ヨーロッパ旅行といえば、かつてはパリ、ロンドン、ローマといった「西欧」が定番でした。しかし、今、新たなスタンダードとなっているのが「東欧」。今回は、ヨーロッパ在住の観光ガイドが、旅行先に選ぶなら西欧ではなく、東欧を選ぶべき理由と、各国の魅力をご紹介します。
「東欧」という呼び名の終焉

Jar.ciurus, CC BY-SA 3.0 PL <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/pl/deed.en>, via Wikimedia Commons
ヨーロッパはとても大きいので、宗教、民族、文化、地理的な面で共通項のある国々をまとめて、北欧、西欧、南欧、東欧と区切りをつけます。
西欧は資本主義国家、東欧はかつての共産圏。昔は大きくそう区切りをつけていました。第二次世界大戦後に成立したヨーロッパの社会主義政権の国、ハンガリー、チェコ、ポーランドなどの国を「東欧」としたのです。
しかし、1989年にベルリンの壁が崩壊し、東欧革命で各国の社会主義政権が崩壊した現在、政治的な意味合いの「東欧」という区切りはなくなっています。
特にハンガリーやポーランドの人達は、かつての苦い思い出が強い「東欧」という言葉を嫌っている人が多いのが現状。なので「東欧」という言葉を使う時は少し注意を払った方がいいかもしれません。
東欧から「中欧」へ

Pudelek, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
最近よく聞くのが「中欧」というコンセプト。かつて東欧と呼ばれていたハンガリー、チェコ、ポーランドの国が、他のバルカン諸国との違いを持ちたいがために使う言葉です。
これらの国々は歴史的に教育水準や経済状態が他の東欧諸国よりも高かったため、一般的に「貧しい」というイメージがつきまとっていた「東欧」という言葉を避けるようになりました。
今、なぜ「西欧」ではなく「中欧」なのか?

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西欧の観光地は、インフレと記録的な観光客数により、かつての情緒を失いつつあります。対して中欧には、西欧が忘れかけているのんびりとした「旅情」が残っています。
また、治安の良さも魅力のひとつ。西欧の大都市で日常茶飯事となっているスリや強引な客引きが少なく、夜の散歩も安心して楽しめます。
そして、なんといっても安いこと。円安で苦しんでいる日本の方達にとって、中欧は西欧に比べて圧倒的にコストパフォーマンスがいいです。近年は、中欧も物価の上昇が凄まじいのですが、地方都市を訪れれば驚くほどのコストパフォーマンスを実感できるかと思います。
最も洗練された中欧の国:ポーランド

Adrian Grycuk, CC BY-SA 3.0 PL <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/pl/deed.en>, via Wikimedia Commons
東欧の香りが強く残るチェコやハンガリーに比べると、ポーランドはさらに西側に近い、モダンな雰囲気だと感じる人が多いかと思います。首都ワルシャワは、高層ビルが立ち並び、街行く人々も非常にスタイリッシュ。
ヨーロッパでも目覚ましい経済発展を遂げたワルシャワの街並みは、現在、ロンドンやフランクフルトにも劣らないモダンな都市へと変貌しています。
【見逃せないポイント】世界遺産ワルシャワ旧市街の「不屈の精神」

中でもワルシャワ旧市街は必見です。第二次世界大戦でナチスによって9割が破壊されましたが、戦後、市民が、壁のひび1本に至るまで記録を基に忠実に復元しました。

絶品グルメとお土産:美食大国ポーランドの魅力
ポーランドを訪れたら絶対に外せないのが「ピエロギ(Pierogi)」です。日本の餃子に似た料理ですが、中身は肉だけでなく、チーズやポテト、さらにはイチゴなどのフルーツまで多彩です。
また、最近は「モダン・ポリッシュ」と呼ばれる、伝統料理をフレンチの手法でアレンジしたレストランがミシュランの常連となっています。

お土産には、変わらぬ人気を誇る「ボレスワヴィエツ陶器」を。電子レンジや食洗機にも対応しており、実用的かつ美しいデザインが日本の主婦層からも絶大な支持を得ています。
ポーランドの最新情報
物価: 2026年現在、インフレの影響はありますが、依然として西欧の約6割から7割程度で楽しめます。
通貨: ズウォティ(PLN)。キャッシュレス化が極めて進んでおり、屋台でもカードやスマホ決済が主流です。
無料開放日: 多くの国立博物館は週に一度入場無料の日を設けています(例:日曜日のワルシャワ蜂起博物館)。
東欧なのにラテンな明るさを持つルーマニア

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ルーマニアは東欧に属しているのですが、周りをスラヴ語圏(ブルガリア、セルビア、ウクライナなど)に囲まれているのでかなり異色です。地理的にも中欧とは言い難いのですが、かなり西よりなので中欧に含めちゃいます。
ルーマニアは原語的にもイタリア語やフランス語に近いロマンス語(ラテン系)なので、明るいラテン系の性格の人が多いです。そして、考え方やライフスタイルなど、中欧を通り越してかなり西欧より。なので、昔から首都ブカレストは、東のパリと呼ばれていました。
大好きな国なので、見所を別記事に詳しくまとめました。

絶品!本場で味わうルーマニア流ドーナツ「パパナシ」
ルーマニアを訪れたら絶対に外せないのが、伝統的なデザート「パパナシ(Papanași)」です。揚げたてのドーナツに、サワークリームと甘酸っぱいベリーのジャムをたっぷりかけたもので、そのボリュームと濃厚な味わいは一度食べたら忘れられません。

ルーマニアの2026年最新情報
通貨: レウ(RON)。多くの場所でカード決済が可能ですが、地方の市場などでは現金が必要です。
ルーマニアは陸路を含めシェンゲン協定に全面加盟しました。
中欧で最も「物語」を感じる国:チェコ

Dmitry A. Mottl, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
チェコは、東欧とも西欧とも違う、おとぎの国です。特に中世の街並みがそのまま残る「百塔の街」プラハは、訪れる人々を魔法にかけ続けています。
【チェコで見逃せないポイント】
首都プラハを代表する古城「プラハ城」は、ギネス世界記録で「世界で最も古くて大きい城」として登録されています。
また、聖ヴィート大聖堂のステンドグラスも見逃せません。アール・ヌーヴォーの巨匠が手がけた色彩の洪水は、言葉を失う美しさ。
チェコと言えばビール
実はチェコは「一人当たりのビール消費量」が世界一。チェコ人は、ビールを「飲むパン」と呼び、主食としています。世界的に有名なピルスナービールの発祥もチェコのプルゼニ。
ビールだけではありません。伝統的なチェコ料理「スヴィーチュコヴァー(牛フィレ肉のクリーム煮)」は、クランベリージャムを添えて食べる、チェコ人が最も愛する料理。お土産には、チェコの国民的キャラクター「もぐらのクルテク」の雑貨や、ボヘミアガラスのアクセサリーがおすすめです。
チェコ旅行の一般情報
通貨: チェコ・コルナ(CZK)。ユーロも使えますが、コルナ払いの方が適正価格で済むことが多いです。
エキゾチックと美食の宝庫:ハンガリーにリピーターが続出する理由

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ハンガリーも人によっては西欧らしさを感じる国ですが、長く西欧に暮らしている私から見れば、どうしても東欧的なエキゾチックさを感じます。
西ヨーロッパの人達から圧倒的な人気を誇るのがハンガリーで、ヨーロッパで唯一、年々観光客数を伸ばしている国。東欧的なエキゾチックさに加え、物価の安さ、景色の美しさ、人々の暖かさなどが人気の秘密です。
【絶対に見逃せない】「ドナウの真珠」ブダペストの温泉
ハンガリーは実は「温泉大国」。古代ローマ時代からの歴史があり、市内には豪華な装飾が施された温泉施設が点在しています。チェスをしながらお湯に浸かる「風呂チェス」は、ブタペストでしか見られない光景です。
グルメ派に告ぐ!ハンガリー料理の奥深さ

魅力が沢山あるハンガリーですが、私的には「食べ物の美味しさ」を一押ししたいと思います。ハンガリー料理の主役は、色鮮やかな「パプリカ」。 代表料理の「グヤーシュ(Gulyás)」は、牛肉と野菜をパプリカで煮込んだスープで、日本人の口にも非常に良く合います。
また、世界三大貴腐ワインの一つ「トカイワイン」は、デザートワインの最高峰として知られ、かつての王侯貴族を虜にしました。
ハンガリー旅行の一般情報(2026年版)
通貨: フォリント(HUF)。キャッシュレス化が非常に進んでおり、カード決済が主流です。
知る人ぞ知る東欧の秘宝:スロバキア

Pudelek, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
チェコに美味しいところを全部持ってかれたかのようなスロバキアですが、隠れた宝石のような国。実は、世界で最も人口当たりの城の数が多い国でもあります。大好きな国ではありますが、多分スロバキアの人達に中欧の意識はないと思います。
オーバーツーリズムとはまだ無縁で、東欧の匂いがプンプン香るというかどっぷり東欧のスロバキアは、現在、古く良き時代のヨーロッパを最も感じる国なのではないでしょうか。その意味で無理やりリストに入れてしまいましたが、スロバキアはどうしようもなく東欧です。
羊のチーズの香りが食欲をそそる!伝統料理「ブリンゾヴェー・ハルシュキ」
スロバキアに来たら絶対に逃せないのが、ソウルフードのブリンゾヴェー・ハルシュキです。じゃがいもの団子に、スロバキア特産の羊のチーズ(ブリンザ)を絡め、カリカリに焼いたベーコンを散らした逸品。
濃厚なチーズのコクと塩気が、地元の冷えたビールと最高に合います。
イタリアの風とスラブの魂が溶け合う国、スロベニア

Plamen Agov • studiolemontree.com, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
スロベニアはとても興味深い国。アドリア海に面したピランの街を歩けば、ほぼイタリア。景色、そして食べ物とイタリアと殆ど変わらないのですが、スロペニア人の性格って、どう考えても東欧的なんです。
イタリア人には決してなれない、真面目さと誠実さ。この気質が、スロベニアを世界で最もクリーンでサステナブルな国に育て上げました。イタリアを旅行するとイタリア人に疲れるので、疲れ知らずにイタリアを知れるスロベニア、何気にめちゃくちゃおすすめです。
【絶対に見逃せない】アルプスの瞳「ブレッド湖」と癒やしの時間
スロベニアは、イタリアの美しさとオーストリアの規律、そしてスラブの温かさが同居する稀有な国。
絶対に見逃せない場所は「ブレッド湖」です。湖に浮かぶ小さな島に建つ教会と、崖の上に立つ城は、まるでおとぎ話の世界。願いが叶う鐘がある教会があります。
地元グルメとお土産:知られざるワイン大国の実力
イタリアに近いこともあり、スロベニアはワインの質が非常に高いです。特に、古来の製法で作られる「オレンジワイン」は、ワイン愛好家の間で今、最も熱い注目を浴びています。
お土産には、オレンジワイン、そして伝統的な模様が施された「ハチの巣箱の板絵」のレプリカや、高品質な蜂蜜がおすすめです。
スロベニア旅行の一般情報(2026年版)
通貨: ユーロ(EUR)。
アクセス: ウィーン、ミュンヘン、ベネチアから鉄道や高速バスでのアクセスが便利。
著者プロフィール
ヨーロッパ在住の旅と食のプロガイド
主にスペインに拠点を置いて30年。プロの観光ガイドとして、これまで数多くの日本人旅行者の皆様を世界各地でご案内してきました。また、日本国内ではスペイン語圏からの観光客をお迎えするガイドとしても活動。
ガイド業の傍ら、その土地ならではの「食」と「旅」の魅力を伝えるライターとして、雑誌や専門メディアにて、現地発のリアルな情報を多数掲載しています。「ガイドの視点」と「食へのこだわり」で、皆様の旅がより豊かなものになるよう、最新の情報をお伝えします。


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