冬の訪れとともに、世界中のスキーヤーやスノーボーダーが、ある一つの言葉を合言葉に日本を目指します。それが「JAPOW(ジャパウ)」です。今回は、なぜ日本の雪が世界最高とまで称されるのか、そしてジャパウで有名なゲレンデを紹介します。
「ジャパウ(JAPOW)」:SNSから世界語になった魔法の言葉

yuukokukirei, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons
近年、冬になるとSNS上で「#japow」というハッシュタグが頻繁に飛び交うようになりました。「Japow(ジャパウ)」とは、「Japan」と「Powder Snow」を掛け合わせた造語で、「日本のパウダースノー」を意味しています。今やBBCやCNNなどの国際メディアでも、日本の雪質を表現する固有名詞として定着しています。
日本のパウダースノー:なぜ「雪だるま」が作れないのか?
ジャパウとはどのような雪なのでしょうか。サラサラとした粉雪で、その上を滑ると独特な浮遊感を味わうことができます。また、摩擦が少ないためスピードも出やすい。
雪の含水率が極めて低く(5%以下)、あまりにもサラサラで水分を含まないため、雪だるまがつくれないことに驚く人も多いです。
この乾燥度は、シベリアからの乾いた寒気が、日本の険しい山々にぶつかって一気に雪を降らせるという、世界でも稀な地形的要因によって生み出されています。
日本のスキー場の魅力:森林限界がもたらす「ツリーラン」の美学
雪の質だけが日本のスキー場の魅力ではありません。海外の主要なスキーリゾート(アルプスやロッキー山脈)と異なり、日本のスキー場は森林限界を超えない低い標高に、質の良い雪が大量に降ります。そのため、高山病などの心配をすることなく、美しい針葉樹林を眺めながらパウダースノーを楽しむことができるのです。
さらには毎日のように雪が降るので、前日の滑走跡(トレース)が翌朝には綺麗にリセットされています。このような夢のような好条件が重なるスキー場は、世界的に見ても極めて珍しい存在なのです。
ツリーランコース:未圧雪エリアで味わう「無重力」体験
日本では樹々の間を滑走する「ツリーランコース」が非常に充実しています。圧雪車で整えられていない、自然のままに積もった雪の上を滑走できるコースも多いため、パウダースノー信者から絶大な人気を誇っています。
近年は安全管理技術の向上により、以前は立ち入り禁止だったエリアを「自己責任エリア」として開放するスキー場が増えており、よりダイナミックな滑走が可能になっています。
世界が注目する「ジャパウ」厳選スキー場
ここからは、特にパウダースノーの質において評価の高い、日本を代表するスキー場を紹介していきます。
蔵王温泉スキー場(山形県):スノーモンスター

Ministry of Economy, Trade and Industry (JAPAN), CC BY 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/4.0>, via Wikimedia Commons
単独のスキー場としては日本最大級の面積を誇り、最長滑走距離も10km近くに及びます。極上のパウダースノーに加え、西暦110年頃(景行天皇の時代!)に開湯したとされる歴史ある温泉も楽しめます。何よりも蔵王温泉スキー場を有名にしているのが、世界的に非常に珍しい「樹氷(スノーモンスター)」を間近に見ることができること。
自然の芸術「樹氷」の神秘
水蒸気を含んだ強い風が樹木の枝や葉にぶつかり、瞬時に凍りつく。その氷の層に雪が付着し、さらに凍りついて樹木を完全に覆い尽くす現象が樹氷です。蔵王温泉スキー場では、大きいもので高さ30mに達する「スノーモンスター」と呼ばれる樹氷が、コース沿いに壮観に並びます。
【地元グルメ】
名物は「玉こんにゃく」。醤油の染みた熱々のこんにゃくは、スキーの合間の小腹を満たすのに最高です。また「山形牛のすき焼き」は至福のディナーになります。
夏油高原スキー場(岩手県):圧倒的な積雪量を誇る「豪雪の聖地」
毎日のように降り続く雪がゲレンデをつねにリセットすることで有名な夏油(げとう)高原スキー場。本州で最も早く全面オープンするスキー場の一つで、積雪量日本一を記録したこともあります。パウダースノーに加えて圧倒的な豪雪、さらには起伏に富んだ広大なツリーランエリアにより、近年、急速に国内外での人気を高めています。
近年「ツリーランエリア」の拡充が進んでおり、全14エリアでの滑走が可能です。
【地元グルメ】
岩手県といえば「北上コロッケ」。粘り気が強い「二子さといも」を使用しており、冷えた体にエネルギーを補給してくれます。
志賀高原スキー場(長野県):天空に最も近い日本最大の連結エリア

MaedaAkihiko, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
最高地点の標高が2,307mと、日本で最も高い場所にあるスキーリゾートです。標高1,330mから2,307mの広大なエリアに、パウダースノーで有名な18のスキー場が集結しています。全リフト券が共通化されており、シャトルバスやリフトで連結されているため、スキー場を「はしご」しながら楽しむことができます。18のスキー場の面積を合わせると日本最大級。標高が高いため、5月のゴールデンウィークまで滑走可能な年が多いのも特徴です。
【地元グルメ】
志賀高原の麓、信州といえば「信州そば」。また、近くの「地獄谷野猿公苑」で、温泉に入るサルを見学した後に、信州みそを使った「みそラーメン」を楽しむのが定番です。
斑尾高原スキー場(長野県):唯一無二の雪質「Madapow」を求めて
ツリーランコースの設置数日本一を誇るのが斑尾(まだらお)高原スキー場です。地形を巧みに活かしたツリーランコースが充実しているほか、日本屈指の豪雪地帯ゆえに最上級のパウダースノーが降り積もります。そのため、ここ斑高原の雪は愛好家から「Madapow(マダパウ)」と呼ばれ、特別な存在として扱われています。
野沢温泉スキー場(長野県):歴史ある湯の街と日本最長クラスの滑走
初心者向けの緩やかなコースから、上級者も唸る非圧雪の急斜面まで、全44もの多彩なコースを擁します。特筆すべきは「スカイラインコース」で、全長10km、標高差1,000mを誇る日本最長クラスのロングランが楽しめます。スキーを楽しんだ後は、村内に13箇所ある無料の「外湯(共同浴場)」を巡り、江戸時代から続く温泉文化に浸ることができます。
【地元グルメ】

Ocdp, CC0, via Wikimedia Commons
野沢温泉といえば「野沢菜漬け」。外湯巡りの途中で売られている「おやき」や、熱々の「野沢菜まん」は、この地ならではの味わいです。
安比高原スキー場(岩手県):極上の「アスピリンスノー」を求めて
安比(あっぴ)高原を象徴するのが、薬のアスピリンの結晶のようにサラサラした「アスピリンスノー」です。湿気が極めて低いため、雪が固まりにくく、常に極上のパウダースノーが維持されます。北向きの斜面が多いため日光の影響を受けにくく、5月上旬まで滑走可能なのも大きな魅力です。
下倉スキー場(岩手県):水分皆無の「ウルトラライトパウダー」
水分が極めて少ない下倉スキー場の雪は、愛好家の間で「ウルトラライトパウダー」と呼ばれています。この軽さを最大限に楽しむために、趣の異なる4つのツリーランエリアが設定されています。特に最大斜度37度を誇る「下倉の壁」は、雪が降った翌朝には膝上まで雪が達する深雪エリアで、中上級者から絶大な支持を得ています。
ニセコ(北海道):JAPOW発祥の地にして世界最高のパウダーリゾート

MIKI Yoshihito, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons
最後に紹介するのは、ジャパウ人気の火付け役として世界的に有名な「ニセコ」です。シーズン中に90日前後、計10m近い積雪を観測する圧倒的な降雪量が、世界を魅了する雪を作り出しています。北海道内陸部の雪に比べるとわずかに水分を含みますが、そのバランスが「浮遊感」を生むのに絶妙であると高く評価されています。
羊蹄山を望む絶景とバックカントリー
ニセコは4つの広大なスキーリゾート(アンヌプリ、ビレッジ、グラン・ヒラフ、HANAZONO)からなり、総滑走距離は47kmに及びます。一番の人気は、「蝦夷富士」と呼ばれる羊蹄山を正面に眺めながら滑走するコース。また、ニセコ独自のルールに基づき、上級者に限り自己責任で管理区域外(バックカントリー)へのゲートが開放されている点も、世界中のプロが集まる理由です。
ニセコのアフタースキー:世界基準のラグジュアリー
また、ニセコはスキー後の楽しみも格別です。源泉かけ流しの温泉はもちろん、世界的なミシュラン星付きレストランからお洒落なバー、居酒屋までが揃い、街中は英語が標準語になるほどの国際色豊かな雰囲気となります。
【地元グルメ】
北海道の「ジャガイモ(男爵)」に、新鮮な「イカの塩辛」と「バター」をのせて食べる「じゃがバター塩辛」は、ニセコの夜の定番おつまみです。


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