ヨーロッパ在住のフードライターが、世界中の郷土料理を食べ尽くすの記録。今回はユネスコの世界遺産に登録されるほど有名なメキシコの食べ物にスポットを当てます。日本ではメキシコ風のアメリカ料理、テックスメックスの方が浸透していますが、真のメキシコ料理は別次元の美味しさです。
フードキュレーターの視点:
2010年、メキシコの伝統料理はユネスコの無形文化遺産に登録されました。これは単なる「料理」としてではなく、古代から続く農耕、儀式、そしてコミュニティの絆を含む包括的な文化システムが評価されたものです。2026年現在、世界中のトップシェフがメキシコの伝統的な発酵技術や「ニクサマライゼーション(アルカリ処理)」に注目しており、ガストロノミー界で最も熱い視線を浴びている料理の一つです。
- メキシコの主食:トルティーヤの科学と歴史
- 森のバター:ワカモーレの真実
- 伝統の味:フリホーレス・レフリトス
- メキシコの魂:2色のサルサ
- タコスの世界:無限のバリエーション
- 豚肉のコンフィ:タコス・デ・カルニータス
- 移民が生んだ傑作:タコス・アル・パストル
- 週末の御馳走:タコス・デ・バルバコア
- 究極の部位:タコス・デ・カベサ
- 至福の柔らかさ:タコス・デ・レングア
- 炭水化物×炭水化物:タコス・デ・パパス・コン・チョリソ
- チーズ論争の的:ケサディーヤ
- ビールの親友:トトポス
- 国境の味:ナチョス
- おつまみサイズの定番:ソぺス
- 旨辛ソースの海:エンチラーダ
- 北部の巨人:ブリート
- 白いトルティーヤのタコス:グリンガ
- オアハカ風ピザ:トラユーダ
- 朝食の定番:チラキレス
- 癒しの味:ソパ・デ・トルティーヤ
- 儀式のスープ:ポソレ
- テキサス生まれ:ファヒータ
- 古代からの携帯食:タマレス
- ユカタンの至宝:コチニータ・ピビル
- 魔法のソース:モーレ・ポブラノ
- 緑の誘惑:モーレ・ベルデ
- 黒いダイヤモンド:モーレ・ネグロ
- 食べる国旗:チレ・エン・ノガーダ
- 元祖バーベキュー:バルバコア
- 海の恵み:セビーチェ
- ベラクルスの誇り:ウアチナンゴ・ア・ラ・ベラクルサーナ
- スーパーフード:エンサラーダ・デ・ノパリ―トス
- サンダルという名の料理:ワラチェ
- リッチな味わい:ゴルディタ
- メキシコの有名な飲み物
- メキシコのデザート
- メキシコで食べたいフルーツ
メキシコの主食:トルティーヤの科学と歴史

メキシコ人の主食はトルティージャ(Tortilla) 。アルカリ処理をしたトウモロコシの粉を石臼ですりつぶし、水と塩を加えて捏ねて薄く伸ばして焼き上げた極薄のパンのような食べ物で、メキシコ人の食卓に欠かせないものです。
トウモロコシの粉を使いますが、メキシコ北部では主に小麦粉を使い、同じくトルティーヤと呼んでいます。パンのようにそのままの状態で登場、既に具材が乗っていたり巻かれている、更には揚げたりスープに入れたり、メキシコにはトルティーヤを使った料理が沢山あります。
🎓 深掘り知識:ニクサマライゼーションの奇跡
本文にある「アルカリ処理」は、専門用語でニクサマライゼーション (Nixtamalization) と呼ばれます。乾燥トウモロコシを石灰水で煮ることで、外皮が柔らかくなるだけでなく、ナイアシン(ビタミンB3)の吸収率が劇的に向上し、必須アミノ酸のバランスも整います。この古代の化学技術こそが、メキシコ文明を栄養失調から救い、繁栄させた鍵なのです。
2026年の現在、メキシコでは遺伝子組み換えでない「在来種(Maíz Criollo)」への回帰運動が盛んであり、色とりどりの(青、赤、黒)トルティーヤを提供する高級レストランが増えています。
森のバター:ワカモーレの真実

前述のトルティージャと共にメキシコ料理に欠かせないのが、アボカドのディップ、ワカモーレ (Guacamole) 。良く熟れたアボカドを潰し、細かく刻んだ紫玉ねぎ、コリアンダー、トマトを加え、塩とライムを絞って味を調えます。
トルティーヤチップスにのせたり、料理の付け合わせにしたり、何にでも合うメキシコの万能ディップなので、常に食卓に登場します。メキシコは世界有数のアボカドの産地。日本で食べられているアボカドの殆どがメキシコ産です。
🥑 食文化メモ:アステカの遺産
「ワカモーレ」という名前は、ナワトル語(アステカの言語)でアボカドを意味する「Ahuacatl」と、ソースを意味する「Molli」を組み合わせた「Ahuacamolli」に由来します。本来は「モルカヘテ」と呼ばれる火山岩の石臼で作るのが正式です。
注意:2026年の現況
アボカド栽培による水不足が深刻化しており、現地のシェフたちの間では、サステナビリティを考慮してアボカドの代わりに「ウリ(Calabacita)」を使った偽ワカモーレ(Guacamole Falso)をあえて提供する動きも見られます。味は驚くほど似ています。
伝統の味:フリホーレス・レフリトス

ワカモーレ同様メキシコ人が大好きなディップがフリホーレス・レフリトス (Frijoles refritos) 、赤インゲン豆で作るペーストです。メキシコではレンズ豆やヒヨコ豆も食べますが、古来から伝統的に赤インゲンを好んで食べています。
🌿 隠し味の秘密
美味しいフリホーレスの秘訣は、豆を煮る際に「エパソテ(Epazote)」というハーブを入れることです。独特の石油のような香りがありますが、これが豆の風味を引き立て、さらに消化を助けてガス溜まりを防ぐ効果があります。単なる付け合わせに見えますが、トウモロコシ(アミノ酸)と豆(タンパク質)を一緒に摂ることで、肉に匹敵する完全栄養食となります。
メキシコの魂:2色のサルサ

ワカモーレと共に、メキシコ人の食卓に常備されるのが2つのソース。緑のソースがサルサ・ベルデ (Salsa verde) 、赤いソースがサルサ・ロハ(Salsa roja) です。色の違いはトマトとトウガラシの種類の差。緑のソースの方が辛いです。様子を見ながら加えましょう。
🔥 プロの技:タテマド(Tatemado)
本格的なサルサは、材料をただミキサーにかけるのではなく、一度鉄板や直火で黒く焦げるまで焼きます。この技法を「タテマド」と呼びます。焦げ目の香ばしさがサルサに深みを与えます。ちなみに緑のサルサは、未熟なトマトではなく「トマティージョ(Tomatillo)」というホオズキの仲間を使います。
タコスの世界:無限のバリエーション

メキシコ人に人生の最後に何を食べたいかと質問すれば、誰もが必ずタコス(Tacos)と答えます。メキシコのソウルフードであるタコスは、前述のトルティーヤに肉や野菜などの具材を挟んで2つ折りにした食べ物。
日本ではメキシコ風アメリカ料理の、パリっとした皮で挽肉やチーズを挟むタコスの方が主流となっていますが、本場メキシコのタコスは皮が柔らかいのが特徴です。メキシコのタコスはバラエティが豊かで、具の組み合わせが異なる60種類以上のタコスが存在します。
手のひらサイズで価格も安いので、色々と試して自分好みのタコスを見つけて下さい。メキシコ人は毎日何時でもタコスを食べますが、朝食または夕食として食べる人が多いです。
タコスを扱うお店では注文の際にコン・トド?(全て付ける?)と聞かれます。玉ねぎ、パクチー、唐辛子ソースを意味するので、パクチーが嫌いな方は抜いてもらいましょう。食べる直前にライムを絞ります。
豚肉のコンフィ:タコス・デ・カルニータス

数あるメキシコのタコスの中で、一番人気を誇るのがタコス・デ・カルニータス (Tacos de Carnitas) 。豚のラードでじっくり低温加熱した、ジューシーな豚肉のコンフィが主役のタコスです。肉の味付けはシンプルに塩のみ。
だからこそ豚の旨味が際立って本当に美味しい。現在ではメキシコ全土何処ででも食べる事が出来ますが、メキシコ中西部のミチョアカン州が本場。カルニータスの激戦区となっているので、長蛇の列が出来ているタコス屋を狙って下さい。
🐖 美食家の注目点:銅鍋の魔術
本場のカルニータスは、必ず巨大な「銅鍋(カソ・デ・コブレ)」で作られます。銅の熱伝導率により、豚肉全体に均一に熱が伝わり、外はカリッと、中はホロホロの食感が生まれます。風味付けにオレンジジュースやコカ・コーラを入れる秘伝のレシピも存在します。
移民が生んだ傑作:タコス・アル・パストル

タコスの王様カルニータスに、肩を並べる人気を持つのがタコス・アル・パストル(Tacos al pastor) 。レバノン系の移民達が広めたアラブ風タコスで、もの凄い勢いでメキシコ人の胃袋を魅了しました。パイナップルが入るのが大きな特徴で、スパイスと甘さのバランスが絶妙です。
豚肉をアチョーテと呼ばれる食紅、唐辛子、ニンニク、果物などを入れたスパイス液に24時間漬けてから焼くので、赤い色をしています。ドネルケバブのように串に刺して、回転させながらバナーで焼き上げます。
🌍 歴史トリビア:シャワルマからの進化
1960年代、プエブラ州に移住したレバノン移民が持ち込んだ羊肉のシャワルマが起源です。メキシコ人がこれを豚肉に変え、中東のスパイスの代わりに地元の唐辛子とアチオーテを使い、最後にパイナップルをトッピングすることで、甘味・酸味・辛味が一体となった独自の料理へと進化しました。「パストル」は羊飼いを意味します。
週末の御馳走:タコス・デ・バルバコア

メキシコのタコスはカルニータとパストルが2強ですが、タコス・デ・バルバコア (Tacos de barbacoa) も負けず劣らずの人気があります。バルバコアはメキシコ流バーベキューの事。私達が想像するバーベキューとは異なり、石窯で蒸し焼きにするスタイルです。現在では柔らかくなるまで蒸したり煮たりした肉の事もバルバコアと呼んでいます。
🥃 通の楽しみ方:コンソメスープ
バルバコアは主に羊肉(Borrego)を使います。肉を蒸し焼きにする際、その下に鍋を置き、滴り落ちる肉汁と脂、そして野菜を受け止めてスープにします。これを「コンソメ(Consomé)」と呼び、タコスと一緒に注文して飲むのが正統派のスタイルです。濃厚な旨味は、二日酔いの朝に最高の一杯とされています。
究極の部位:タコス・デ・カベサ
タコス・デ・カベサ (Tacos de cabeza) は牛の頭の部分、頬の肉、脳、牛タン、のど仏、声門、目玉などを、何でも無駄なく使って作るタコス。ゲテモノ系が苦手でないなら、絶対食べてみて下さい。色々な部位の肉の味が交わって美味しいです。
至福の柔らかさ:タコス・デ・レングア
メキシコを訪れたら絶対食べるべきタコスが、柔らかく煮込んだ牛タンを使ったタコス・デ・レングア (Tacos de lengua)。メキシコ人、牛タンを調理させたら世界一だと思います。もう本当に至福の味。
炭水化物×炭水化物:タコス・デ・パパス・コン・チョリソ

メキシコのタコスは肉系が一番美味しい。でもジャガイモとソーセージのタコス、パパス・コン・チョリソ (Papas con chorizo) も一緒に注文する事をお勧めします。炭水化物X炭水化物のメキシコ版焼きそばパンのような存在。
チーズ論争の的:ケサディーヤ
トルティーヤにチーズをのせて、半分に折って鉄板で焼いた料理がケサディ―ジャ(Quesadilla) 。タコスとの違いが結構あいまいですが、基本的にタコスより大きくチーズがメインで入るとケサディ―ジャと呼ばれます。
⚠️ 注意:メキシコシティの罠
首都メキシコシティで「ケサディーヤ」を注文する際は注意が必要です。地方では必ずチーズが入っていますが、首都だけは「チーズなし」がデフォルトの場合があります。チーズ入りが欲しい場合は必ず「コン・ケソ(Con queso / チーズ入り)」と注文してください。これはメキシコ国内でも終わりのない論争のネタになっています。
ビールの親友:トトポス

丸いトルティージャを8等分位にカットして、油でカラッと揚げたスナックがとトトポス (Totopos) です。トルティーヤチップスとも呼ばれ、ピリ辛のソースやワカモレ、チーズディップなどをつけて食べます。ビールのつまみに最高の一品。
国境の味:ナチョス

ナチョス(Nachos)とは何なのか。これはメキシコ人の間でかなりホットな議題になります。ナチョスはアメリカナイズされたトトポスと言う人もいますが、一般的にはトトポスにチーズやチリコンカン、ワカモレなどをのせてオーブンで焼いた料理をナチョスとみなしているようです。
🌎 発祥の地:ピエドラス・ネグラス
ナチョスは1943年、メキシコのコアウイラ州ピエドラス・ネグラスのレストランで、イグナシオ・”ナチョ”・アナヤ氏が米軍兵士の妻たちのために即興で作ったのが始まりです。つまり、れっきとしたメキシコ生まれの料理です。
おつまみサイズの定番:ソぺス
ソぺス(Sopes) はトウモロコシの粉で作る、ラードで揚げ焼きにした小さくて厚いトルティーヤ。赤インゲン豆のペーストを塗りレタスをのせ、その上に肉系の具材を加えて、唐辛子ソース、粉チーズ、クリームソースなどをトッピングします。
ソぺスは通常のトルティーヤよりも小さく(おせんべいサイズ)かなり厚く、ふちがあります。個人的に好物で、メキシコではタコスとソぺスを交互に食べていました。メキシコのトルティーヤは本当に奥が深いです。
旨辛ソースの海:エンチラーダ

トルティージャを軽く油で焼いてから具を巻き、唐辛子ソースをたっぷりかけてキャベツの千切りをのせた料理がエンチラーダ (Enchilada) 。肉、魚、野菜、チーズ、中身の具は何でもありで、お店によって異なる色々なソースがふんだんにかけられています。
北部の巨人:ブリート
トウモロコシの粉ではなく小麦粉で作ったトルティーヤで、肉やフリホ―レス・レフリトス(赤インゲン豆のペースト)などの具材をクルクル巻いた料理がブリト― (Burrito) です。トルティーヤがトウモロコシの粉で作るものより柔らかく、サイズが大きいのが特徴。
アメリカで良く食べられ、日本でもコンビニで販売されるほど、世界的に浸透したメキシコ料理。メキシコのチワワ州、シウダー・フアレスが発祥の地です。アメリカのブリトーは、具材にサラダやディップ類もたっぷり加えて巻くのでかなり太いサイズになります。
🌯 歴史の小話:ロバの荷物?
「ブリート」はスペイン語で「小さなロバ」を意味します。メキシコ革命期、ロバに乗って食料を運んでいた商人が、冷めないように巨大なトルティーヤで料理を包んでいた姿が、ロバの荷物に似ていた、あるいはロバに乗って売りに来たことから名付けられたという説が有力です。
白いトルティーヤのタコス:グリンガ

グリンガ (Gringa) もトウモロコシではなく小麦粉を使って作る白いトルティーヤ。タコスと全く同じように食されます。写真はマリネされた赤い肉とパイナップルが入ったグリンガ・アル・パストル。
オアハカ風ピザ:トラユーダ
メキシコ南部オアハカ州の名物がトラユーダ (Tlyayuda)。ピザのような大きなサイズのトルティーヤに赤インゲン豆ペーストを塗り、具材とチーズをのせます。30㎝位のサイズが多く、まさにメキシコ風ピザのようないでたち。
ケシ―ジョと呼ばれるオアハカ名物のチーズが独特で、ゴムのような変な弾力があり、日本の裂けるチーズの元となったチーズ。オアハカ州はグルメな土地として大変有名なので、是非本場で美味しいトラユーダを楽しんで下さい。
🧀 必食:オアハカチーズ
「ケシージョ(Quesillo)」は、モッツァレラチーズと同じパスタフィラータ製法で作られます。2026年現在、世界のチーズアワードでも高く評価されており、その複雑な塩気とミルクの風味は、単なるトッピングの域を超えています。オアハカの市場で山積みにされたケシージョは圧巻です。
朝食の定番:チラキレス

油で揚げたトウモロコシのトルティーヤに、緑や赤のソースやモーレをかけて煮込んだ料理がチラキレス (Chilaquiles) 。固くなったトルティーヤと余ったサルサをリサイクルした料理です。メキシコでは夕食で残ったトルティーヤをチラキレスにして、朝ごはんや昼ごはんとして食べる家庭が多いです。
🚑 酔いざましの特効薬
メキシコでは、チラキレスは最高の「二日酔い対策(Para la cruda)」と信じられています。激辛のサルサで汗をかき、炭水化物でエネルギーを補給するという理屈です。レストランでは、チップスがカリカリのままか(Crujiente)、ソースでふやけているか(Suave)を選べることもあります。
癒しの味:ソパ・デ・トルティーヤ
メキシコの味噌汁的存在が、ソパ・デ・トルティーヤ (Sopa de tortilla) 。トマトベースのスープにトルティーヤが沢山入っています。シンプルな具材で、メキシコでは珍しく辛くない優しい味のするスープです。
儀式のスープ:ポソレ

アステカ時代から受け継がれているメキシコの伝統料理がポソレ (Pozole) と呼ばれるコーンを主体とした具沢山の豚骨スープのような食べ物。ただコーン以外の野菜は肉と一緒に煮込むのではなく、生の状態で食べる直前に混ぜます。
スープとは別にキャベツの千切り、ラディッシュ、玉ねぎ、パクチーなどの入った小皿が付いてくるので、お好みでスープに加えて食べます。温かいスープと野菜のシャキシャキ感の組み合わせが楽しくて美味しい。
スープの主体となるコーンは、私達が良く食べているコーンではなく、大きくて甘くないコーン。ポソレは作る人の数だけレシピがありますが、基本的には白いポソレ (Pozole blanco) 、緑のポソレ (Pozole verde)、赤いポソレ (Pozole rojo) の3色の3種類です。
ベースとなるのが、透明の豚骨スープである白いポソレ。ハラペーニョやパクチーが加わると緑、トマトと唐辛子のペーストなら赤いポソレになります。ポソレ自体にトウモロコシが入ってるので、メキシコでは大変珍しくトルティーヤが付いてこない料理。と思ったらポソレにトルティーヤを浸して食べている人も結構いました。
🌽 特別なコーン:カカワシントレ
ポソレに使われる巨大な白いトウモロコシは「カカワシントレ(Cacahuazintle)」と呼ばれる品種です。加熱するとポップコーンのように花開き、モチモチとした食感が特徴です。かつては宗教的な儀式でのみ食された神聖な料理でした。
テキサス生まれ:ファヒータ
ファヒータ (Fajita) は、メキシコ料理の影響を受けて、アメリカのテキサス州で生まれたテクス・メクス (TEX-MEX) 料理を代表する一品。アメリカで大人気となりメキシコに逆輸入されました。小麦粉で作るトルティーヤで、グリルした肉や野菜を包みます。
古代からの携帯食:タマレス

メキシコ版ちまきのような食べ物が、マヤ時代から存在する伝統料理タマレス (Tamales)。トウモロコシの粉をラードと一緒に練り、トウモロコシの皮で包んで蒸した食べ物です。南部の熱帯地方では、トウモロコシではなくバナナの葉を使います。
メキシコに限らず中南米や南米で広く食べられている料理で、中身の具はチキンや豚などの肉系が主流。メキシコではタマルを朝食や夜食として食べる人が多いです。湯気が立っている寸胴鍋のある屋台では大抵タマルを売っています。
ユカタンの至宝:コチニータ・ピビル

豚肉をアチオーテ(Achiote)と呼ばれるベニノキの実、酢、パイナップル果汁、唐辛子などに漬け込み、バナナの葉に包んで石蒸しにした料理がコチニータ・ピビル (Cochinita pibil)。ユカタン地方の伝統料理です。
地面に穴を掘り、焼いた石を入れたピブと呼ばれる窯で作ります。窯にテキーラの原料となる竜舌蘭の葉をかぶせ、肉を蒸し焼きにします。肉を漬け込む時に使うアチョテは、先住民の間で医療品としても使われていた木の実。腹下しなどに良く効くらしいです。
魔法のソース:モーレ・ポブラノ

メキシコ料理の中で賛否が極端に分かれるのが、モーレ・ポブラノ (Mole Poblano)。カカオ、チリ、クルミ、アーモンド、トマト、ゴマ、何十種類ものスパイスをすり潰し混ぜ合わせて作る、メキシコの伝統的なチョコレート色のソースです。
カカオがメインのソースですが、余りチョコレート風の味はしないです。とても手の込んだ料理で、作る人の数だけレシピがあります。だからこそ同じ味のモーレに出会った事がありません、とか昔は言ったかも知れませんが、現在は結構似たような味が多いです。手作りする人が少なくなっているのでしょう。
美味しいモーレは本当に美味しい。でも手が込んでる割には美味しくない、何十種類ものスパイスを組み合わせて作る割には奥のない味、などの辛口批評が多い料理でもあります。鶏肉にかけて食べる事が多い。
緑の誘惑:モーレ・ベルデ
モーレはチョコレート色のソース。でも緑色のモーレも存在し、モーレ・ベルデ (Mole verde)と呼ばれます。チョコレート色のモーレと同様、沢山のスパイスを混ぜ合わせて作ります。何気に茶色より奥深い味のソースで、外国人からの人気が高いです。
黒いダイヤモンド:モーレ・ネグロ
メキシコで一番のグルメな地、オアハカ州の名物がモーレ・ネグロ (Mole negro) 。黒い色をしたモーレで、4種類の唐辛子とナッツ類、カカオ、9種類のスパイスとトマトで作ります。肉や野菜にかけて食べますが、他のモーレとは異なり米と一緒に食べる事は何故だかしません。
🥘 7つのモーレの伝説
オアハカ州は「7つのモーレの土地(Land of the Seven Moles)」として知られています。ネグロ(黒)、ロホ(赤)、コロラディート(赤褐色)、アマリ―ジョ(黄)、ベルデ(緑)、チチロ、マンチャマンテレス(テーブルクロスの染み)。それぞれ全く異なる風味を持ち、2026年現在、これらを巡るガストロノミー・ツアーが世界中のフーディーに人気です。
食べる国旗:チレ・エン・ノガーダ
メキシコでお祝い事があると必ず食べるのがチレ・エン・ノガーダ (Chile en Nogada)です。ザクロの実の赤、胡桃とヤギの乳で作るクリームソースの白、コリアンダーの緑、この3色をメキシコの国旗となるようにデザインして作ります。
メキシコで特別な日のメニューは何時だってチレ・エン・ノガーダ。特にメキシコの独立記念日、9月16日に好んで食べられる料理です。ザクロも胡桃も9月に旬となるので、メキシコを代表する季節料理とも言えます。
元祖バーベキュー:バルバコア
バルバコア (Barbacoa)はメキシコ風バーベキューを意味します。普通のバーベキューとは全く異なる、メキシコに古くから伝わる調理法。土を掘って作った窯の底に焼いた石を入れ、テキーラの原料となる蘭の葉をのせて肉を蒸し焼きにします。
海の恵み:セビーチェ

セビーチェ(ceviche) はペルー発祥の料理ですが、メキシコでも良く食べられています。白身魚や魚介類をライム果汁に漬け込みマリネにし、紫玉ねぎやパクチーなどを加えて食べます。セビチェリアと呼ばれる専門店で食べるのが一番美味しい。
ベラクルスの誇り:ウアチナンゴ・ア・ラ・ベラクルサーナ
魚を蒸し焼きにして、トマト、ニンニク、オリーブ、ケッパー、玉ねぎ、チリなどで作るソースで食べます。ウアチナンゴ・ア・ラ・ベラクルサーナ (Huachinango a la veracruzana)と呼ばれ、ベラクルス州の名物料理。魚はメキシコ湾で良くとれる赤い鯛を使います。ソースは魚だけでなく肉料理にも使います。
⚓ 融合の歴史
この料理はメキシコとスペインの食文化の融合(メスティソ)の完璧な例です。オリーブ、ケッパー、オリーブオイルはスペインからもたらされ、トマトと唐辛子はメキシコ原産。ベラクルス港がヨーロッパへの玄関口であった歴史を物語る一皿です。
スーパーフード:エンサラーダ・デ・ノパリ―トス
メキシコならではのサボテンを使ったサラダが、エンサラーダ・デ・ノパリ―トス (Ensalada de nopalitos) 。表皮のトゲを取ったサボテンの葉を軽く焼いてサラダにします。他の国ではお目にかかれない味なので、メキシコ滞在中に是非とも試して頂きたい。
食用のウチワサボテンは意外にも栄養価の高い食材で、コレステロールを改善し、動脈硬化を防ぐ効能もあります。メカブのようなネバネバが特徴。メキシコの市場を訪れると、サボテンの葉が山積みにされて売られています。
🌵 未来の食材
2026年、ノパル(サボテン)は世界中で「持続可能なスーパーフード」として再評価されています。少ない水で育ち、血糖値を下げる効果が科学的に立証されたことで、糖尿病予防食やダイエット食として、欧米のスーパーマーケットでも見かけるようになりました。
サンダルという名の料理:ワラチェ
ワラチェ(Huarache)はメキシコの皮編みのサンダルを意味します。サンダルの形に成形したトウモロコシで作る分厚いトルティーヤに、赤インゲン豆などのペーストを塗り、肉、野菜、チーズ、サワークリームなどをのせて食べます。
リッチな味わい:ゴルディタ
油で揚げたり焼いたりしたトウモロコシの粉で作る厚めの生地に、具を入れた食べ物がゴルディタ (Gordita)。中身の具は色々ありますが、チチャロンと呼ばれる豚の皮が入ったものが一番人気。でも遥々メキシコまで来たからには、食用サボテンを刻んだものが入ったゴルディタを食べてみましょう。
メキシコの有名な飲み物
36. 古代の栄養ドリンク:アトーレ

アトーレ(atole)はメキシコを中心とした中央アメリカで親しまれている、トウモロコシと水で作る発酵性清涼飲料。先コロンブス期から飲まれている、歴史の古い穀物飲料です。タマルを食べる時に飲むのはアトーレ、と決めているメキシコ人が多い。
37. 熱帯の酸味:アグア・デ・タマリンド
メキシコでとてもポピュラーな、熱帯アフリカ原産のマメ科の植物を使って作るノンアルコール飲料がアグア・デ・タマリンド (Agua de Tamarindo)。優しい甘さとほのかな酸味、独特の豆の香がする飲み物です。
38. 濃厚な甘味:マメイ
メキシコ人は辛い食べ物が大好きな人種。そして甘い食べ物も大好物です。メキシコは辛いと甘いの振り幅が大きく中間がありません。甘い系は極甘。そんなメキシコ人ですら、甘過ぎて生食しないフルーツがマメイ(Mamey)です 。
甘さ10倍のねっとりした干し柿みたいな果物で、甘さが濃厚過ぎるので、牛乳と一緒にミキサーにかけて飲みます。シェイク状なので飲み物と言うよりデザートに近いかも。マメイはアイスクリームにしても美味しいです。
39. 勇者のカクテル:ミチェラーダ
ビールとライムジュースに、唐辛子ソースやスパイスなどを加えて作る、メキシコを訪れる外国人観光客にとって登竜門となる飲み物がミチェラーダ (Michelada) 。グラスのふちに食塩や唐辛子がまぶしてあり、更に厳しい道となります。
最初に飲んだ時は本当に無理な味で罰ゲーム位に思ったのですが、慣れてくると意外と美味しい。そう感じた時、メキシコに真に迎え入れられた気分になります。メキシコ人は勿論大好きで、更には二日酔いに効くとされています。
40. 世界を席巻:テキーラ
メキシコと言ったらテキーラ (Tequila) 。大きなアロエみたいな容貌のリュウゼツランを開花直前に切り取り、芯を蒸し焼きにしてデンプンを糖化させ、糖油を抽出してアルコール発酵させ蒸留したお酒です。
アルコール度数が40度以上ある強い酒ですが、メキシコ人はストレートで、塩とスライスしたレモンを交互になめながらグイっと飲むのが大好き。テキーラをベースにしたカクテルも沢山あります。
🥂 2026年のトレンド:プレミアム・テキーラとメスカル
かつては「一気飲み」の代名詞だったテキーラですが、現在はワインのように味わう「プレミアム・テキーラ」が主流です。特に100%アガベで作られた熟成もの(アネホ)は、ブランデーグラスでゆっくり香りを楽しみながら飲みます。
さらに注目すべきは、テキーラの兄貴分である「メスカル(Mezcal)」。スモーキーな風味が特徴で、職人が手作りする少量生産のメスカルは、世界中のバーで最もおしゃれなお酒としての地位を確立しています。
41. ロックの味:テキーラ・サンライズ
テキーラにオレンジジュースとグレナデンシロップをシェイクして作るカクテルがテキーラ・サンライズ (Tequila sunrise)。ローリング・ストーンズのミック・ジャガーがはまり、映画の題名になった事で、世界的な知名度を得たカクテルですが、メキシコ人はストレートで飲む事を好みます。
42. 永遠のクラシック:マルガリータ
テキーラをベースにしたカクテルなら、マルガリータ (Margarita)の方がメキシコ人には親しまれています。飲みやすいのでアルコールの弱い女性に人気。夏になるとフローズンにされたマルガリータが主流となります。
43. カジュアルの王様:コロニータ
メキシコを代表するビールがコロニータ (Coronita)、日本でもお馴染みの有名なビールです。瓶の中にスライスしたライムを入れ、グラスは使わずそのままラッパ飲みします。
メキシコのデザート
44. 甘辛の刺激:タマリンド・エンチラド
タマリンドの実に砂糖と唐辛子を加えて作るペースト状のスイーツ。メキシコ特有の辛くてスパイシーで甘い、慣れたらクセになる系のお菓子です。タマリンドの他にマンゴーやクランベリーなども使われます。
45. 神の飲み物:チョコラーテ
メキシコはチョコレート、スペイン語でチョコラテ(chocolate)の原料となるカカオの原産国です。メキシコとカカオの付き合いは古く、紀元前1900年頃から食されていました。神様の食べ物とされ、王侯貴族や高級僧侶にしか手が届かない貴重な食べ物だったので、カカオの種を通貨として使用していた時代もありました。
メキシコとカカオの繋がりは深いのですが、意外と美味しいチョコレートを見つけるのは難しいです。メキシコでカカオはスパイスとして使ったり、飲むチョコレートにするのが主流だからです。
メキシコで食べたいフルーツ
個人的にメキシコのスイーツは甘過ぎるので、デザートにフルーツを食べる事をおすすめします。メキシコは本当にフルーツ天国。安くて美味しい色々な種類のフルーツを楽しめますが、出来ればメキシコならではのフルーツを狙って食べて下さい。
46. 森のカスタード:グアナバナ
グアナバナ(Guanabana)は南国独特のフルーツで、日本語ではトゲバンレイシ又はシャシャップと呼ばれています。ドリアンに似たとげとげした緑色の皮の中に、白いクリーム状の身が詰まっています。甘味が強くクリーミィなので、森のカスタードと呼ばれています。チリモヤに似た味で、爽やかな酸味も持つ、独特の美味しさを持ったフルーツです。
47. サボテンの宝石:トゥナ
食用のウチワサボテンに出来る果実がトゥナ (Tuna)。甘さと水水しさのバランスが良く、冷やして食べると更に美味しいです。ただ固い種が沢山入っていて、種ごと飲み込む感じになるので、気になる人はダメかも。私も最初は少し食べ慣れない感じがしました。
48. スパイスで食べる:マンゴ
メキシコに限らず色々な国で食べる事の出来るマンゴー。でもメキシコではマンゴに唐辛子パウダーとレモンをかけて食べます。メキシコ人は唐辛子パウダーを常に摂取しないと死んでしまう人種なのかもしれません。
マンゴだけでなく、色々なフルーツに唐辛子パウダーとライムをかけて食べます。マンゴ、パイナップル、スイカを多く見かけました。最初はフルーツだけで食べたい衝動に襲われますが、慣れてくると意外と結構はまります。
🌶️ 魔法の粉:タヒン(Tajín)
文中で触れられている「唐辛子パウダー」の正体は、多くの場合「タヒン」という調味料です。乾燥チリ、乾燥ライム、塩をブレンドしたもので、辛さよりも酸味と旨味が強いのが特徴です。2026年現在、日本やアメリカでも人気が出ており、フルーツだけでなくビールやカクテルのグラスの縁につけるスノースタイルにも使われます。





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