北欧とブルーベリーの関係、北欧独特の寛容な法律を悪用する人たち
2021/06/15
北欧は森と共に生きる国々です。北欧の人たちにとって森とは全てを与えてくれるもの。夏にはベリーを摘み、秋になるとキノコを採り、冬は雪の中クロスカントリーをして楽しみます。特に北欧らしいのがブルーベリーの存在。今回は北欧とブルーベリーに関する色々。
いかにも北欧らしい寛容な法律
北欧の国々には他の国には存在しない寛容な法律があります。個人の庭園や自然保護区以外の場所なら、誰もが何処にでも立ち入る事を保証する法律「自然環境享受権」です。自然は皆の為のもの。その自然にある全ての物も皆の為のもの。
この法律の元では、例えそこが私有地であったとしても、土地の所有者に大きな損害を与えない限り、全ての土地への立ち入りと自然環境の享受を認めているので、北欧では何処ででもスキーをしたり、自然の恵みであるキノコやベリーを採集する事が出来ます。
森や湖、大いなる自然は誰のものではなく皆のもの。そしてそこにある全てのものは皆と分かち合うもの。北欧には古くからそんな考えがありました。そんな慣習が近年、法律として定められたのです。
散歩やスキーなどでの通行権、ボートや水上スポーツ、水浴びなどの自然環境利用権、土地の所有者に対価を支払う事なく野生の果実やキノコなどを採集できる果実採集権、そしてテントなどの宿泊を含めた滞在権が法律として認められています。
私が住むスペインでは私有地に許可なく立ち入る事は法律で禁止されています。宿泊なんてもってのほかで、例え私有地でなくてもテントは決められたキャンプ場に設立しないと罰金が科せられます。北欧では何処でも自分の好きな場所にテントをはって寝ることが出来るんです。あまりの寛容さにびっくりしてしまいました。
北欧とブルーベリーの関係
北欧の短くも美しい夏の訪れを告げるのは何時だってブルーベリー。森にブルーベリーの実を見かけるようになったら待ちに待った夏の到来です。北欧の人たちが一番好きなアクティビティはキノコ狩りとブルーベリー摘みです。
娯楽ではありますが、必要に迫られた感も少しあります。北欧の人たちは長くて厳しい冬が来る前に食料を蓄える習慣があります。特に夏の間にブルーベリーなどのベリー類を大量に採集して冷凍保存し、長い冬の間に少しずつ解凍して食べる事はビタミンCの摂取に必要不可欠な事。
だから週末になると家族単位で森へ出かけブルーベリーを摘みます。北欧にはブルーベリー摘み機なるものも存在します。これさえあれば一時間もしないでバケツ一杯にブルーベリーを採集できます。ブルーベリーを摘んだ後は湖で泳いだりして短い夏を楽しみます。
ブルーベリーとビルベリーの違い
北欧の野生のブルーベリーは正確にはビルベリーと呼びます。どちらもツツジ科スノキ属の植物で、ビルベリーは北ヨーロッパに多く生息し、アメリカなどでは殆ど見かける事がありません。
ブルーベリーは栽培する事が出来ますがビルベリーは不可能です。その他の違いとしてはブルーベリーが房を作るのに対してビルベリーは単一で、ブルーベリーより小ぶりで濃い紫色の実をつけます。
食べてみると更に違いが分かります。ビルベリーの方が柔らかく、水分が多く、味が濃くて酸味が強いです。ブルーベリーは目に良いとされるポリフェノールの一種、アントシアニンが多く含まれる食べ物として有名です。そして北欧のビルベリーにはブルーベリーより4~5倍のアントシアニンが含まれているのです。
北欧は夏になると白夜になる事が多く、ビルベリーは一日中紫外線にさらされます。その紫外線から身を守る為に天然色素のアントシアニンが濃くなるのだとされています。最近日本でも北欧産のビルベリーのサプリメントが出回るようになりました。ブルーベリーの効能は昔から知られていたけれど、ビルベリーの凄さは最近になってやっと世の中に知れ渡りました。
北欧の寛容さを利用する悪い人たち
今、世界各国でビルベリーのサプリメントが大きく注目され、人気となっています。北欧には自然環境享受権があるので誰でも何処でもビルベリーを採集する事ができるのですが、この法律が悪用され北欧の人たちの大きな喜びと楽しみが奪われようとしています。
自然を慈しみ、自然と共に生きる北欧ならではの素敵な法律がビルベリーの効能に眼をつけた悪い人達によって悪用されているのです。ビルベリーの季節となると何処からともなく不法移民者を大量にのせたトラックがやってきて、人海戦術で森中のベリーを根こそぎ採集するようになりました。
ビルベリーの素晴らしい効能に目をつけた悪い人たちが、北欧の人達から大切な森と短くも素敵な夏を彩るささやかな楽しみを奪っているのです。