アニメに登場する実在の風景は、ファンにとって単なる景色以上の意味を持ちます。物語の感動が息づく場所で、二次元の世界と現実をつなぐ「架け橋」のような存在。かつて画面越しに見たあのシーンを、その目、その肌で体験する旅へでかけてみませんか?
- 『鬼滅の刃』藤の花の結界:あしかがフラワーパーク(栃木県)
- 『スラムダンク』伝説の踏切と湘南の風(神奈川県・鎌倉)
- 『君の名は。』運命が交差する「須賀神社の階段」(東京・四谷)
- 『となりのトトロ』の原風景、狭山丘陵に広がるトトロの森(東京都・埼玉県)
- 『シティーハンター』のハードボイルドな世界、新宿の街角(東京都)
- 『千と千尋の神隠し』八百万の神が集う、道後温泉本館(愛媛県)
- 『秒速5センチメートル』切ない距離感とロケットの島、種子島(鹿児島県)
- 『ゴールデンカムイ』激動の歴史を辿る、北海道・五稜郭(北海道)
- 『夜は短し歩けよ乙女』幻想的な京都の夜を歩く(京都府)
- 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』秩父の絆と芝桜(埼玉県)
- 『頭文字D』伝説の峠、日光・いろは坂(栃木県) 公道最速を目指す男たちの熱き戦い。
- 『ルックバック』秋田・にかほ市の原風景(秋田県) 藤本タツキ先生の劇場アニメ化作品。
- 『もののけ姫』太古の森が息づく、屋久島・白谷雲水峡(鹿児島県)
- 『エヴァンゲリオン』の舞台、第3新東京市を巡る箱根の旅(神奈川県)
- 聖地巡礼という、新しい旅の形
『鬼滅の刃』藤の花の結界:あしかがフラワーパーク(栃木県)

Σ64, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons
圧倒的な映像美と心に響くエピソードで、世代や国境を越えて愛されている鬼滅の刃。「最終選別」の舞台となる藤襲山の幻想的な藤の花のモデルとされるのが、栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」です。
樹齢160年を超える大藤の生命力
世界一美しいとされる大藤の棚は、4月中旬から5月にかけて見頃を迎えます。満開時にはまさに鬼滅の刃の「藤の結界」の中にいるかのような体験ができます。夜間のライトアップは、鬼すら近寄れないほどの神々しさ。
藤色ソフトクリームと足利名物「蕎麦」
園内限定の「藤ソフト」は見た目も美しく、散策の供にぴったり。また、足利市街には歴史ある蕎麦の名店も多いです。
『スラムダンク』伝説の踏切と湘南の風(神奈川県・鎌倉)

Quercus acuta, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
1990年代のバスケットボールブームの火付け役で、2020年代に公開された劇場版『THE FIRST SLAM DUNK』で再び注目を浴びたスラムダンク。オープニングに登場する江ノ島電鉄「鎌倉高校前駅」近くの踏切は、スラムダンク以外にも様々なアニメに使用されたため、今や世界中からファンが訪れる聖地となっています。
鎌倉名物「しらす丼」と「江ノ電最中」
ランチには、腰越漁港で揚がったばかりの「生しらす丼」を。お土産には、江ノ電の車両を模した箱に入った「江ノ電最中」が定番です。懐かしさと新しさが入り混じる湘南の味を楽しめます。
『君の名は。』運命が交差する「須賀神社の階段」(東京・四谷)

Hisagi, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
新海誠監督の『君の名は。』のラストシーンで、大人になった瀧と三葉が再会するあの階段。世界中からファンが訪れる、もはや伝説的な場所となっています。
新海誠監督の作品で日本の風景の美しさを再発見した人が多く、新海ワールドの聖地巡礼は今やアニメ好きだけのイベントではなくなりました。新海監督作品の聖地巡礼は別記事で詳しくまとめました。

『となりのトトロ』の原風景、狭山丘陵に広がるトトロの森(東京都・埼玉県)
昭和30年代前半の日本を舞台にしたファンタジーの傑作『となりのトトロ』。サツキとメイがトトロと出会う森のモデルとなったのが、東京都と埼玉県の県境に広がる「狭山丘陵」です。
ジブリ映画も聖地巡礼の人気が高いので、別記事で詳しくまとめてあります。

「クロスケの家」で昭和の暮らしにタイムスリップ

京浜にけ, Copyrighted free use, via Wikimedia Commons
所沢市にある「クロスケの家」は、築100年を超える古民家で、トトロの世界観を体感できる拠点となっています。ここでは当時の生活様式を学ぶことができ、大人にとっては懐かしく、子供にとっては新鮮な学びの場となっています。
狭山茶の香りに癒やされるひととき
この地域は日本三大茶の一つ「狭山茶」の産地。散策の合間に、地元の深蒸し茶と和菓子で一息つくのは、まさに大人の休日。お土産として、手摘みの高級茶葉が選ばれています。
『シティーハンター』のハードボイルドな世界、新宿の街角(東京都)

Basile Morin, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
1987年のアニメ化以来、世代を超えて愛され続ける『シティーハンター』。2024年の実写映画のヒットを受け、再び「新宿」が聖地として注目を集めています。
裏社会の掃除屋(スイーパー)冴羽獠が拠点とするのは、混沌と情熱が入り混じる新宿の街。かつて新宿駅東口にあった「伝言板」は、現在はデジタルサイネージとなっていますが、アプリを使用することで「XYZ」と書き込めるAR演出も話題を呼んでいます。
ゴールデン街で味わう「獠」のお気に入り
深夜の新宿をイメージした「ハードボイルド・カクテル」を出すバーがゴールデン街に点在しています。作品の雰囲気そのままに、ネオンの下で一杯嗜むのは至福のひとときです。
『千と千尋の神隠し』八百万の神が集う、道後温泉本館(愛媛県)

z tanuki, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons
宮崎駿監督の最高傑作の一つ『千と千尋の神隠し』に登場する「油屋」のモデルの一つとされるのが、愛媛県松山市の「道後温泉本館」です。重要文化財でありながら現役の公衆浴場として、アニメそのままの重厚な建築美を体験できます。
『千と千尋の神隠し』の聖地巡礼は別記事に詳しくまとめました。

坊っちゃん団子と「湯上がり」の一杯
松山名物「坊っちゃん団子」や、愛媛名産の「みかんジュース」の飲み比べが楽しめます。特に道後温泉本館の休憩室で頂くお茶と茶菓子は、作品の贅沢な雰囲気を彷彿とさせます。
『秒速5センチメートル』切ない距離感とロケットの島、種子島(鹿児島県)

ウニウニ, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
新海誠監督の出世作『秒速5センチメートル』の第2話「コスモナウト」の舞台となった鹿児島県・種子島は、ファンにとって生涯に一度は訪れたい場所のひとつ。
主人公とヒロインが、種子島宇宙センターから打ち上がるロケットを見上げるシーンは、アニメーション史に残る名場面です。現在、日本の新型主力ロケット「H3」の打ち上げが日常的に行われるようになり、アニメの情景と現代の宇宙開発が重なる特別な場所となっています。
安納芋の原産地で味わう甘味
種子島といえば「安納芋」。その濃厚な甘さは、旅の疲れを癒やしてくれます。宇宙センター近くのカフェでは、宇宙食と地元食材を組み合わせた「コスモナウト・ランチ」も登場しています。
『ゴールデンカムイ』激動の歴史を辿る、北海道・五稜郭(北海道)

五稜郭, CC0, via Wikimedia Commons
埋蔵金を巡り、北海道の大自然を舞台に繰り広げられるサバイバル・ミステリー『ゴールデンカムイ』。完結後もその人気は衰えず、実写映画シリーズの完結編に合わせて、聖地・北海道への観光客が急増しています。
五稜郭タワーから望む歴史散策
物語のクライマックスに登場する函館の「五稜郭」。タワーからは、土方歳三が最期に駆け抜けた星形の城郭を一望できます。その他にも、小樽の歴史的建造物群や、登別の地獄谷など、北海道各地に作品の息吹が残っています。
函館塩ラーメンとアイヌ文化の学び
2020年に白老町にオープンした「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、作中のアイヌ文化をより深く理解するための必須スポットとなっています。アシリパたちが食べていた料理の現代版アレンジを味わうこともでき、知識と五感で作品を楽しめます。
また、函館名物の「塩ラーメン」はもちろん、「ウポポイ(民族共生象徴空間)」との連携により、アイヌの伝統料理「チタタプ」を現代的にアレンジしたメニューを市内の提携レストランで楽しめます。
『夜は短し歩けよ乙女』幻想的な京都の夜を歩く(京都府)

sayo ts, CC0, via Wikimedia Commons
森見登美彦のベストセラー小説を湯浅政明監督がアニメ化した『夜は短し歩けよ乙女』。京都大学に通う「先輩」と「黒髪の乙女」が繰り広げる、不思議で可笑しな恋物語の舞台は、実在の京都の名所ばかりです。

糺の森の古本市
鴨川デルタや下鴨神社の「糺の森」は、作品そのままのノスタルジーが漂います。2026年も8月に開催予定の「下鴨納涼古本まつり」は、乙女が古本市の神様と出会ったあのシーンの舞台。
「電気ブラン」と「ラ・フルール」のカクテル
劇中に登場するお酒「電気ブラン」は、実は浅草の名店「神谷バー」に実在するもの。京都の物語でありながら、明治期のモダンな香りを加える森見ワールドの巧みな演出です。京都では、先斗町のバーで、作中の雰囲気を味わえるオリジナルカクテルを出す店もあります。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』秩父の絆と芝桜(埼玉県)

京浜にけ, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
「あの花」の愛称で親しまれ、聖地巡礼ブームを定着させたのが『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。幼なじみの事故死から疎遠になった子供たちが、高校生になって再会を果たす名作です。埼玉県秩父市が舞台となっており、物語の中心となる「旧秩父橋」や、街全体がアニメの世界観を大切にしています。
2026年現在、秩父はアニメによる地域振興のモデルケースとしてさらに進化しており、巡礼者向けのシェアサイクルや、スマホでキャラクターと記念撮影できるARスポットが整備されています。特に羊山公園の芝桜は、主人公・じんたんの回想シーンに登場する花畑のモデルとされ、春には一面のピンク色の絨毯が広がります。
また、秩父札所17番・定林寺は、物語の中で子供たちが集まる重要な場所。現在もアニメコラボの絵馬を奉納することができ、世界中のファンからのメッセージが絶えません。
「わらじかつ丼」と「そば」の贅沢
秩父名物の「わらじかつ丼」は、巡礼のパワーの源。また、お土産にはアニメキャラクターが描かれた「秩父の銘酒」が人気です。
『頭文字D』伝説の峠、日光・いろは坂(栃木県) 公道最速を目指す男たちの熱き戦い。

Comyu, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
峠道を爆走する若者たちの熱き戦いを描いた『頭文字D』。数々の峠が登場しますが、中でも強烈なインパクトを残すのが日光の「いろは坂」です。日光市街と中禅寺湖を結ぶこの坂は、48もの急カーブが存在する難所。作中では小柏カイと拓海が「地元走り(インベタのさらにイン)」を繰り広げた場所として描かれました。
いろは坂では安全対策のための新型センサーが路面に設置されており、無謀な運転は厳しくチェックされます。もちろん作中の「地元走り」は厳禁ですが、紅葉や新緑の美しさは天下一品。車好きが訪れるドライブの聖地として不動の人気を誇っています。
日光湯波(ゆば)と温泉
ドライブの後は、日光名物の「ゆば料理」を。特に中禅寺湖周辺のホテルで頂くゆばの会席料理は、旅を格上げしてくれます。
『ルックバック』秋田・にかほ市の原風景(秋田県) 藤本タツキ先生の劇場アニメ化作品。
大ヒット漫画『チェンソーマン』の作者、藤本タツキ先生が放った衝撃の読切作品を劇場アニメ化した『ルックバック』。藤本先生の出身地である秋田県にかほ市がモデルとなっています。
スクリーンに映し出される、美しい田園風景と背後にそびえる雄大な「鳥海山(出羽富士)」。にかほ市は作品のヒットを受けて、作中に登場したバス停や風景を巡るためのガイドマップを作成しており、静かな感動を求めるファンが訪れています。
天然岩ガキと「鳥海山」の恵み
夏(6月〜8月)に訪れるなら「天然岩ガキ」は外せません。鳥海山の伏流水が育んだクリーミーな味は絶品です。
『もののけ姫』太古の森が息づく、屋久島・白谷雲水峡(鹿児島県)

murakami_tak, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
人間と自然の対立と共生を描いたジブリの名作。その舞台モデルとなったのが、世界遺産・屋久島の「白谷雲水峡」です。
神秘の苔むす森
「苔むす森(通称:もののけの森)」は、600種類以上の苔が織りなす緑の世界で、運が良ければ劇中のヤックルのような野生のシカ(ヤクシカ)に出会えることもあります。
屋久杉の工芸品と「首折れ鯖」
お土産には、独特の香りが癒やしを与える「屋久杉」の工芸品を。グルメは、現地でしか味わえない鮮度抜群の「首折れ鯖」が、旺盛な旅人の胃袋を満たしてくれます。
『エヴァンゲリオン』の舞台、第3新東京市を巡る箱根の旅(神奈川県)
大災害「セカンドインパクト」後の地球を舞台に、人型兵器エヴァンゲリオンのパイロットとなった少年少女たちの葛藤と成長を描いた金字塔的シリーズ。物語の主要舞台となる「第3新東京市」は、神奈川県箱根町に位置しています。
ネルフ本部直上、仙石原で体験する最新AR
現在も、箱根湯本駅にある公式ショップ「えゔぁ屋」は多くのファンで賑わっています。特に金時山や仙石原周辺から望む景色は、まさに使徒を迎え撃つ要塞都市の緊張感を今に伝えています。
一部の展望エリアで、スマホをかざすとAR(拡張現実)でヤシマ作戦当時の風景が再現されるサービスも本格展開されており、現実の風景に巨大な使徒が重なる様子は圧巻です。
箱根寄木細工とエヴァの融合
お土産には、箱根の伝統工芸「寄木細工」とコラボレーションしたネルフマーク入りの工芸品がおすすめです。職人の緻密な技術と、作品のメカニカルな世界観が融合した逸品は、こだわり派のファンに高い支持を得ています。
聖地巡礼という、新しい旅の形
アニメの聖地はもはや「ただのロケ地」ではなく、地域の歴史、文化、グルメと融合した総合的な観光資源となっています。作品への愛を持ってその土地を訪れることで、普通に旅行するだけでは気づかない日本の魅力が見えてくるはず。マナーを守り、地元の人々への敬意を忘れずに、あなたにとっての「特別な場所」を探す旅に出かけてみませんか?
著者プロフィール
ヨーロッパ在住の旅と食のプロガイド
主にスペインに拠点を置いて30年。プロの観光ガイドとして、これまで数多くの日本人旅行者の皆様を世界各地でご案内してきました。また、日本国内ではスペイン語圏からの観光客をお迎えするガイドとしても活動。
ガイド業の傍ら、その土地ならではの「食」と「旅」の魅力を伝えるライターとして、雑誌や専門メディアにて、現地発のリアルな情報を多数掲載しています。「ガイドの視点」と「食へのこだわり」で、皆様の旅がより豊かなものになるよう、最新の情報をお伝えします。


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