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スペインの禁断の味チャンケーテス アンダルシアの郷土料理

      2019/05/17

ビールのおつまみと言ったら揚げ物。これは世界共通の絶対ルールではないでしょうか。今回皆様にご紹介したいのはスペインの究極、チャンケーテスのフライ。チャンケテーテスとは体長4cmぐらいの小魚の事で、法律の上では捕獲が禁止されています。つまりスペインの禁断の味。

 

スペインで一番人気のアンダルシア地方観光のベースとなるマラガの街

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スペイン南部に位置するアンダルシア地方は、太陽の海岸(コスタ・デ・ソル)と呼ばれる長い海岸線を持ち、スペインで一番リゾート化されている地域です。この辺りはホテル、スパ、ゴルフ場、レストラン、ディスコ、何だって揃っています。「太陽の海岸」の名前通りに太陽に愛された地方で、年間晴れの日が300日もあり、冬も穏やかなので夏だけに限らず太陽を求めてやってくる国内外からの観光客で何時も賑わっています。

そんなアンダルシア地方の中心地となるのがマラガの街。人口56万人程のスペイン第六位の都市です。外国人移住者が多い地域なので人種のるつぼ感があります。港町特有の雰囲気と天気の良さが共鳴しあって、明るく開放的で何か妙にゴチャゴチャ感のある街です。天才画家、ピカソの出身地で、彼が愛して止まない街でもあります。

 

スペインは景色だけでなく食文化も地方によって全く異なる

スペインは地方ごとに全く趣が異なる国で沢山の小さな国が集まってスペインが出来上がったと言っても過言ではありません。食に関しても、ある程度のベースは同じですが、地方ごとに食べているものが違います。南部海岸沿いは魚が中心、北部海岸沿いは魚介類、内陸部では肉、基本は豚ですが地方によって牛や羊の方が主流だったりします。アルコールも南部の海岸沿いはビール、内陸は赤ワイン、北は白ワインが主流。同じ名前の料理が地方によって全然違った料理だったりもするので面白い。

日照時間の長い南部の海岸線ではビール派の人達が圧倒的に多いです。確かにどこまでも青い空とエメラルドグリーンに輝く地中海を眺めながら飲むビールの味は格別です。夏の暑い間はビールを飲んでも、寒くなるとワインにシフトするスペイン人が多い中、アンダルシア地方は年間を通してビール派の人が多い。そんなビールが主役の土地だからこそ、アンダルシア名物と言えば魚のフライ。これはもう絶対で、マラガの街の人達の事を他県の人達がカタクチイワシのフライと呼ぶ程です。

 

アンダルシア地方の隠れた名物 チャンケーテス

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アンダルシア地方はイワシ系の青魚を多く捕獲し、消費する地域です。特にマラガの街はあだ名通りにカタクチイワシが特産品で、揚げるだけでなくマリネにして食べます。そしてマラガの街には、カタクチイワシの他に余り大きな声では言えない隠れた名物があります。マラガの人達が愛して止まない食材、チャンケーテスです。

チャンケーテスとは体長4センチ程の小さな魚の事。昔からマラガの海岸線で慣れ親しまれていた味です。でも1988年からチャンケーテスの捕獲は禁止されているんです。チャンケーテスは元々はアフィア ミヌタ(APHIA MINUTA)と呼ばれるハゼ科の魚の事を指していました。大きくなっても体調が6cm以上にはならない小さな魚で、年に二回だけ夏と冬に捕獲する事が出来ました。

この小さな魚を捕獲するには目の細かい網を使います。これが原因で環境保護の為捕獲が禁止されているのです。スペインでは地中海沖で捕獲する事の出来るイワシは9センチ以上でなくてはならない、という決まりがあります。チャンケーテス捕獲用の目の細かい網を使うとイワシなどの稚魚の他、大きくなっていないエビやイカまでごそっと根こそぎ捕れてしまいます。それを続けていれば、そのうち水産資源がなくなってしまうとの理由で1988年以降チャンケーテスの捕獲が禁止されました。

 

意外と簡単に入手可能なスペインの禁断の味 

チャンケーテスは昔から地元の人達に愛される大変人気のある魚です。アンダルシア地方、特にマラガの街の人達にとってこの法律は寝耳に水でした。昔からの、大好きな、当たり前であった食材がいきなり食べられなくなってしまったからです。

長く続いた習慣を急に変えるのは難しい作業です。だから法律ではチャンケーテスの捕獲、売買が禁止されてはいたけれど、マラガの街では結構簡単にチャンケーテスを入手する事が出来ました。公には何処にも売られてはいないけれど、魚屋でチャンケーテスが欲しいと言えば、店の奥にある冷蔵庫からチャンケーテスを出して売ってくれたからです。レストランのメニューにもチャンケーテスの名前はありませんでしたが、コッソリ聞けば出してくれました。

そんなゆるゆるな規制に更なる拍車をかけたのが中国からの輸入稚魚です。外国産の輸入品に関しては規制がされていなかったからです。そんな経緯で現在ではチャンケーテスの名前を色々な所で見かけるようになりました。でもそれはチャンケーテスによく似たイワシなどの稚魚でチャンケーテスとは全く異なる魚です。中国からの輸入稚魚のおかげでチャンケーテスが公に食べられるようにはなったけれど、今では本当のチャンケーテスの味を知る人が少なくなってきたと言われています。

本物のチャンケーテス、実は今でも簡単に手に入ります。法律で禁止されているのは地中海での稚魚の捕獲で、他の海ではそれが適用されないからです。同じアンダルシア地方ではあるけれどカディスの街は地中海ではなく大西洋に面しています。なのでチャンケーテスが大好きなマラガ人の為にカディスからチャンケーテス売りがやってくるんです。

中国から輸入する稚魚はキロあたり7ユーロで取引されますが本物のチャンケーテスにはキロ35ユーロ前後の値段が付きます。捕獲量が少ないのでレストラン等に卸される事は余りなく、個人間の取引であっという間に売れてしまうらしいです。

 

 禁断のレシピ チャンケーテスのフライ

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これがマラガ沖では禁じられていて、お隣のカディス沖では捕獲が認められているチャンケーテスです。パックに詰められてカディスの街からやって来ます中国産の稚魚は銀色ですが、本物のチャンケーテスは白っぽい色をしています。一見シラスのようですがもっと大きいです。

チャンケーテスをフライにするには

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チャンケーテスと小麦粉を混ぜ、ふるいにかけて余分な粉を落とします。このふるい器はチャンケーテスを良く食べるアンダルシア地方なら何処の家庭にもありますが、他の地域では見かける事のない調理器具です。チャンケーテスをフライにする時は塩を使いません。チャンケーテス自体にある海の香と塩気が大切にしたいからです。

少し小麦粉をなじませてからフライパンで熱したオリーブオイルで揚げれば出来上がり。アンダルシア地方に限らずスペインでは揚げ物もオリーブオイルで揚げます。基本何もかもがオリーブオイルです。油の温度は小麦粉を入れて泡がたったらOKなのだそう。

チャンケーテスは小さいので直ぐに揚がります。揚げすぎると魚本来の味が無くなってしまうので注意しましょう。写真のようにうっすら色が付いたら出来上がりです。

スペインらしい何ともゆるゆるな規制があるチャンケーテス。確かに稚魚の乱獲は今後の為に決して良い事ではありません。でもやっぱり食べたい。そんな自然との共存の仕方が問われるチャンケーテスなのでした。

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