ジブリ映画の聖地巡礼:宮崎駿監督にインスピレーションを与えた世界と日本の「あの景色」

スタジオジブリの作品に流れる、どこか懐かしく、そして圧倒的に美しい風景。その多くは、宮崎駿監督が実際に旅をし、その目で見た景色がエッセンスとして溶け込んでいます。今回は、ジブリ作品の舞台とされる世界各地の絶景を紹介しまう。

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『風の谷のナウシカ』

スタジオ・ジブリの作品は、実在の景色をそのままなぞるのではなく、部分的に取り入れたり、ほかの景色と組み合わせて新たな風景を作り出すことが多いのだそう。とはいえ実際にその場所を訪れれば、作品の雰囲気を十分に感じとることができます。

シルクロードの秘境、パキスタン・フンザの「風の谷」

Hassanzealous, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

パキスタン北西部に位置し、7000m級の峰々に抱かれたフンザの谷。ジブリからの公式なコメントはありませんが、『風の谷のナウシカ』の主人公が住む「風の谷」のモデルだとされています。宮崎監督はある雑誌の対談で、「風の谷のイメージは、中央アジアの乾燥地帯」と明かしているからです。

フンザの家々は、急斜面に石を積み上げて作られており、その構造はナウシカに登場する城のデザインに通ずるものがあります。また、この地域はかつてアレクサンドロス大王の兵士たちが定住したという伝説があり、青い瞳を持つ人が多いです。

フンザを訪れるなら春がおすすめ。杏の花が谷を埋め尽くし、まさに桃源郷のような光景が広がります。

名物・名産

杏(アプリコット):フンザの命の果実。生でも乾燥させても絶品で、杏の種の中にある「仁」から採れるオイルは、美容と健康に良いとされています。

太古の息吹を感じる日本、屋久島の原生林

MaedaAkihiko, CC0, via Wikimedia Commons

鹿児島県の屋久島には、樹齢3000年以上とされる縄文杉をはじめとした樹々がそびえる太古の森が広がっています。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーによれば、宮崎駿監督が屋久島の原生林を見たことがきっかけで『風の谷のナウシカ』が生まれたといいます。

屋久島は「1ヶ月に35日雨が降る」と言われるほど雨が多い島です。この豊かな水が、岩をも覆い尽くす厚い苔の層を育みました。

名物・名産

首折れ鯖(くびおれさば):屋久島近海で獲れるゴマサバで、鮮度を保つために即座に首を折ることからその名がつきました。弾力のある歯ごたえは感動ものです。

ウクライナの「腐海(シヴァーシュ)」

ウクライナ本土とクリミア半島の間にある最深部3mの浅い湿地帯は、夏に臭気を放つことから「腐海」と名付けられました。これにインスピレーションを得て、有毒ガスを放つ菌類の森「腐海」の設定が作られました。『風の谷のナウシカ-宮崎駿水彩画集』に掲載されたインタビューで、監督自身が「腐海と呼ばれているというのを何かで読んだときに、すごい言葉だと思った」と明かしています。実際の「腐海(シヴァーシュ)」は塩分濃度が非常に高く、ピンク色に見えることがあります。これは特定の藻類や微生物の影響です。

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『もののけ姫』

神々が宿る森の具現化、再びの屋久島

宮崎監督の「もう一回屋久島でやろう」の一声で、『もののけ姫』の美術、CG、作画スタッフたちが監督と共に屋久島を訪れることになりました。監督は『もののけ姫』を製作するにあたり「日本というものに抱いていた妄想を形にする」ことを目指したといいます。屋久島の森は、垂直分布といって海岸線から山頂まで、日本列島の植物体系が凝縮されています。「白谷雲水峡」にある苔むす森は必見です。

名物・名産

三岳(みたけ):屋久島の名水で仕込まれた本格芋焼酎。森の香りと共に味わう地元の焼酎は格別です。

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崖の上のポニョ

鞆の浦:瀬戸内の「日本で最も美しい港町」

663highland, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons

広島県の沼隈半島に位置する鞆の浦は、「日本で最も美しい港町」と称されています。監督はじめジブリのスタッフたちが幾度も訪れ、『崖の上のポニョ』が生まれました。日本の原風景が残る港町としても有名で、ジブリだけでなくハリウッド映画『ウルヴァリン:SAMURAI』をはじめ、数々のドラマやCMの撮影地となりました。

【歴史トリビア】

鞆の浦は、潮の流れが変わるのを待つ「潮待ちの港」として万葉の時代から栄えていました。坂本龍馬の「いろは丸事件」の舞台でもあり、町全体が歴史の博物館のようです。

名物・名産

保命酒(ほうめいしゅ):16種類のハーブを漬け込んだ、鞆の浦伝統の薬味酒。甘くて飲みやすく、お土産にも最適です。

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千と千尋の神隠し

台湾・九份

Gregg Tavares from Stanton, California, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons

台湾北部の山間にある九份は、19世紀に金の採掘で発展し、やがて衰退した町。台湾映画『悲情城市』のロケ地として人気がありましたが、『千と千尋の神隠し』の舞台ではないかと話題を呼び、観光客が更に増しました。ただし、スタジオジブリからの公式な発表はありません。

しかし、宮崎監督はかつて九份を訪れた際にスケッチを残しており、そのエッセンスが作品に投影されていることは間違いありません。人気観光地なため、混雑を避けるため平日夜の訪問や、周辺の金瓜石エリアとセットでの観光が推奨されています。

【旅のコツ】

九份のシンボル「阿妹茶樓(アーメイ・チャーロウ)」は、夕刻に提灯が灯るとまさに油屋のような雰囲気に。ここで台湾茶の作法を学びながら、刻々と変わる景色を眺めるのが通の楽しみ方です。

名物・名産

芋圓(ユーユェン):タロイモやサツマイモから作られた、もちもちの団子。温かいスープや冷たいかき氷と一緒にどうぞ。

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魔女の宅急便

スウェーデン・ヴィスビー

スタジオジブリのサイトによれば、スウェーデンのゴットランド島に位置するヴィスビーは、『魔女の宅急便』の舞台、海の見える街コリコのモデルとなった街。キキのパン屋をはじめ、街中の至る所で『魔女の宅急便』のさまざまなシーンの舞台を発見できます。

旅のポイント

ヴィスビーの旧市街は世界遺産に登録されています。ストックホルムからヴィスビーへは、最新の電気推進フェリーでの移動が、海風を感じる「キキ風」の旅です。

名物・名産

サフランパン:ゴットランド島の名物。キキのパン屋を探しながら、焼きたてのパンを頬張るのが最高の体験です。

スウェーデン・ストックホルム

海の見える街コリコは、前述のヴィスビーだけでなく、スウェーデンの首都ストックホルムもモデルにしています。宮崎監督によれば、設定は第二次世界大戦を経験しなかったヨーロッパで、実際にジブリスタッフたちが両都市を訪れています。

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天空の城ラピュタ

イギリス、ウェールズ地方

Source: Llywelyn2000Derivative: User:MathKnight, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

スタジオジブリが公式に「大いに参考にした」とするのが、イギリスのウェールズ地方。写真のコンウィ城をはじめ、ポウイス城やカーナーヴォン城が作品に反映されています。

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イギリス、ブレナヴォン産業用地

ウェールズ地方の3つの城の他、忘れてはならないのが18世紀に設立されたブレナヴォン産業用地。製鉄所の溶鉱炉跡、石炭を採掘した後にできるボタ山、労働者の住居跡の廃墟などが、『天空の城ラピュタ』の舞台に反映されています。

旅のポイント

ウェールズは「アドベンチャー・トラベル」の聖地。かつての採掘場跡を利用した巨大ジップラインや地下トランポリンなど、パズーになった気分で体験できるアクティビティが充実しています。

名物・名産

ウェルシュ・レアビット:トーストに濃厚なチーズソースをかけたウェールズの伝統料理。「ラピュタパン」のモデルではないかと言われることもあります。

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紅の豚

ギリシャ、ザキントス島

dronepicr, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons

『紅の豚』の主人公ポルコが使用するアジトのモデルだとされるのが、ギリシャのザキントス島。色々な説がありますが、この島にあるナヴァイオビーチが余りにもそっくりなことから、最有力説となっています。この島は切り立った岩山に覆われており、アクセス手段は船舶のみです。

クロアチア、ドゥブロブニク

スタジオジブリは「大いに参考した場所」として「アドリア海沿岸」としかコメントしていませんが、クロアチアのドゥブロブニクの景色がモデルと目されています。オレンジ色の屋根瓦と紺碧の海のコントラストは、一度見たら忘れられません。

注意:ドゥブロブニクはオーバーツーリズム対策として、2026年現在も「スーツケースの騒音規制」や「中心部への入場制限」が行われています。早朝や夕暮れ時、城壁を歩く時は静かな時間を予約するのがコツです。

名物・名産

ロジャータ:ドゥブロブニク風のカスタードプリン。ローズリキュールの香りが大人の味を引き立てます。

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ハウルの動く城

フランス、コルマール

Krzysztof Golik, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

フランス北東部、アルザス地方のコルマールは、ジブリが公認する『ハウルの動く城』の舞台。出張でパリを訪れていた宮崎監督が、次回作のために木枠の壁が特徴的なアルザス建築を見学しにコルマールに赴きインスピレーションをえたのだそう。中でも「プフィスタの家」は、ジブリファンの聖地として有名です。

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ジブリファン最大の聖地:ジブリパーク

世界各地にジブリの聖地がありますが、ファンにとって一番の聖地となるのは、2022年にオープンした愛知県長久手市の「ジブリパーク」です。広い敷地内にジブリの世界が広がっています。

「青春の丘」、「ジブリの大倉庫」、「どんどこ森」、「もののけの里」、「魔女の谷」の5つのエリアに分かれています。世界中から多くの観光客が訪れるため、チケットは数ヶ月前からの事前予約が必須です。

名物・名産

極上牛乳とシベリア:ジブリの大倉庫内にある「ミルクスタンド シベリ・あん」で味わえる、どこか懐かしいお菓子。映画『風立ちぬ』にも登場するあの味です。

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