知ってるようでいて実は知らないイタリア料理。日頃私達が食べているイタリア料理とイタリア人が食べているイタリア料理はかなり異なります。やはりイタリアの味はイタリアでしか味わえないのです。世界100カ国以上を食べ尽くしたヨーロッパ在住のフードライターが世界中のグルメを紹介するブログ。今回はイタリアを訪れたら必ず食べるべき、美味しいイタリア料理を50品紹介します。
イタリア料理の真髄:パスタ(Primi Piatti)
イタリア人はパスタばかり食べている、とされています。ずっと偏見だと思っていました。留学時にイタリア人3人と家をシェアし、共同生活をする事で実感した事があります。イタリア人は本当にパスタばかり食べています。
ローマの誇り:アマトリチャーナ

ローマを訪れてブカティーニ・アッラマトリチャーナ(Bucatini all’Amatriciana)を食べなかったら罪になる、と言われるほどローマ人にとって重要なソウルフード。本当に美味しいので絶対に食べて下さい。日本のナポリタンはこのパスタを元にして作ったのだそう。でも見かけはともかく全く味は異なる料理です。
ペコリーノチーズ、トマト、オリーブオイル、そして唐辛子が効いてピリッと辛いのが特徴です。一番大切なのがグアンチャーレ (Guanciale) と呼ばれる、豚のほほ肉の塩漬け。これが味の決め手となり、ベーコンで代用すると嘘っぽい味になります。
ブカティーニとは中に空洞のあるちょい太パスタの事。イタリアには何百という種類のパスタがあり、それぞれのソースに最適な種類のパスタを選んで食べるので、ソース名の前にパスタの名をつける事が多いです。
ソースに合わせるのが基本ですが、個人の好みでパスタの太さや種類を選んだりもします。ただアマトリチャーナだけはブカティーニと言う名のパスタで食べなくてはいけない、との絶対的な決まりがあります。他のパスタと合わせる事は断じて許されません。
【フードキュレーターの追記メモ】
アマトリチャーナの起源は、トマトがイタリアに普及する前の料理「グリーチャ(Gricia)」にあります。羊飼いたちが携行していたグアンチャーレとペコリーノチーズだけで作ったこの料理に、18世紀後半にトマトが加わって現在のアマトリチャーナが誕生しました。2020年には欧州連合(EU)の「TSG(伝統的特産品保証)」として認定され、そのレシピは法的に保護されています。
議論を呼ぶ傑作:カルボナーラ (Carbonara)

本場イタリアのカルボナーラは生クリームを使いません。卵だけで充分クリーミィーなパスタになります。カルボナーラとは石炭の意味。炭焼き職人がパスタを作ったら、手についた石炭がポロポロ落ちてこんな風になるのではないか、みたいな感じで黒コショウを振りかけるのがポイントです。
誰もが知っていて、誰もが知らないイタリア料理の代表。海外に出て一番辱めを受けたイタリア料理とされています。カルボナーラを生クリームパスタだと思っている世界の風潮に、イタリア人は心を痛めています。早く誤解を解いて、本来の、真のカルボナーラを世界に知ってもらいたいと思っています。
【フードキュレーターの追記メモ】
近年、料理史家の間では「第二次世界大戦中に米軍が持ち込んだベーコンと卵の配給食糧からローマのシェフが考案した」という説が有力視されています。2026年現在でも、毎年4月6日は「Carbonara Day」として、SNS上で世界中の愛好家が#CarbonaraDayのハッシュタグと共に真のレシピ(卵黄、ペコリーノ、グアンチャーレ、黒胡椒のみ)を称え合います。
緑の宝石:ペスト・ジェノベーゼ
バルジたっぷりの緑色のソースのパスタがペスト・ジェノベーゼ ( Pesto Genovese) 、ジェノバの郷土料理です。世界に広く浸透したソースで、イタリア国外では単にペスト (Pesto) の名で定着しています。ジェノバの名産であるバジルに、ニンニク、オリーブオイル、松の実、パルメザンチーズを攪拌して作ります。パスタだけでなく、肉、魚、野菜、何にでも合う素晴らしいソース。
世界に進出したイタリア料理の中で、一番本場の味に忠実なのではないでしょうか。と思ったらジェノバ人からペスト・ジェノベーゼを語るにはジェノバ産のバジルを使わなければならない。そしてジェノベーゼとだけ呼ぶなら緑ではなく牛肉の茶色のソースだ、と鼻息荒く主張されました。もう本当にイタリア人ってメンドクサイです。
【フードキュレーターの追記メモ】
本物のペストを作るには、大理石のすり鉢(mortaio)と木のすりこぎを使うことが必須とされています。ミキサーの熱でバジルの香りを飛ばさないためです。DOP認定を受けた「Genovese Basil」を使用することが公式レシピの条件であり、リグーリア州ではこの伝統的な製法をユネスコ無形文化遺産に登録しようとする動きが活発です。
美食の都の王:ボロネーゼ (Bolognese)

パスタの王者、ボロネーゼ。食の都、イタリア北部ボローニャの街の裕福層が生み出した料理です。本来は牛肉を赤ワインでコトコトじっくり煮込んで作ったので、日本人が慣れ親しんでいる挽き肉のミートソースとはかなり様子が異なります。
ボロネーゼはタレアテッレ (Tagliatelle) と呼ばれる平たい麺で食べなくてはならないとの見えない決まりがあります。細いスパゲティで食べるなんてボロネーゼへの冒涜。イタリア人はソースとパスタの組み合わせに本当にウルサイので注意しましょう。
イタリア全土で食べる事ができますが、本場ボローニャの街を訪れたら「Trattoria Anna Maria」か「Trattoria della Santa」のレストランで食べて欲しいです。今まで食べてきたボロネーゼは何だったのかと思う程メチャクチャ美味しいです。
【フードキュレーターの追記メモ】
ボローニャ商工会議所には、1982年に登録された「正式なボロネーゼソースのレシピ」が厳重に保管されています。2023年にはレシピが現代風に微修正されましたが、やはり「タリアテッレ」で食べることが鉄則です。地元ではスパゲッティ・ボロネーゼは「観光客向けの罠」と見なされるので要注意です。
ナポリの潮風:ボンゴレ

ナポリ名物のアサリのパスタがボンゴレ (Vongore) です。世界的に有名なイタリア料理の多くは、ナポリの名物。太陽と地中海の恵みをふんだんに使って作るナポリの郷土料理は、一番イタリアらしい料理なのだと思います。
ボンゴレには赤 (Rossso) と白 (Bianco) の2種類あります。赤はトウガラシやトマトを使い、白はアサリのだし汁をメインに白ワインで作ります。いずれにせよナポリ産の白ワインをキンキンに冷やしてお供にして下さい。
【フードキュレーターの追記メモ】
最高のボンゴレを食べるなら、メニューに「Vongole Veraci(ヴォンゴレ・ヴェラーチ)」と書かれているか確認してください。これは地中海原産の身が大きく味が濃厚なアサリを指します。一方、「Vongole Filippine」は養殖の外来種であることが多く、現地の食通は明確に区別しています。
地中海の恵み:魚介類のパスタ
イタリアは魚介類が美味しい。新鮮な魚介類をふんだんに使ったパスタはイタリア人も大好きです。呼び方が色々でアッロ・スコーリオ (allo scoglio) 、ペスカトーレ (Pescatora)、フルッティ・ディ・マーレ (Frutti di Mare)などと呼ばれています。
厳格には分けられてはいないようですが、アッロ・スコーリオは主に貝や甲殻類を使ってトマトを入れないケースが多く、ペスカトーレはトマトで煮込んで作る事が多いです。
【フードキュレーターの追記メモ】
「スコーリオ」は「岩礁」を意味し、岩場に住む魚介類を使うことに由来します。本当においしい店では、魚のアラからとった濃厚な出汁(Fumet di pesce)を乳化させてソースを作ります。この「乳化」技術こそが、観光客向けの店と名店を分ける決定的な差となります。
ヴェネツィアの黒:イカ墨のパスタ

ヴェネツィアと言えばイカ墨 (Nero di seppia)で 、ベニスを訪れたら絶対に食べなくてはいけない食材です。ヴェニスで一番有名なのはイカ墨のリゾット。でも個人的にイカ墨パスタの方が美味しいと思います。イカ墨は美味しいだけでなく、健康にも良いスーパーフード。合わせるのは絶対に白ワインです。
【フードキュレーターの追記メモ】
イカ墨料理は、元々は漁師が売れ残ったイカを無駄にしないために生まれた貧しい料理(Cucina Povera)でした。現在、ヴェネツィアのリアルト市場周辺の食堂では、朝どれのイカを使った「口が真っ黒になる」本物の体験ができます。食べる際は、白い服を着ていかないことが地元の鉄則です。
刺激的な物語:プッタネスカ (Puttanesca)
美食の土地ナポリには沢山の名物があります。ボンゴレも美味しいけれどプッタネスカも捨てがたい。アンチョビ、オリーブ、ケッパーなどが入ったトマトソースのパスタです。
唐辛子を使ってピリ辛に仕上げるのと、ナポリの風俗店で提供していた事からプッタネスカ、娼婦風との名がつきました。そんな由来があるので、基本的には高級レストランよりもローカルのレストランで提供されます。ちなみに魚介類が入ったパスタは、チーズをかけずに食べるのがイタリア風です。
【フードキュレーターの追記メモ】
名前の由来には諸説あり、20世紀半ばにイスキア島の画家が、深夜にお腹を空かせた友人たちに「何でもいいから(puttanata qualsiasi)作ってくれ」と言われ、ありあわせの材料(トマト、オリーブ、ケッパー)で作ったという説も有力です。いずれにせよ、ナポリ湾に浮かぶイスキア島発祥の「夜食の王様」であることに変わりありません。
海の濃厚な旨味:ウニのパスタ
イタリア語でウニは海のハリネズミ (Ricci di mare) と呼ばれています。ヨーロッパはフランス人以外は、ウニって余り食べないです。イタリアでもウニのスパゲティーを食べたいなら、シチリア島まで行かなくてはなりません。でも行く価値は絶対にあり。なんかもうウニーって感じのパスタです。
【フードキュレーターの追記メモ】
注意:ウニはプーリア州やサルデーニャ島でも非常に愛されていますが、資源保護のため、毎年5月~6月頃に「禁漁期間(Fermo pesca)」が設けられています。この時期に生のウニを提供している店は、冷凍物か違法漁獲の可能性が高いため避けるのが賢明です。冬から春先が最高のシーズンです。
サルデーニャの至宝:マッロレッドゥス (Malloreddus)
イタリアには数えきれない程パスタの種類があり、中には特定の地方でしか食べられないパスタもあります。マッロレッドゥス (Malloreddus)は、サルデーニャ地方独特のパスタ。パッと見は昆虫の幼虫みたいな形でえぐいのですが、サルデーニャ近辺でしか見かけない珍しいパスタなので、お土産にも是非!
【フードキュレーターの追記メモ】
別名「サルデーニャのニョッキ」とも呼ばれます。最も伝統的な「カンピダネーゼ風(alla Campidanese)」では、ソースにサルデーニャ特産のサフランをふんだんに使い、ソーセージのラグーと合わせます。この地域はイタリア国内で最高品質のサフラン産地としても知られています。
家族の絆:ラザニア (Lasagna)
イタリア人に「お袋の味とは何か?」と聞けば殆んどの人がラザニアと答えます。家族が皆で集まった時の定番メニューもラザニア。イタリア人にとってラザニアとは、常に家族の思い出と共にあるのです。
元々はナポリの郷土料理なのですが、今ではイタリア全土で食べられています。具はひき肉の他にツナ、ホウレンソウ、色々あります。家庭の数だけラザニアの味があるとされています。
【フードキュレーターの追記メモ】
ボローニャ風のラザニア(Lasagne alla Bolognese)は、パスタ生地にほうれん草を練り込んだ「緑色のラザニア(Lasagne Verdi)」が正統派です。ミートソース、ベシャメルソース、パルメザンチーズの7層構造が黄金比とされ、週末のランチタイムには多くの家庭からこの焼ける匂いが漂います。
将軍の名を持つ味:ヴィンチスグラッスィ (Vincisgrassi)
マルケ州を代表する郷土料理で、ラザニアの原型とされています。見かけはラザニアとほぼ同じ。鶏のレバーをトマトソースに入れるのが特徴です。ラザニアよりベシャメルソースの量が少なく、パスタの量が多い。私はラザニアより断然こっち派です。余りメニューにないので、見かけたら絶対食べてみて下さい。
【フードキュレーターの追記メモ】
料理名は、1799年にアンコーナを包囲したオーストリアの将軍「アルフレート・フォン・ヴィンディシュ=グレーツ(Windisch-Graetz)」の名が訛ったものだという伝説があります。トリュフや多種の内臓肉を使う非常にリッチな料理で、かつては貴族のための特別な一皿でした。
木曜日の伝統:ニョッキ (Gnocci)

ジャガイモで作るパスタというかジャガイモ団子。元はローマの郷土料理ですが、イタリア全土、そして世界に広まりました。ただスーパーで売ってるのはそんなに美味しくないです。是非手作りものを食べて欲しい。
季節になると出回るカボチャのニョッキがめちゃくちゃ美味しい。簡単なので手作りして下さい。でもイタリアのカボチャは日本のとは異なる種類なので注意が必要。カボチャのほんのりした甘さを味わう為に、ソースはシンプルにセージとバター。それだけで十分美味しいです。
【フードキュレーターの追記メモ】
ローマでは「木曜日はニョッキ(Giovedì Gnocchi)」という格言があり、多くのトラットリアで木曜日の日替わりメニューとして提供されます。これは金曜日に肉を絶つ宗教的習慣の前日に、腹持ちの良いジャガイモでエネルギーを蓄えるためだったと言われています。
ハーブ香る:ラビオリ・アッラ・ジェノベーゼ
ラビオリを食べるならジェノバ名物のラビオリ・アッラ・ジェノベーゼ (Ravioli alla Genovese) がおすすめ。通常のラビオリより大きめで、中の具は肉でなく野菜です。クルミとパルメザンチーズのソースで食べます。
また、ジェノバ地方の料理を特徴づけるのが Preboggionの存在。これを使用したソースが絶品ですが、ジェノバ地方以外ではあまり見かける事がないです。海岸線沿いに生息する7種類以上の野草をブレンドしたもので、春先に市場に出回る貴重な味覚です。
【フードキュレーターの追記メモ】
ジェノバでは、このラビオリに「トッコ(Tuccu)」と呼ばれる濃厚な肉の煮込みソースを合わせるのも伝統的です。中の詰め物が野菜ベースであるため、肉ソースとのバランスが絶妙です。
本場の味を堪能する:ピッツァ(Pizza)
イタリア人はパスタをレストランで食べません。パスタは家で作るものだと思っているからです。でもピザは外の専門店で食べます。友達と夕食に出かける、はイコールでピッツァを食べるの意味です。
イタリア産のピッツァは、移民者によってアメリカに伝わりピザが生まれました。大流行し、更に気軽に食べられる冷凍ピザが誕生します。その冷凍ピザが東京オリンピックの時に日本に伝わりました。
日本ではずっとアメリカのピザが主流でしたが、イタ飯の流行でイタリアのピッツァも浸透しました。ただローマ風の薄いピッツァが多いでしょうか。ピッツァの本場とされるナポリのピッツァは、ふっくらカリッとしたパン生地です。
どちらのタイプも美味しいのですが、遥々イタリアまで来たからには、是非とも本場ナポリ風を満喫して下さい。アメリカ風ともローマ風とも違う、イタリアでしか食べられないピッツァだと思います。
王妃に捧げられた味:マルゲリータ (Margherita)

イタリアでピッツァと言ったらマルガリータ。具沢山のピザは邪道と思うイタリア人が殆どです。イタリアの王妃マルゲリータがバジリコの緑、モッツァレラチーズの白、トマトの赤がまるでイタリア国旗を表しているようだとしたのが名前の由来。ナポリで生まれたピッツァなので、絶対にナポリ風のカリふわパン生地のピザで食べて下さい。
【フードキュレーターの追記メモ】
ナポリのピッツァ職人(ピッツァイオーロ)の技は、2017年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。本物のマルゲリータを提供する店は、EUが定める「STG(伝統的特産品保証)」のロゴを掲げています。ナポリには「Da Michele」のように、メニューがマルゲリータとマリナーラの2種類しかない伝説的な店も存在します。
漁師のシンプルイズベスト:マリナーラ (Marinara)

イタリア料理はシンプルなほど美味しいです。漁師風を意味するマリナーラのピザはトッピングなし、チーズすらなし、トマトソースの美味しさだけで勝負です。イタリア料理の基本はトマトソース。本当に美味しいトマトソースは、それさえあれば他に何もいりません。材料はトマト、ニンニク、オリーブオイル、バジル。これだけ、そしてこれ以外はいらない。
【フードキュレーターの追記メモ】
実はマルゲリータよりも歴史が古いのがマリナーラです。1734年にはすでに存在していました。名前は「漁師風」ですが魚介は入っていません。「漁師が航海から戻った後に簡単に作れる、保存のきく材料(トマト、ニンニク、油)だけで作った」ことに由来します。生地の味がダイレクトに伝わるため、職人の腕が最も試される一枚です。
小麦文化の多様性:パン・粉もの(Farina & Pane)
包まれた美味しさ:カルツォーネ (Calzone)
ピッツァを折りたたんで三日月型にして焼いたのがカルツォーネです。基本の具はトマトソースとモッツァレラチーズ。具材が生地に閉じ込められているので歩きながらでも食べられます。持ち歩き出来る小さめのカルツォーネが良く売られています。
レストランでもメニューにありますが、基本的にはテイクアウト系のお店の定番料理。冷めたらオーブンで再び軽く焼けばいいので、持ち帰って家で食べる人の方が多いです。手軽ではありますが、ピッツァの方が美味しいかな。
【フードキュレーターの追記メモ】
カルツォーネとはイタリア語で「ズボン(ストッキング)」を意味します。中身がこぼれないように包み込んだ形状から名付けられました。プーリア州では玉ねぎ、オリーブ、アンチョビを詰めた独特のカルツォーネが郷土料理として愛されています。
揚げピッツァの誘惑:パンツェロッティ (Panzerotti)
カルツォーネを焼くのでなく揚げたバージョンをパンツェロッティと呼びます。小腹が空いたときに気軽に食べる小さめのサイズが主流。高温の油で揚げるのでサクサクになります。これはこれでいいとは思うけど・・・だからピッツァを食べて下さい!
【フードキュレーターの追記メモ】
ミラノのドゥオーモ近くにある「Luini」というお店は、このパンツェロッティで伝説的な人気を誇り、常に長蛇の列ができています。元々はプーリア州の料理ですが、今やミラノのストリートフードの代名詞となっています。
古代からの主食:フォカッチャ (Focaccia)
強力粉、オリーブオイル、水、塩、イーストで作るイタリアの平たいパン。そのまま、またはハムやチーズを挟んでサンドウィッチにして食べます。古代ローマ時代から作られていたパンで、ピッツァの原型だとされています。
フォッカチオはパンとは異なり捏ねる作業がないので簡単に作れます。コロナ禍では自宅に閉じ込められた人達の多くがフォッカッチャを作っていたのだそう。ピザ作りも一時期流行ったのですが、石窯で焼く美味しさには勝てず、ロックダウンが終わると同時にイタリア人はピッツァ屋に駆け込んだとの事です。
【フードキュレーターの追記メモ】
最も有名なのは「ジェノバ風フォカッチャ」ですが、リグーリア州レッコ村の「Focaccia di Recco」も必食です。これはイーストを使わない極薄の生地の間に、クリーミーなストラッキーノチーズを挟んで焼いたもので、2015年にIGP(地理的表示保護)認定を受けています。パンというより、もはや極上のチーズ料理です。
黄金色の薄焼き:ファリナータ (Farinata)
ヒヨコ豆の粉で作る極薄のフォッカチオで、屋台とかで良く売ってます。13世紀には存在していた料理で、ヒヨコ豆の粉、水、オリーブオイルを混ぜてオーブンで焼くだけのシンプルな食べ物。カリッカリの焼きたてをビールと一緒に食べるのが最高です。
【フードキュレーターの追記メモ】
トスカーナ地方では「チェチーナ(Cecina)」と呼ばれ、フランスのニースでは「ソッカ(Socca)」と呼ばれます。1284年のメロリアの海戦で、ジェノバの船が嵐に遭い、積んでいたヒヨコ豆の粉とオリーブオイルが海水と混ざって固まったのを食べたのが起源という、ドラマチックな伝説を持つ歴史的スナックです。
無限のバリエーション:パニーノ (Panino)

イタリア風サンドウィッチ。イタリア人はパンで具材を挟んだものを、パンの種類や具材にこだわらず全てパニーノと呼んでいます。モッツァレラチーズが主役で、基本どのパニーノにも入ってます。普通に美味しいですが、イタリア滞在期間が短いならただひたすらピッツァを食べましょう。
【フードキュレーターの追記メモ】
フィレンツェに行ったら、絶対に「ランプレドット(Lampredotto)」のパニーノを食べてください。牛の第4胃袋を煮込んだものを挟んだ、フィレンツェ限定の屋台メシです。サルサ・ヴェルデ(緑のソース)をたっぷりかけて食べるのが地元流。これだけはピッツァにも勝る、唯一無二のストリートフードです。
食前の楽しみ:ブルスケッタ (Bruschetta)

イタリアでは本格的な食事の前におつまみを食べながら食前酒を楽しむ習慣があります。その時の典型的なおつまみ料理がブルスケッタ。トーストしたパンにニンニクをこすりつけた後オリーブオイルをかけて、チーズ、ハム、トマトなどをトッピングしたもの。
【フードキュレーターの追記メモ】
毎年11月頃、搾りたてのオリーブオイル「Olio Nuovo(オリオ・ヌーヴォ)」が出回る時期のブルスケッタは格別です。トスカーナでは「フェットゥンタ(Fettunta)」と呼ばれ、ニンニクと新しいオイル、塩だけで食べるのが最高の贅沢とされています。
北イタリアの誇り:リゾット・米料理(Riso)
アルデンテの美学:リゾット (Risotto)

リゾットは米を研がずにバターで炒めてから、ブイヨンと具で煮た料理。イタリア人はパスタを作らせたら世界一ですが、米料理に関してはスペイン人の方が上手かも。カリカリ、オジヤ風、ちょっと芯あり、スペインの米料理には色々なバリエーションがありますが、イタリアは常に同じな仕上がり。
何故ならイタリアでは米はパスタと同じ扱いだからです。常に徹底的にアルデンテ。味付けも基本的にパルメザンチーズと何かのコンビ。でも、まぁ、さすがイタリア人、リゾットも美味しいです。
【フードキュレーターの追記メモ】
イタリアのリゾットには「カルナローリ(Carnaroli)」や「アルボリオ(Arborio)」という専用の品種が使われます。これらは日本米よりも大粒でデンプン質が多く、煮込んでも芯が残る独特の食感を生み出します。2026年現在、グルテンフリー需要の高まりとともに、リゾットの地位は世界的に再評価されています。
シンプル故の奥深さ:パルメザンチーズのリゾット

リゾット界のキング的存在がパルメザンチーズのリゾット(Risotto alla parmigiana)。とてもシンプルな料理なのですが奥が深いです。だし汁に野菜を沢山使います。質の良いパルミジャーノ・レッジャーノチーズを使わないと味がぼやけるので注意。美味しいのは究極に美味しいけれど、悪質な観光客用レストランなどで食べるとトラウマレベルに酷い味です。
【フードキュレーターの追記メモ】
24ヶ月以上熟成されたパルミジャーノを使うと、アミノ酸の結晶がジャリッとした食感と強烈な旨味を与えます。モデナの有名シェフ、マッシモ・ボットゥーラ氏は、震災で被害を受けたチーズを救うために「Cacio e Pepe」のリゾット版を世界に発信し、この料理を現代アートの域にまで高めました。
黄金の輝き:リゾット・アッラ・ミラネーゼ

ミラノ風リゾットがリゾット・アッラ・ミラネーゼ (Risotto alla milanese) 、もちろんサイゼリヤのとは全く別物です。一番の特徴はサフランを使う事。黄金色の色付けだけでなく、サフランには沢山の効能があります。
シンプルなリゾットは、だし汁の味が決め手。昔ながらの本格的なミラノ風リゾットは、骨髄を使って出汁を作ります。最近は骨髄を使わない店が増えてるので、美味しいミラノ風リゾットに巡り合える可能性が少ないと、イタリア人すら嘆いていました。
【フードキュレーターの追記メモ】
1574年、ミラノのドゥオーモ(大聖堂)のステンドグラスを作っていた職人の弟子が、ガラスの着色料として使っていたサフランを結婚式のリゾットに悪戯で入れたのが始まりという伝説があります。ミラノでは、オッソブーコ(すね肉の煮込み)の付け合わせとして提供されるのが正式なスタイルです。
シチリアの宝石:アランチーニ (Arancini)

イタリア風ライスコロッケ。シシリアで一番有名な料理です。チーズやひき肉を具にした丸いオニギリを油で揚げたもの。レストランで出されるアランチーニはトマトソースがたっぷりかけられている事が多いです。
テイクアウト系のアランチーニは歩きながらでも食べられるように、既に具材がトマトソ―スであえてあります。オーブンで焼くバージョンもあって美味しい。中にチョコレートが入った甘い版もあって楽しいです。
【フードキュレーターの追記メモ】
シチリア島では、西部のパレルモでは「アランチーナ(Arancina:丸型・女性名詞)」、東部のカターニアでは「アランチーノ(Arancino:円錐型・男性名詞)」と呼ばれ、どちらが正しいか現地で終わりのない論争が続いています。円錐型はエトナ山の形を模しているとも言われています。
北国のソウルフード:ポレンタ (Polenta)

トウモロコシの粉で作る粥とされていますが、粥ほどゆるくなく、ういろうみたいな固さです。ただ地方によって固さは異なります。北イタリアはウイロウ系、肉や魚の付け合わせとして食べたり、上に色々な物をのせてオードブルとして食べます。でも凄く美味しい、って訳ではないのでわざわざイタリアまでやって来て食べなくてもいいかも。
【フードキュレーターの追記メモ】
普通のポレンタは食べなくてもいい気がしますが、「ポレンタ・タラーニャ(Polenta Taragna)」は別です。是非試してください。そば粉を混ぜた黒っぽいポレンタに、バターとチーズを大量に溶かし込んだ、北イタリアの山岳地帯のご馳走。これは「ただの粥」とは別格の濃厚な旨味があります。
世界を魅了する:イタリアのチーズ(Formaggi)

イタリアの美味しさはチーズによるものが大きいです。フランスの方が種類は多いのですが、イタリアのチーズの方がひとつひとつの個性が強い。ソフトタイプからハードタイプ、甘口から辛口、バラエティに富んだ様々な種類のチーズがあります。料理からデザートまで、イタリアの味の決め手となっています。


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