた「夫婦岩」の間から富士山を望めることから、歌川広重の「富士三十六景」にも描かれました。夏至(6月21日頃)の前後には、夫婦岩の間から昇る太陽と富士山が重なる奇跡的な光景を狙って、多くの写真家が集まります。
夫婦岩を結ぶ「大しめ縄」は、1本の重さが約40kg、長さは約35mもあります。これが5本合わさっており、毎年5月、9月、12月の3回、神職と氏子たちの手によって架け替えられます。
二見興玉神社での「禊」の歴史
古来、伊勢神宮へ参拝する前に二見浦の海水で心身を清める「浜参宮」という慣習がありました。現在でも、その伝統を引き継ぎ、多くの参拝者がまずここを訪れます。境内に鎮座する多くの「カエル」の置物は、御祭神の使いとされ、「無事にカエル」「貸したものがカエル」といった縁起を担いでいます。
周辺の名物
二見名物「岩戸餅」や「御福餅」。
サイバーパンクな夜景に酔いしれる「四日市コンビナート」

ot0rip 604 from Japan, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons
SFのような景色を楽しめることから密かなブームとなっている工場夜景。中でも「四日市コンビナート」は「日本5大工場夜景」のひとつに数えられています。いくつか鑑賞スポットがありますが、「うみてらす14(四日市港ポートビル)」からの展望は、地上90mからのパノラマを楽しめる絶景ポイント。一番人気は海から眺めるナイトクルーズです。夜景だけでなく、ガイドによる解説も楽しめます。
日本の高度経済成長を支えた光の城
四日市コンビナートは、1950年代に日本初の本格的な石油化学コンビナートとして形成されました。かつては公害問題という困難な時期もありましたが、現在は世界最高水準の環境技術を備えた施設へと生まれ変わっています。その複雑に絡み合う配管と、放熱される炎(フレアスタック)が作り出す景観は、まさに「機能美」の極致です。
周辺の名物
スタミナ満点!四日市名物「大入道(おにゅうどう)ポーク」や「四日市とんてき」。
日本人の心の聖地「伊勢神宮」の深遠なる世界

z tanuki, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons
太陽にもたとえられる日本人の総氏神、天照大御神(あまてらすおおみかみ)をお祀りする「伊勢神宮」は、2000年の歴史を誇ります。日本に10万以上ある頂点にたつ神社の本宗(ほんそう)として格別の崇敬を集め、平清盛、足利義満、織田信長をはじめとした歴史上の重要人物たちも数多く参拝しました。
伊勢神宮の最大の特徴は、20年に一度、社殿を新しく建て替え、神様に移っていただく「式年遷宮(しきねんせんぐう)」です。これにより、古代からの建築技術や伝統工芸が途絶えることなく現代に伝えられています。
ここがポイント
伊勢神宮には「おみくじ」がありません。その理由は、「一生に一度はお伊勢参り」と言われたほど、神宮に参拝すること自体が「大吉」であり、それ以上の吉凶を占う必要がないと考えられているからです。
周辺の名物
定番の「赤福餅」や、太くて柔らかい「伊勢うどん」。
癒やしと戦いの歴史が交差する「湯の山温泉」
1300年の歴史を誇る「湯の山温泉」は、シカが温泉で傷を癒したという言い伝えから「鹿の湯」の名でも親しまれています。湯の山温泉は、かつて江戸時代に「恋結びの街」としても知られていました。心中を覚悟した男女が、温泉の不思議な力で生きる気力を取り戻し、幸せになったという伝説「折鶴伝説」が残っているからです。現在でも「折り鶴」を奉納する習慣が残る、ロマンチックな温泉地なのです。
見逃せないのは毎年10月に開催される三重県最大の炎の祭典「僧兵(そうへい)まつり」です。織田信長と勇敢に戦った僧兵たちに捧げられた祭で、僧兵姿の男たちがたいまつをのせた御輿を担いで練り歩きます。
御在所ロープウエイで行く雲上の世界

ヨシキ, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons
湯の山温泉のすぐそばには、鈴鹿山脈の主峰・御在所岳(ございしょだけ)があります。ロープウエイで約12分の空中散歩を楽しめば、そこには標高1,212mの絶景が広がります。冬は樹氷、秋は紅葉の名所として、通年で楽しむことができます。
周辺の名物
菰野町(こものちょう)の特産「マコモタケ」料理。
忍者の修行地でマイナスイオンを浴びる「赤目四十八滝」

Saigen Jiro, CC0, via Wikimedia Commons
室生赤目青山(むろうあかめあおやま)国定公園の中心に位置し、4kmにわたって23の瀑布が連なっています。最短で片道30分、最長で片道100分ほどのハイキングコースを歩けば、マイナスイオンたっぷりの空気の中、美しい景色を楽しむことができます。
かつて伊賀忍者がこの滝で修行をしたと言い伝えられており、現在でも「忍者修行体験」ができるアクティビティが人気を集めています。
特別天然記念物「オオサンショウウオ」との出会い
赤目四十八滝は、世界最大級の両生類「オオサンショウウオ」の生息地としても有名です。入口にある「日本サンショウウオセンター」では、さまざまな個体を観察でき、そのユーモラスな姿に癒されます。
周辺の名物
滝の入口で売られている「へこきまんじゅう」。サツマイモたっぷりの生地が絶品です。
モータースポーツの聖地で風になる「鈴鹿サーキット」

690 Noda, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons
モータースポーツファンの聖地で、F1日本グランプリや鈴鹿8時間耐久ロードレースなどが開催されます。レースのない日は、実際のレーシングコースをEVマシンで走行できるアトラクション「サーキットチャレンジャー」が大人気です。
F1日本グランプリの興奮
F1は、春開催が定着。 鈴鹿サーキットのコースレイアウトは、世界でも珍しい「8の字型(立体交差)」を採用しています。これは本来、タイヤの摩耗を左右均等にするための工夫でしたが、その結果、非常に難易度の高い戦略的なコースとなり、数々の名勝負を生む舞台となりました。
周辺の名物
鈴鹿の伝統工芸「鈴鹿墨」や「伊勢型紙」。グルメでは「鈴鹿うどん」も人気。
江戸の賑わいと伊勢グルメの宝庫「おかげ横丁」

Daderot, CC0, via Wikimedia Commons
伊勢神宮の参道に江戸時代の町並みが再現されています。「おはらい町」と呼ばれ、メインストリートとなる「おかげ横丁」には、三重県の特産品を販売するお店や土産物屋、郷土料理を楽しめるレストランが軒を連ねています。また週末には太鼓チームによる迫力あるパフォーマンスが行われます。
お伊勢参りの「おかげ」で今がある
「おかげ横丁」という名前には、お伊勢参りができることへの感謝(おかげさま)の気持ちが込められています。ここは単なる商業施設ではなく、江戸から明治にかけての建築様式を忠実に再現しており、歩いているだけでタイムスリップしたような感覚を味わえます。
おかげ犬
江戸時代、どうしても参拝に行けない主人の代わりに犬が参拝する「おかげ犬」という習慣がありました。首に道中のお金と目的を書いた袋をぶら下げ、旅人たちの助けを借りながら伊勢を目指したのです。おかげ横丁には、今でもこの「おかげ犬」をモチーフにしたお土産がたくさんあります。
周辺の名物
揚げたての「まる天」の磯揚げや、「豚捨(ぶたすて)」のコロッケ。
絶叫の聖地「ナガシマスパーランド」で限界を突破

Christophe95, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
国内最多の12のジェットコースターがあることから「ジェットコースターの聖地」と称されています。日本一の落差(93.5m)をもつ「スチールドラゴン2000」は、世界最長の全長走路(2479m)でギネスブックに登録されています。さらには世界第2位の全長走路で、木と鋼鉄を合わせた国内初のハイブリッドコースター「白鯨(HAKUGEI)」もあります。絶叫系の乗り物で有名な場所ですが、小さな子供向けアトラクションも多数あり、あらゆる年代の人が楽しめるスポットです。
総合レジャーランドとしての魅力
ナガシマリゾートは、遊園地だけでなく、国内最大級のアウトレットモール「三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島」や、広大な天然温泉施設「湯あみの島」が隣接しています。絶叫マシンで叫んだ後に、良質な温泉で疲れを癒し、ショッピングを楽しむという、贅沢な一日を過ごすことができます。
周辺の名物
「安永餅(やすながもち)」。桑名名物の細長いあん入り餅です。
忍びの世界をリアルに体感「伊賀流忍者博物館」

z tanuki, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons
忍者といえば伊賀と甲賀。三重県伊賀市には「伊賀流忍者博物館」があり、謎に包まれた忍者の世界を体感できます。敵の攻撃に備え様々な仕掛けが隠された屋敷、忍者に関する展示品、実際に使用されていた忍具を使った迫力満点の忍術ショーなどを楽しめます。
実践的だった伊賀忍者の知恵
伊賀忍者は、単なるスパイではなく、薬学や天文学、火薬の扱いにも長けた技術集団でした。博物館内の「忍者屋敷」では、ドンデン返しや隠し階段など、当時の忍者が実際に使っていたカラクリを、くノ一(女忍者)が実演を交えて解説してくれます。
忍者が使っていた有名な武器「手裏剣」ですが、実は実戦でトドメを刺すために使われることは稀でした。主な目的は、敵の注意をそらしたり、逃走の時間を稼ぐための牽制用だったそうです。また、忍者は常に身を軽くするため、現代の栄養食のような「兵糧丸(ひょうろうがん)」を自作して携行していました。
周辺の名物
伊賀名物「かたやき」。日本一硬いと言われるお煎餅です。
世界初、真珠養殖の奇跡「ミキモト真珠島」

Ganokure, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
1893年、「ミキモト」創業者の御木本幸吉氏が、鳥羽湾に浮かぶ真珠島で、世界で初めて真珠の養殖に成功しました。島内には真珠の全てを学べる博物館の他、昔ながらの白い磯着姿の海女(あま)さんによる作業の実演を見学することができます。
知的好奇心をくすぐるトリビア
真珠の養殖は、アコヤ貝の中に「核」を入れるだけでできるわけではありません。貝を外敵(赤潮や冷水)から守り、定期的に貝殻を掃除するなど、職人たちの献身的な世話があって初めて、あの美しい光沢(テリ)が生まれます。海女さんは、かつてはこの養殖アコヤ貝を海中に設置したり、回収したりする重要な役割を担っていました。
周辺の名物
鳥羽の新鮮な「伊勢海老」や「アワビ」の炭火焼き。
四季の光が彩る「なばなの里」の幻想夜

cyber0515, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
国内最大級の花のテーマパークで、約30万㎡の広大な敷地に四季折々の花が咲き誇ります。近年は花もさることながら日本最大級のイルミネーションでも知られ、毎年変わるテーマにそったイルミネーションの他、恒例となった100mの光のトンネルに人気が集まっています。
花と光の共演
「なばなの里」のイルミネーションは、LEDの数だけでなく、プログラミングによる繊細な色の変化と音楽との同期が特徴です。最新のレーザー技術やプロジェクションマッピングを融合させた、圧倒的なスケールの演出が大きな魅力のひとつ。また、春にはチューリップ、初夏にはアジサイ、秋にはダリアと、一年中いつ訪れても違った表情を見せてくれます。
周辺の名物
園内にある地ビール園「長島ビール園」の出来立てビール。
三重が誇る「食の芸術品」を堪能する
三重といえば「松阪牛(まつさかうし)」。日本三大和牛のひとつで、とろけるような食感のきめの細かい霜降り肉は「肉の芸術品」と称されています。松阪市を中心に肥育された黒毛和牛で、出産を経験していない牝牛(めすうし)の肉だけが「松阪牛」を名乗ることができます。東海道から参宮街道にかけては「牛肉ロード」と呼ばれ、「松阪牛」を堪能できる名店が点在しています。
松阪牛の美味しさの秘密「不飽和脂肪酸」
松阪牛の脂(サシ)は、他の牛肉に比べて融点が非常に低く、手のひらにのせただけでも溶け始めるほどです。これは「不飽和脂肪酸」が豊富に含まれているためで、これが口の中に入れた瞬間のとろけるような食感と、独特の甘みを生み出しています。
知的好奇心をくすぐるトリビア
「松阪牛にビールを飲ませる」「マッサージをする」という話を聞いたことがありませんか?これは牛の食欲を増進させ、血行を良くして均一なサシを入れるための伝統的な肥育手法です。すべての農家が行っているわけではありませんが、こうした深い愛情が最高級の肉質を作り上げているのです。
三重県を代表する郷土料理
めはり寿司

woinary from Osaka International Airport, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons
紀州・熊野地方に伝わる「めはり寿司」は、酢飯を味付けした高菜の葉で包んだ素朴な料理です。熊野地方は高菜の栽培が盛んで、古くから農作業の合間に「めはり寿司」を食していました。目を見張るほど大きい、または美味しいことから「めはり寿司」と名付けられました。
さんま寿司

めはり寿司
三重県沖で獲れるサンマはやせていて脂が少ないのが特徴です。そのため焼き魚ではなく、寿司や干物にする方が美味しいとされています。三重県ではさんまは古くから押し寿司にして食されてきました。特に祝いの席や祭事で欠かせない郷土料理となっています。


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