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ヨーロッパで教会を見る前に読むと100倍観光が面白くなる聖書の話

      2021/06/15

何時も思うんです。「聖書」とは世界で一番売れている大河小説ではないかと。大河小説とは、フランスの文豪ロマン・ロランが自作の「ジャン・クリストフ」を大河に例えた事に由来し、人々の生涯や歴史を時代の流れの中でとらえていこうとする壮大な長編小説の事を意味します。

日本の方達は宗教的なモノを敬遠しがち。だから聖書を宗教の経典として認識してしまうと、何だか少し逃げ腰になってしまいます。でも聖書って意外と面白い。なので皆様に聖書のすすめ。特に旧約聖書を「大スペクタクル大河ドラマ」として読んでみて下さい。案外すんなり読めるし、ヨーロッパの芸術を理解するのに聖書の知識は絶対必要です。

 

教会とは聖書の絵本。見て読んで楽しもう。

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キリスト教の国では教会を中心に街が発展します。つまりどの街にも必ずあるのが教会。そして同じキリスト教でもカトリックとプロテスタントの教会では大きく趣が異なります。

プロテスタントの教会はシンプル。カトリックの教会は豪華絢爛。見て楽しいのはカトリック教会の方でしょうか。ではその教会を訪れた時、貴方は何を見ていますか?

カトリック教会の装飾はただの飾りではないんです。教会は聖書そのもの。文盲である人々にも分かり易くキリスト教の教えを説く、紙芝居小屋のような存在です。

祭壇、絵画、彫刻、教会の中の全てのモノに物語があるのがカトリック教会。この大きな絵本を読み尽くす事が出来たら、「わぁ、綺麗」だけでは終わらない更なる楽しみが出来るはず。

そんな訳で、今回は聖書についてお話したいと思います。教会の絵画や彫刻の主題となってる物語を勉強して、教会を読みつくしてみませんか?

 

天地創造

キリスト教において、世界の初めは混沌とした闇でした。そこで神は「光あれ」とのたまい、世界は光と闇に分けられました。

2日目に水と空、三日目には陸と海、4日目には大きな光である太陽と小さな光である月をつくり、それぞれに昼と夜を治めさせました。

5日目に魚と鳥を、そして6日目に動物たちをこしらえると、最後に神は自分に似せて人間をつくります。

で、ここまで随分と働き尽くめだったので、流石の神様も7日目はお休みになられました。

※天地創造の、カトリックの教会では結構な確立で見つける事が出来ます。かなり壮大な物語なんで絵画よりは教会内部の壁画、天井画などの迫力大画面に描かれている事が多いです。

 

アダムとエヴァ

神様は土の塵(アダマ)を集めてコネコネし、鼻に息を吹き込むと男が出来上がりました。アダムと名付けました。

美しい楽園・エデンの園を与え、神はアダムに全ての自由を与えます。ただ1つだけ神様はアダムに命令しました。知恵の樹になる実だけは絶対食べてはならぬと。

何不自由無く暮らしてはいるけれど、アダムは何だか寂しげです。可哀想に思った神様は、ぐっすり眠ったアダムの脇腹から骨を一本抜き取ると女をつくります。

エヴァ(命)と名付けられました。

※聖書の記述とは異なり、この題材の絵画をヨクヨク見てみると横たわるアダムの脇腹からヌルッとエヴァが生えてきたかのような絵が多いです。エヴァの足が半分アダムの脇腹に突っ込まれてる、そんなオカルトチックな絵が多いので結構楽しめます。この題材は少しレアなので発見したら充分楽しんで下さい。

 

悪魔のささやき

暫くの間二人は幸せに暮らしていましたが、一匹の蛇がエヴァを上手にそそのかします。
「知恵の樹の実を食べれば、アンタも神のようになれるよ」
エヴァはアダムを誘い、2人は禁断の果実を口にします。人間ははじめて罪(原罪)を犯してしまうのです。

※何故か画家たちはエヴァをそそのかす蛇に女性の頭部や上半身を持たせたがります。最初に誘惑されたのは女であるエヴァなので、蛇はセクシー&ワイルドな美青年であるべきなのではないでしょうか。

 

楽園追放

神のようになれるどころか、二人は裸である事が恥ずかしくなりました。
神の足音が聞こえると、犯した罪がバレてはならぬと木の陰に身を隠します。罪は直ぐにバレて、神は二人を厳しく詰問します。

「だって、蛇が悪いんだもの。」

エヴァは罪を蛇になすりつけます。そんなエヴァに怒った神は、罰として子供を産む苦しみと男への服従を課しました。

アダムにも食物を得る苦労と、命が終われば土に返る運命を与え、2人をエデンの園から追放します。

※神は親切心から二人に皮の衣を着せて追放した、と聖書には記載されています。でもきっとよりドラマティックな演出を試みたのでしょう。殆どの画家達は追放される二人を真っ裸にして描いてます。

 

カインとアベル

アダムとエヴァは生きる為に、エデンの東で最初の農耕生活に入ります。額に汗して鍬で一生懸命土を耕し、やがてエヴァは苦しみながら子供を産みます。

エヴァは二人の子供を産みました。兄のカインは耕作者に、弟のアベルは羊飼いとなりました。

 

人類最初の嘘と殺人

カインは畑で取れた農産物を、アベルは最良の羊を供物として神に捧げます。でも何でか神はアベルの供物しか受け取りません。ヒイキです。めちゃくちゃにエコヒイキ。

ふてくされた兄カインは、野原でアベルを待ち伏せして殺してしまいます。人類最初の殺人です。

その後アベルの行方を問われたカインは

「知りません。私は弟の監視者なのですか?」

と答えました。これが人間がついた初めての嘘です。

※アベル殺害の場面は後にキリストがユダに裏切られて磔刑になる事の予告と考えられています。アベルの殺害は何かと好まれて書かれている題材なので、皆さん頑張って探してみましょう。頑強な男二人がプロレス、取っ組み合いをしていたらカインとアベルと考えて良いでしょう。

 

ノアの方舟


アダムとエヴァに新たな子が産まれ、セトと名付けられました。弟を殺害した事を深く後悔し、放浪の旅に出たカインにも子供が出来ます。

人間が増えてくると、世の中には悪がはびこります。ウンザリ嫌になった神は、あぁ、ダメダメ一からやり直し、とばかりに創造物を一掃打陣する事を決意しました。

ただセトの子孫で正しい人であるノア(慰め)だけは例外としてコッソリお告げをします。神様は何時だってエコヒイキが大好きです。

「ノアよ、よく聞けよ。これからジャンジャン雨を降らせるから、お前は糸杉で大きな船を作って妻子とその嫁達を中に乗せなさい。食料と鳥や獣も一つがいづつ乗せなさい。」

※この時神は随分キッチリと方舟の仕様を指定しています。長さ約150メートル、幅25メートル、高さ15メートル。屋根付きの三階建てで、入り口は側面に、てっぺんには明り取りの窓。内側と外側には防水の為のタールを塗りなさい、と。絵画もキッチリこの指定を守って書かれてますよ。

 

大洪水

エコヒイキから7日後、天からザブザブと雨が降り注ぎます。40日間も続くのですから、何もかもが全て水の中に沈み、その大水は150日の間引きませんでした。

ソロソロよかろう、と神が風を吹かせば、水はたちまちに引きました。水が引くと方舟はアララト山の天辺にポツンと乗っかっていました。

その後40日間過ぎてからノアは鳥を放ちますが飛びまわるだけ、鳩を放てば戻って来る。

ならば、と後7日間をジッと待ち、もう一度鳩を放つと今度はオリーブの葉をくわえて戻ってきました。

確認としてもう一度鳩を放つと、二度と戻ってはこなかったので、水は完全にひいたことが分かりました。

※人類の滅亡と救済、このテーマは大変好まれ、多くの絵画に描かれました。
特にオリーブの葉を加えて戻ってきた鳩は、吉報と平和の象徴として、色々な所で見る事が出来ると思います。

 

バベルの塔

不正のはびこる世界は一掃され、神は空に虹をかけてノアに祝福を与えました。
「産めよ、増えよ、地に満ちよ。獣や鳥、地を這うものや魚は全て貴方達に支配され、食料となるだろう。」
新世界がはじまり、ノアはアダムに代わって人類の祖先となりました。
聖書ではノアの息子達であるセム、ヤペテ、ハムから人類全ての民族が発生した、とされています。

時が経ち、人間が増えれば、中には神をも恐れぬ傲慢な気持ちの輩も出てきます。天まで届く高く大きな塔を作り、神に近づこうと考えました。

そんな傲慢さに怒った神は、彼らにバラバラの言語を与えます。これまで1つであった言葉が通じなくなり、意思の疎通が出来なくなった人間達は混乱します。

そして塔は未完成のまま放置され、人間は各地に散っていきました。この塔のあった街をバベル(混乱)と呼びます。

※世界に多用な言語が存在する理由や、技術革新に伴う人間の能力過信への警鐘として、絵画の世界で好んで良く使われている題材です。
バベルの塔には、その絵画の描かれた時代時代の建築法が反映しているので注目して下さい。

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イサクの犠牲

セムの子孫のテラの息子、勇敢な信仰人アブラハムを祝福して、神は妻のサラに子供を授けます。
この時アブラハム100歳、サラは90歳。神様も思いきった事をなさります。

イサクと名付けられ一家は平和に暮らしますが、ある時神はアブラハムに息子イサクを山の上で焼いて捧げよと命じます。

祭壇の上で今にも息子の喉元に小刀を突き刺そうとするアブラハム。その瞬間、天使が現れその手を止めると神の声が聞こえます。

「お前が神を畏れる者であることがよ~く分かった」

※この主題は、自分の子供を犠牲にしなければならなくなった父親の心の葛藤が見所です。この物語を知らないと、妖しいジジィが麗しい少年を殺そうとしているケシカラン場面にしか見えないので注意が必要です。

 

ロトと娘達

現在は水中深く没してると考えられているゴモラは、死海南端付近にあった古代パレスチナの都市です。隣接するソドムの街は男色文化盛んな淫らな街として有名でした。

ひょんな切っ掛けで、ソドムの街にやってきた2人の天使を助けたロトは「急いで逃げなさい」とのアドバイスを受けます。

半信半疑でロト一家がソドムの街を後にすると、罪深き街ソドムとゴモラは、神の下した硫黄の火によって滅ぼされてしまいました。

この時、決して後ろを振り返ってはならぬ、という神のお告げに反したロトの妻は塩の柱となってしまいます。そんな訳で妻は死に、子孫を絶やすまいとするロトの娘達は、葡萄酒をシコタマ飲ませ父親をヘロヘロにさせると、毎夜交互に父親と交わります。

※近親相姦を扱ったこの主題、結構お目にかかりますね。何時の時代も皆さんエロい話が大好きです。

これもきちんと物語を知らないと、若い娘(豊満です)とイチャついてるスケベえろジジィにしか見えません。
近親相姦の罪深さを知りながら子孫を絶やさない為の止むを得ない行為らしいですよ、皆さん!

ソロモンの審判

ソロモンは神の加護の元賢く国を治めていました。ある時、誤って乳房で赤ん坊を殺してしまった女がもう一人の女の赤ん坊を奪って自分の子だと言い張りました。裁判の席でソロモンは提案しました。

「んじゃ、子供を半分に裂いて分けよう」

「この子はあの女にやってイイからそれだけはヤメてっっ」

咄嗟にそう叫んだ女をソロモンは本物の母親と判決しました。

※この題材、日本の時代劇でもありましたよね。

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ヨブ

どんな逆境にあっても人間は神を敬い続ける事が出来るか。悪魔と神との賭けの対象に、裕福で信仰厚き人ヨブが選ばれました。

悪魔はココぞとばかり徹底的にヨブを苛め抜きます。家畜は略奪され、子供達を災害で失い、全身に醜い腫れ物が出来て...

そんな相次ぐ不幸にヨブの心にも若干迷いが生じますが、それでもヨブは信仰を失いませんでした。そんなヨブを神は祝福し、悪魔は退散してヨブに再び幸福が訪れます。

※全身に醜い腫れ物を持った男が描かれていたらヨブだと思って下さい。なんにも悪い事してないのに、賭けの為にトコトン苛め抜かれているヨブさんです。神様って時に本当に残酷です。ヨブさんに思いっきり同情してあげましょう。

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