日本のアニメーション界を牽引し、世界中に熱狂的なファンを持つ細田守監督。日常と非日常が交差する美しい映像美と、普遍的な家族の絆や成長を描く物語で知られています。
宮崎駿監督と細田守監督:二人の巨匠をつないだ手紙

全ての始まりは『カリオストロの城』
細田守監督は中学生の頃、宮崎駿監督の映画『ルパン三世 カリオストロの城』を観て、言葉にできないほどの衝撃を受けたといいます。「自分もこんな世界を作ってみたい」、そんな純粋な憧れが、細田監督をアニメーターの道へと突き動かしました。
伝説の「不合格通知」:宮崎駿監督から届いた手紙
大学卒業後、細田監督はスタジオジブリの採用試験を受けました。最終選考まで残るも、結果は不採用。通常、不合格者には事務的な通知が届くだけですが、細田監督のもとには、宮崎駿監督本人から直筆の手紙が届きました。
その手紙には、「君のような人間を入れると、かえって君の才能を使い潰して、君の将来をダメにしてしまう」「君は自分の思うように作品を作るほうが向いている」と記されていました。
東映アニメーションへ:プロとしての第一歩
ジブリに落ちた細田監督は、1991年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社します。ここでアニメーターとして頭角を現し、演出、監督へとステップアップしていきます。
もしジブリに入っていたら、宮崎監督の強力な個性の中で「一人のスタッフ」として埋もれていたかもしれません。東映アニメーションという、多様な作品を制作する環境に身を置いたことで、細田監督独自の「作家性」が磨かれたのかもしれません。
監督デビューと幸運な飛躍:『デジモンアドベンチャー』の衝撃
1996年に『ゲゲゲの鬼太郎』で初演出を務めた後、1999年に『デジモンアドベンチャー』で待望の監督デビューを果たしました。
細田監督は、この時期をこう振り返っています:「遅咲きの自分が、演出家としてひとり立ちしてから3~4年という短期間で映画監督の仕事ができたのはすごく幸運でしたね」
挫折を力に:ジブリでの『ハウルの動く城』制作中断の真相
2000年、細田監督に大きなチャンスが訪れます。次世代の監督育成を急務としていたスタジオジブリの『ハウルの動く城』に、監督として大抜擢されたのです。ジブリの生え抜きではない外部の若手監督がメイン作品を任されるのは極めて異例の事でした。
しかし、制作過程での行き違いによりプロジェクトが停滞。このままでは作品を完成させられないという判断から細田監督の降板が決定されました。
こうして引退を表明していた宮崎駿監督が急遽復帰し、『ハウルの動く城』を作り直しました。細田監督はこの経験を「アニメ人生で最大の失敗であり、トラウマだった」と振り返っています。
奇跡の快進撃:『時をかける少女』
この苦い経験をバネに、細田監督は2006年、フリー第1作として『時をかける少女』を公開しました。当初わずか6館での公開でしたが、SNS以前の時代に圧倒的な口コミによって拡大し、最終的に40週間という異例のロングランを記録。
家族の絆を信州で描く:『サマーウォーズ』

2009年には『サマーウォーズ』が全国127館で公開され、4か月間にわたるロングヒットを叩き出しました。興行収入は16.5億円。
日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞したことで、細田監督の名は名実共に確固たるものとなりました。
大家族がデジタル世界の危機に立ち向かう物語は、長野県上田市が舞台。監督の奥様の実家がモデルになっています。
母としての強さを描く:『おおかみこどもの雨と雪』と富山の自然
2011年に「スタジオ地図」を設立し、その翌年に『おおかみこどもの雨と雪』を公開。観客動員約340万人、興行収入42億円というメガヒットを記録し、映画『名探偵コナン』や『ドラえもん』を抑え、その年の興行収入ランキング6位に食い込みました。
渋谷に潜むバケモノの世界:『バケモノの子』

Benh LIEU SONG (Flickr), CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons
オリジナル作品としては3作目となる『バケモノの子』(2015年)は、興行収入58.5億円という、細田監督作品の中でも屈指のヒット作となりました。
舞台は現代の渋谷。スクランブル交差点や雑踏の向こう側にバケモノの世界「渋天街」が広がっているという設定は、都会で働く大人たちにワクワク感を与えてくれました。
世界が認めた芸術性:『未来のミライ』
2018年公開の『未来のミライ』は、横浜市磯子区をモデルとした美しい住宅街を舞台に、幼い男の子が家族の歴史を旅する物語です。第71回カンヌ国際映画祭の映画監督週間に選ばれ、アニメーションのアカデミー賞と呼ばれるアニー賞では、長編インディペンデント作品賞を受賞。
さらにゴールデングローブ賞アニメ映画賞とアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートを果たしました。この作品の成功により、細田監督は「世界のHOSODA」としての地位を不動のものにしました。
高知の青い空とインターネット:『竜とそばかすの姫』の調和
2021年、細田監督は『竜とそばかすの姫』で再び世界を驚かせます。舞台となったのは高知県の仁淀川周辺。カンヌ国際映画祭の「カンヌ・プリミエール」部門に選出され、音楽面でも中村佳穂さんの歌声や常田大希氏率いるmillennium paradeの楽曲が社会現象となりました。
細田守監督の作品は色褪せることなく、新しい世代のファンを増やし続けています。次はどんな世界を私たちに見せてくれるのでしょうか。


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