世界食べ尽くしの旅 

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黒海横断フェリーでの旧共産圏的な食事、貨物船で楽しむ黒海クルーズ

   

七つの海と呼ばれる北大西洋、南大西洋、北太平洋、南太平洋、インド洋、北極海、南極海、全ての海を航海しました。そうなると何時からか、七つの海だけではなく、世界に存在する全ての海を航海してみたいと思うようになりました。ヨーロッパとアジアの間に黒海と呼ばれる内海があります。念願かなってやっと航海する事が出来ました。

黒海をクルーズしたい

コーカサス地方を旅していた時、私が住んでいるスペインに戻るには、直接帰るより他の国を経由した方が断然お得な事に気付きました。一番安いのがジョージアの黒海沿いにある港町バトゥミから飛行機でウクライナに飛び、電車でポーランドにぬけてからスペイン行きの飛行機を捕まえるルートでした。

でもバトゥミの街で黒海を眺めていたら、何とかしてこの海を航海したい、そんな欲望が生まれてしまったんです。地中海やエーゲ海には沢山のクルーズ客船が存在します。少々お値段は張りますが、お金さえ出せばどの海でも航海を楽しむ事が出来ます。

飛行機に乗るのが一番安い方法だと分かっていても、世界の全ての海を制覇したい気持ちの方が断然強く、クルーズ船を探すことにしました。でも直ぐにそんなものは存在しない事が分かりました。

バトゥミの港に停泊していたのはタンカーのような船ばかり。豪華なクルーズ客船とは違って、見るからに貨物船しか停泊していなかったからです。それならせめて黒海の水に触れてからスペインに帰ろう。そう思ってビーチに向かいました。

黒海を渡る方法

そこで運命的な出会いをしてしまったんです。季節外れのビーチには人が余りいませんでしたが一組の家族連れがピクニックをしていました。コーカサス地方の人々は外国人を見ると「おもてなしせねば」の気持ちになるらしく、この家族も例にもれず手招きしてピクニックに誘ってくれました。

美味しい料理をご馳走になりながら話をしていると、彼らが黒海を渡ってウクライナに行く船を待っているところだと知りました。自家用車でウクライナに住む旦那さんの家を訪れるので、貨物船に車を乗せるのです。

黒海を横断する貨物船

考える間もなく「私もその船に乗りたい。どうしたらいい?」と質問していました。出航は次の日の朝。ピクニックに誘ってくれた家族を全員引き連れて、貨物船のチケットオフィスに行きました。

貨物船には1人用、2人用、4人用のキャビンがあります。貨物船なので優先順位はトラックの運転手さん達。余ったキャビンを一般客にも売ってくれるのです。でも残念な事に全てのキャビンは満員でした。

するとピクニックに誘ってくれた家族達が、自分達は5人で4人用と2人用のキャビンをとってあるから、余ったベットを私の分に充てればいい、とオフィスの人に掛け合ってくれたのです。そこからはトントン拍子で話が進み、翌日の朝のチケットを取る事が出来ました。

ジョージアのバトゥミからウクライナのオデッサまでは距離にして1200km程。貨物船では29時間かかります。部屋のランクによって乗車賃が若干異なりますが、航海中の全てのご飯がついて120ドル位の値段でした。

黒海横断フェリーでの食事

黒海横断フェリーでの朝食

朝食は卵料理にソーセージが基本のパターンでした。他にもオートミールがつくのでガッツリ系の朝ご飯です。貨物船なだけに肉体労働者系の乗客が多く、朝ご飯に限らず食事は全てボリューム満点でした。

コップに入った白い液体は牛乳ではなくヨーグルト。トルコなどで良く飲まれている塩味のヨーグルトです。私が乗ったのはウクライナの貨物船だったので食事はウクライナ料理が基本ですが、アクセント的に周辺各国の料理が混ざります。

味、ボリューム、共に満足しましたが、私はコーヒー党なので紅茶しか出ないのが辛かったです。余りにもカフェインに飢えたので有料のバーでコーヒーを飲みました。でも味が薄く不味かったのが非常に残念ポイントです。

黒海横断フェリーの昼食

スープ、サラダ、メイン料理、デザートには果物が出ました。合計2回昼ご飯を食べましたが何時もこのパターンでした。ウクライナの人達はマヨネーズが大好きなので、殆どのサラダがマヨネーズ合え。ウクライナらしくディルが上にのっかっています。

コーカサス地方の人達はディルよりもパクチーを主に使います。コーカサス地方旅行中に体がすっかりパクチーに染められていたので、ディルだと何だか物足りない気がしました。ヨーロッパはパクチー殆ど食べないので寂しいです。

朝食にはトルコ風の塩味のヨーグルトが付きましたが、お昼ご飯時はウクライナ風のコンポート。果物を大量のお湯で煮て冷まして飲む、東欧で一番ポピュラーな飲み物です。ウクライナに近づくほどウクライナ料理にも近づく感じがしました。

黒海横断フェリーでのディナー

夜はスープがつきません。でも相変わらずのガッツリ系。鶏の胸肉のムニエルにジャガイモのオーブン焼き、そしてキャベツの酢漬けであるザワークラウト。ウクライナのお惣菜屋さんで必ず売っているビーツのサラダも付きます。

デザートは果物ではなくクッキー。良くスーパーで売られている至って普通のクッキーなのですが美味しく頂きました。私は海の上にいると甘いモノが無性に食べたくなるんです。陸にいると何時でも好きな時に好きなモノを買えますが、船の中では限られたモノしか手に入りません。

普段なら食べたいとさえ思う事のないモノでも海の上では何故だか急に食べたくなってしまうんです。以前クルーズ船で働いていた時は常に何かしらの禁断症状が出て、港に着く度にスーパーで色々なモノを買っていました。

今回はたった30時間未満の航海なのに、クルーズ船で働いていた時のような甘いモノに対する欲求が湧き出てきたのに驚きました。黒海横断フェリーはクルーズ船ではなく貨物船です。ショップでは必要最低限のものしか販売していないので、色々と買い込んでから乗船した方がいいと思います。

旧共産圏の食事時間の短さ

貨物船での食事は内容、味、そしてボリューム、とても満足しましたが食事時間が30分しかないんです。クルーズ船では食事をする事もアトラクションの一つとなっているので、お洒落をしてレストランへ行き、ゆったりと食事を楽しみます。

貨物船での食事は朝が7時から7時半、昼が1時から1時半、夜が7時から7時半と厳格に決められています。時間厳守もそうですが座席も毎回決められていて、好きな席には座れません。各テーブルに割り振られた番号が記入されています。

お洒落して食堂にやってくる人も皆無。殆どの人がジャージです。私は長年スペインに住んでいるので食事時間をたっぷり取る習慣があります。最低でも1時間はないと食べられません。同じテーブルにイタリア人も居たのですが、彼の国も同じような習慣を持ちます。

食事の前から2人して、とても不安でした。時間内で食べ終わる気が全然しなかったからです。最初の食事の時は、食べる事に必死過ぎて味が全く分かりませんでした。スペインとイタリア。お国柄お喋りしながらゆっくり食事をする事に慣れ切ってしまっています。

30分の縛りは本当にキツく感じられました。でも私達以外は旧共産圏の人達。彼らは普段から食事中に話す習慣がありません。席に着いてから10分もかけず食べ終わる人が殆どでした。旧共産圏では食事時間が30分でも全く問題になりません。よくよく考えてみれば日本も同じようなもの。

30分経つと例え食事が終わってなくても食堂の外に締め出されるので、私達は毎回必死でした。一生懸命早く食べて、それでも最後の最後に食堂を出て、「何だか全然食べた気にならないね」と嘆きあう。毎回それの繰り返しでした。

イタリア人は若い時の兵役時代を思い出したと言います。何時戦争が起きるか分からない設定なので兵舎での食事も30分なのだそう。日本の皆様は平和な時代に生きていても、毎日が戦争のように厳しいのだと、のほほんしている自分が申し訳ない気になりました。

旧共産圏の人達は食事時間には話さないのですが、その後バーに行き朝まで飲んでお喋りを楽しみます。殆どの人がトラックのドライバーなので普段はお酒を飲む事が出来ません。ここぞとばかりに皆さん大量のウォッカを飲んで楽しんでいました。

黒海横断クルーズの問題点

通常は30時間以内でウクライナに着くのですが天候によって大きく遅れが出ます。内海とは言え揺れる時は揺れますし、波が高いと港に入れません。全てが天気次第なので時間が全く読めません。今回は到着が9時間近く遅れました。

ウクライナに着いたのは夜中の3時。公共の交通機関は勿論ありません。周りには何もなく、野犬がウロウロしている真っ暗な港に降ろされます。私は運よく船内で色々な人と知り合いになる事が出来たので問題ありませんでしたが、一人だったらどうなっていたことでしょう。想像するだけで怖いです。

黒海横断クルーズの楽しみ方

素敵な出会いに恵まれて、念願の黒海を楽しく航海する事が出来ましたが、もう一度やれと言われたら、もう結構ですと即答します。時間がかかる、思いっきり遅れる、値段が高い、そして貨物船なのでクルーズ船と違って全く娯楽施設がないからです。

食堂で食べる、その後に飲む、それ以外に何もする事がないので時間を持て余してしまうんです。ただその分、暇を持て余した人達とお喋りが弾みます。日頃なかなか知り合う事のないトラックの運ちゃん達と楽しい時を過ごしました。

念願の黒海は想像していたより黒くはありませんでしたが、地中海やエーゲ海とは全く違う暗い色をしていました。どの海も同じようでいて全く違う。だからこそ航海は面白いのだと思いました。

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