スペイン南部のアンダルシア地方は、一年を通して気候が良い事で有名です。太陽と美しいビーチが、アンダルシア地方の大きな魅力となっていますが、それだけではありません。有名な観光地が多く見所が盛り沢山。中でも一番は白い村々だと思います。今回はスペインを訪れたら絶対に外せない、アンダルシア地方の白い村巡りを徹底解説します。
アンダルシアの白壁:その科学的機能と歴史的必然性

青い空に白い村は、スペイン南部のアンダルシア地方を代表する景色です。とは言っても白い村はスペインに限った事ではありません。チュニジアを中心としたアフリカ北部、ポルトガルからギリシャ辺りまでの地中海沿いの地域で良く見る事の出来る風景。
それでも一般的に「白い村」と言えばスペインのアンダルシア地方を意味し、世界中から多くの観光客を引き寄せています。スペイン南部の白い村の家々は、ペンキではなく漆喰で塗られています。
日本でも定着している漆喰ですが、5千年前にエジプトのピラミッドの壁に使われたのが起源だとされています。スペインには古代ローマ人が持ち込み、イスラム教徒による支配時代に改良され定着しました。
漆喰とはサンゴ礁を元にした石灰石を焼いて水を加えたもの。各国の風土に合わせて改良され、全世界で使用されるようになりました。漆喰の壁は呼吸します。少しづつ二酸化炭素を吸収しながら固くなる性質があるので、夏は湿気、冬には乾燥を防ぎ、年間を通じて家の中の湿度を快適に調節する働きがあります。
そして石灰には消毒剤の役割もあります。そんな働きからスペイン南部では家だけでなく病院も白、そして病人の為の避難所の役割もあった教会も白壁です。白という色もとても大切です。スペインの地中海沿いの地域は長くて暑い夏が特徴的。
白にはその余りにも強い日差しを反射させ、家の中の温度を上げない効果があります。そして夜には月光を反射して、防犯にもなったと言います。美しいだけでなく、沢山の恩恵が白壁には隠されていたのです。
【白壁と疫病の歴史】
アンダルシアの家々がこれほどまでに徹底して白く塗られるようになった背景には、19世紀以前に流行した黄熱病やペストなどの疫病対策がありました。消石灰(水酸化カルシウム)の強力なアルカリ性は殺菌効果が高く、衛生状態を保つための「公衆衛生上の義務」として定着した歴史があります。現在でも、多くの村ではセマナ・サンタ(聖週間)の前に、村総出で壁を塗り直す「エンカラド(Encalado)」という行事が行われ、村の美観と衛生を守り続けています。また、現代の建築学において、この白い漆喰壁と、細い路地が入り組むアラブ様式の都市構造は「パッシブ・クーリング(受動的冷却)」の傑作として再評価されています。2026年の現在、気候変動による気温上昇への対抗策として、この伝統的な知恵が世界中の建築家から注目されています。
白い村々の地理学:海岸線から山間部へ広がる聖域

白い村はスペイン南部のアンダルシア地方を訪れれば必ず見る事が出来ます。反対に白くない村を探す方が難しいぐらい。ただ海岸沿いは何処もかしこもリゾート化が凄まじく、私達がイメージするような白い村は存在しません。海岸部から少し内陸に入れば白い村々が登場し、20キロ程山間へ行けば白い村しか存在しないようになります。
問題は交通の便の悪さ。レンタカーが無いと点在する白い村々を巡るのは難しいかと思います。アンダルシア地方のおすすめの美しい白い村々を集めたリストを別記事で作りました。

【地理的トリビア:雨が生む白の絶景】
意外かもしれませんが、白い村が多く点在するシエラ・デ・グラサレマ(Sierra de Grazalema)山脈周辺は、乾燥したイメージのあるスペインにおいて「年間降水量が最も多い地域」の一つです。大西洋からの湿った風が山にぶつかり雨を降らせるため、この地域は豊かな森と水に恵まれています。この豊富な水資源が、農業(オリーブ、山羊の放牧)を支え、険しい山岳地帯に人々が定住することを可能にしました。
ミハス・プエブロ:アクセス至便な天空の白きバルコニー

レンタカーを借りなくても、公共の交通機関だけでも訪れる事の出来る白い村も存在します。ミハス・プエブロ(Mijas Pueblo)。世界中からの観光客が訪れるアンダルシアきっての観光地で、日本のCMが撮影されたので日本人にとっても有名な白い村です。
公共の交通網があるだけでなく、本数が多いのでアクセスが抜群なんです。マラガ空港からミハス行きの直通バスが一日に3~4本あります。一番楽な方法ですが、時間が合わないようなら電車でフエンヒローラの街まで行き、バスに乗り換えてミハス村まで行きます。
電車もバスも一時間に何本かあり、乗り換え時間も含めてマラガ空港から2時間位見とけば良いかと思います。通常白い村々は本当にアクセスの悪い所に点在しているので、公共の交通機関で手軽に行けるのはミハスの白い村以外ないかと思います。
【2026年のミハス観光情報】
ミハス名物といえば「ロバのタクシー(Burro Taxi)」ですが、近年は動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点から規制が厳格化され、ロバの労働環境が大きく改善されています。また、環境に配慮した小型の電気トゥクトゥクでの観光も人気が出てきています。
特産品としては、地元の松ぼっくりを使った蜂蜜や、マルコナ種のアーモンドを使った伝統菓子「ガラピニャーダ(Garrapiñada)」が絶品です。お土産には、ミハスの職人が手描きした陶器(セラミカ)がおすすめです。
断崖の絶景都市ロンダ:ヘミングウェイが愛した天空の街

時間に限りがあるのなら、マラガ県のミハス村以外の選択肢はありません。もし時間に余裕があるのなら、ロンダ(RONDA)の街が一番お勧めです。マラガやセビージャから日帰りが可能ですが、日帰りするなんて勿体ないほど素晴らしい街です。
ロンダは街自体の魅力も盛り沢山なので、この街を拠点にして周辺の小さな白い村々をレンタカーで周るのが最強プランです。ロンダへの行き方、楽しみ方に関しては別記事でまとめました。

【文化とワインの街、ロンダ】
ロンダは、アーネスト・ヘミングウェイやオーソン・ウェルズといった文豪や芸術家に愛された街としても知られています。特に有名な「ヌエボ橋(Puente Nuevo)」は、18世紀に建設された建築の傑作です。
食通の方にぜひ知っていただきたいのが、ロンダ周辺は「D.O. Sierras de Málaga(マラガ山地原産地呼称)」のサブゾーン「Serranía de Ronda」として、近年評価が急上昇しているワイン産地だということ。標高が高く昼夜の寒暖差が激しいため、エレガントで凝縮感のある赤ワイン(プティ・ヴェルドやシラー種など)が生産されています。街中のバルで、地元のワイン「Vinos de Ronda」を指名して味わってみてください。
アンダルシア流「タペオ」の極意と美食の楽しみ方

白い村巡りには更なる楽しさがあります。アンダルシア地方は小皿料理とはしご酒が有名な地域。レンタカーを運転するならお酒は飲めませんが、冷たいノンアルコールドリンクと一緒に小皿料理を各村々で楽しんでみてはいかがでしょうか。
とにかく暑い地方なので、こまめな休憩と水分補給が必要です。村ごとに自慢の一皿があったり、定番の料理でもお店によってアレンジが異なったりするので、村ごとに食べ比べても楽しいです。白い村と白い村の間は1時間弱ぐらいの距離です。
【プロからのアドバイス:「タペオ」の作法】
スペイン、特にアンダルシアでは「タペオ(Tapeo)」=「タパスを求めてバルをはしごすること」が重要な社交文化です。一箇所で満腹になるまで食べるのではなく、1軒につき1ドリンクと1タパスを楽しみ、次のお店へ移動するのが粋なスタイルです。
グラナダ県やアルメリア県東部など一部の地域では、ドリンクを頼むと無料でタパスが付いてくる伝統が残っていますが、マラガやセビージャなど多くの地域ではタパスは有料です。メニューに「Tapa(小皿)」「1/2 Ración(ハーフサイズ)」「Ración(フルサイズ)」の表記があるので、お腹の空き具合に合わせてサイズを選べるのが魅力です。
2026年現在、伝統的なバルに加え、モダンな創作タパスを提供する「ガストロバル(Gastrobar)」も増えています。古き良き味と革新的な味の両方を楽しんでください。
アンダルシアの食卓:歴史が織りなす郷土料理の傑作

ピンチョ・モル―ノ:異文化融合のスパイス串焼き
アンダルシア地方は8世紀に渡ってイスラム教徒の支配下にいました。文化だけでなく、食にもイスラムの影響を強く受けています。そんなアンダルシアならではの食べ物が、ピンチョ・モル―ノ (Pincho Moruno) 。直訳すると「イスラム人の串焼きの肉」です。
イスラム風にたっぷりの香辛料でマリネされた肉を串焼きにした食べ物なのですが、一般的にスペイン人はスパイスや辛さに弱いので、マイルドにアレンジされています。香辛料が少な目、そしてイスラム教ではタブーとされる豚肉を使います。イスラムとスペインが上手くミックスされた食べ物です。
作る人によって使うスパイスが異なりますが、ニンニク、パセリ、パプリカ、唐辛子が基本です。今まで一度も同じ味のピンチョ・モル―ノを食べた事がありません。色々な村で食べ比べて楽しんで下さい。
【スパイスの秘密:ラス・エル・ハヌート】
本格的なピンチョ・モルーノには、モロッコ由来のミックススパイス「ラス・エル・ハヌート(Ras el Hanout)」の影響が見られます。クミン、コリアンダー、ターメリックなどが複雑にブレンドされており、これが豚肉の脂と炭火の香ばしさと合わさることで、食欲をそそる強烈なアロマを生み出します。
シェリー酒の魔法:イガド・アル・へレスの深淵

アンダルシア名産の世界的に有名なシェリー酒。ポルトガルのポートワイン、マディラワインと共に世界三大フォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)とされています。辛口から超甘口まで、色々なタイプが揃っています。
アンダルシア地方ならではの、シェリー酒を使った料理も是非楽しんで下さい。一番有名な料理が牛のレバーをシェリー酒で煮込んだ、イガド・アル・へレス(Higado al Jerez) です。味わい深いシェリー酒は肉料理との相性が抜群で、風味が強い分、臭み消しにもなります。そして肉の味に独特の深みを出すのです。
【シェリー酒の奥深い世界】
料理に使われることも多いですが、ぜひ「飲む」体験も。シェリー(スペイン語ではヘレス Jerez)は、「ソレラシステム」と呼ばれる独特の熟成方法で作られます。これにより、常に品質が安定し、複雑な風味が生まれます。
食前酒にはキリッと辛口の「フィノ(Fino)」や「マンサニージャ(Manzanilla)」を、食後やデザートには極甘口の「ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)」をお試しください。特にアンダルシアの生ハム(ハモン・イベリコ)と辛口シェリーのマリアージュは、至高の体験です。
アンダルシアの米料理:バレンシアとは異なる「カルドソ」の魅力

スペインと言えばパエリア (Paella) 。日本と言えば寿司、それぐらい世界的に認識されているスペイン料理です。本来はバレンシア地方の郷土料理なのですが、アンダルシアで食べるパエリアも少し違った感じの料理みたいで美味しいです。
通常パエリアを食べるには、結構お高めのレストランで予約をし、パエリアだけをメインディッシュとして食べます。スペイン独自の食文化がタパスと呼ばれる小皿料理。アンダルシア地方ではパエリアも小皿料理として食べます。
ただ本場バレンシアのパエリアとは別物と考えて下さい。本家のパエリアはアルデンテで炊かれるのですが、アンダルシアのは水分が多くおじやっぽいです。味もかなり庶民的で、お袋の味的な優しい味がするパエリアです。
【注意:これは「パエリア」ではありません】
正確には、アンダルシアでよく見られる汁気の多い米料理は「アロス・カルドソ(Arroz Caldoso=雑炊風ご飯)」や「アロス・メロッソ(Arroz Meloso=リゾット風)」と呼ばれます。バレンシアのパエリアとは全く別物で、こちらは出汁を楽しむ「煮込みご飯」です。
アンダルシア沿岸部では、エビや貝の濃厚な出汁を使った「Arroz con Mariscos(魚介の米料理)」が絶品です。観光客向けに「パエリア」と表記されていることもありますが、地元の人々が愛するこの汁気たっぷりの米料理こそ、アンダルシアの家庭の味なのです。ぜひスプーンですくって、濃厚なスープの旨味を堪能してください。
チーボ・レチャル:マラガの山岳地帯が育む極上の乳飲み仔ヤギ

アンダルシア地方、特にマラガ周辺で有名なのがチ―ボ (Chivo) です。カブリートとも呼ばれる4か月位の、まだ乳しか飲んでいない子ヤギの肉。子羊の肉は世界どこででも食べる事が出来ますが、子ヤギ肉となると限られてきます。
ヤギ肉はかなり野性味のある味がするのですが、チ―ボは乳しか飲んでいない子ヤギなので、それ程癖がありません。煮込みも美味しいですがオーブン焼きが最高です。獣臭い肉が平気な方なら大人になったヤギ肉も是非試してみて下さい。ヤギの肉は都会よりも田舎の方が見つけやすいので、白い村巡りと組み合わせて楽しんで頂きたい食材です。
【美食家のための詳細情報:Chivo Lechal Malagueño】
ここで語られているのは、ただのヤギ肉ではありません。「チーボ・レチャル・マラゲーニョ(Chivo Lechal Malagueño)」という、マラガ県固有の品種です。生後1ヶ月程度、母乳のみで育った仔ヤギに限られ、その肉質は驚くほど柔らかく、真珠のような白い色が特徴です。
栄養学的にも、低コレステロールで高タンパクと評価されています。ニンニクとローズマリー、タイム、そして白ワインと共にオーブンでじっくり焼き上げた「Chivo al Ajillo(チーボのアヒージョ=ニンニクソース焼き)」は、マラガの山間部(特にAxarquía地方)を訪れたら必食の価値がある一皿です。
ボケローネス:マラガの誇り、銀色に輝くカタクチイワシ

ボケローネス(Boquerones)はカタクチイワシを意味し、アンダルシア一帯で食べられていますが、特にマラガが有名です。スペイン人はマラガ出身の人達をボケローネスと呼ぶほどです。
色々な調理法がありますが、定番はフライ。内臓を取り除いたカタクチイワシに粗塩をふり、小麦粉をまぶして揚げるだけのシンプルさですが最高に美味しいのです。揚げる油がオリーブオイルだからなのでしょうか。独特の風味がします。
【二つの顔を持つボケローネス】
ボケローネスには二つの偉大な食べ方があります。
1. Boquerones Fritos(フライ):記事にある通り、揚げたてを楽しみます。マラガでは、5〜6匹を尾びれで束ねて揚げた「Manolitos(マノリートス)」というスタイルも人気です。レモンをかけるかどうかは現地の人の間でも議論になりますが、新鮮なものはそのままで十分に美味です。
2. Boquerones en Vinagre(酢漬け):新鮮なイワシを酢で締め、オリーブオイル、ニンニク、パセリでマリネした冷菜。白ワインやビールとの相性が抜群です。
マラガの海岸沿いにある「チリンギート(Chiringuito)」で、波音を聞きながら食べるボケローネスは、人生最高の贅沢の一つと言えるでしょう。
食文化の作法:ラシオンとタパスを使いこなす知恵

アンダルシア地方のレストランは皿の大きさを選べる所が多いです。食の細い日本の方なら、例え2人でも小皿料理の方だけを注文して下さい。アンダルシア地方には美味しいものが沢山あります。まずは小皿で注文して、美味しかったらもう一個頼めばいいのです。事前にきちんと注文しないと、大皿を勝手に出されてしまうので注意が必要です。
スペインを訪れたら絶対に食べておきたい美味しいスペイン料理を別記事でまとめました。

おすすめのアンダルシア地方の観光地
スペインのアンダルシア地方は見所が盛沢山の地域です。白い村の他にも見るべき場所が沢山あります。アンダルシア地方全ての街の見所を、こちらの記事でまとめました。

おすすめのスペインの観光地
アンダルシア地方は見所が多いので、アンダルシア地方だけを旅して丁度良いくらい。でもスペインには他にも沢山観光名所があります。地方によって全く異なった顔をみせてくれるのがスペインの魅力。色々と組み合わせても楽しいかと思います。別記事でスペイン全土のおすすめの観光地をまとめました。



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