世界食べ尽くしの旅 

世界のグルメ、観光名所、世界遺産、色々な世界の情報を詰め込んだブログ

アルゼンチン人と牛肉の関係、アルゼンチンのアサ―ド

      2022/02/04

アルゼンチン人の年間牛肉消費量

「アルゼンチン人の主食は牛肉です。」アルゼンチンを旅していると、よく耳にするフレーズです。最初の方はジョークなのかと思って薄く笑っていました。でも何週間か滞在するうちに「事実に限りなく近い若干の誇張」なのだと理解出来るようになりました。それ程アルゼンチンの人達は、驚くほど大量の牛肉を食べています。

昔から世界で一番牛肉を食べる国はアルゼンチン。一人当たりの年間食肉消費量は110キロで、その内訳は牛肉60キロ、鶏肉40キロ、豚肉10キロです。この数値の特異さは、世界有数の魚消費国である日本と比べる事でより顕著となります。

日本人の年間食肉消費量は29キロ。その内訳が牛肉6キロ、豚肉12キロ、鶏肉11キロ。こうして数値を比較すれば、アルゼンチンがかなり偏った肉食の国で、中でも牛肉を好んで食べているのが分かるかと思います。それでは何故アルゼンチンの人達は、こんなにも牛肉を食べるようになったのでしょうか。

アルゼンチン人が牛肉を食べる理由

アルゼンチンは豊かな土地と荒れ地との差が大きく、交通がとても不便な国でした。今でこそ技術の進歩で、より広い範囲の土地で農作物を栽培出来るようになり、それを国中に分配する交通網も整えられました。でもかつてのアルゼンチンでは、穀物や野菜、果物などとは全く縁遠い生活をしている人達が多かったのです。

どんなに痩せた土地でも草ぐらいは生えたので放牧が広まり、肉はアルゼンチンの人達の胃袋を満たす主要な食べ物となりました。こうして伝統的に肉を中心に食べる文化が出来上がったのです。

アルゼンチン経済と牛肉の関係

アルゼンチン人にとって肉とは牛肉を意味します。ただ近年は経済の低迷が続き、価格の安い鶏肉の消費量がどんどん増えています。2007年の鶏肉消費量は28キロ。ここ10数年で12キロも増えているのに、豚肉の消費量は今も昔も全く変化がありません。

牛肉と豚肉の価格差が鶏肉ほどは大きくないので、同じような値段なら無理してでも牛肉を食べたい、そう考えるアルゼンチン人が多いのです。牛肉でないと肉を食べた気分にならない、それが典型的なアルゼンチン人気質です。

アルゼンチン人は魚を食べない

伝統的に農作物を食べないアルゼンチン人。そして何故だか魚介類も食べません。アルゼンチンに限らず、南米の人達は総じて魚を食べない人種です。その中でも飛びぬけて魚介類を食べないのがアルゼンチン人。

お隣の国、チリの人達が魚介類を好む傾向にあるのに、同じような環境で同じような歴史と文化を持つアルゼンチンの人達は、全く魚介類に興味を示しません。何とも不思議な現象なので、事あるごとにその理由を尋ねるのですが、誰も理由が分からない。ただ単に、当たり前のように魚介類を食べないんです。

アルゼンチンでは、スーパーの魚コーナーはとても小さく、基本的にサーモンとフライ用の白身魚しか売っていません。魚コーナーで一番幅をきかせているのがカニカマ。名前もずばりそのまま「KANIKAMA」で、魚コーナーのメイン商品として陳列されています。

需要が無いから高いのか、高いから需要が無いのか。アルゼンチンでは魚介類にかなり高額の価格がつけられます。ノルウェー産のサーモンの切り身なら、神戸牛レベルの高級食材。1キロ当たり1700円以上はするので、牛肉の最高部位より断然高い値段です。

それでは魚介類の価格が下がりさえすれば、アルゼンチン人は魚を食べるようになるのでしょうか。答えは否。魚介類が安くて豊富なスペインには、多くのアルゼンチン人が移住しています。彼らの食の中心は、何処に住んでいようが絶対に牛肉。これはアルゼンチン人のDNAに刻まれた、体が牛肉以外を求めない特異体質なのかもしれません。

アルゼンチンを代表する料理

そんな遺伝子レベルで牛肉好きなアルゼンチンの人達は、どのような牛肉料理を食べているのでしょうか。アルゼンチン人にとって牛肉料理と言えば、アサ―ドと呼ばれるアルゼンチン風炭火焼きしかありません。

アルゼンチンの伝統的な牛肉の食べ方で、巨大な肉の塊を炭火でじっくり焼いて、大人数で切り分けて食べます。肉が焼き上がるまでかなり時間がかかり、また時間をかけて食べる料理でもあるので週末に食べる事が多いです。誕生日や記念日などの特別な日は、絶対にこのアサ―ドを食べます。

アサ―ドは炎の出ていない赤くなった炭火でじっくり燻すように焼くのが特徴です。肉の部位や大きさにもよりますが、最低でも一時間はかけて焼きます。人気の部位はヒレ、サーロイン、ランプ。

牛肉のみが基本ですが、豚肉で作るソーセージや血で作るソーセージ、モルシージャなどは一緒に食べる事が多いです。アルゼンチンでは鶏肉や野菜を炭火で焼く事は滅多にありません。魚介類の炭火焼きなんて、見た事も話しに聞く事もありません。

美味しいレストランの見つけ方

アルゼンチン風炭火焼き、アサ―ドを食べるなら、専門のレストランへ行くのが一番手っ取り早いです。誰だって行きつけのお店を幾つか持つので、街の人に聞けばお勧めのレストランを教えてくれるかと思います。

一見さんなら出来るだけ大き目のレストランへ行きましょう。それ程贔屓なく接してくれるはずです。人気のあるレストランの週末のランチ時とくれば、どんなに箱が大きくても満席になります。事前の予約を忘れないようにしましょう。

アサ―ドの味

アルゼンチン風炭火焼き、アサ―ド。ただのバーベキューと侮ってはいけません。この方法以外で牛肉を食べる意味が見つけられないぐらい美味しいです。味付けは基本的に岩塩のみ。それだけで美味しくて、それだけが美味しい。素材の旨みをしっかり味わう料理です。

アルゼンチン牛を一言で表現するなら「極上の赤身」。噛み応えはあるのに柔らかでジューシー、とても奥深い味がする成長ホルモン剤などを一切使用していない安全な牛肉です。

素材の味がしっかり美味しいからこそ、岩塩のみの味付けが相応しい。シンプルだからこそ際立つ、最上級の赤身の肉の味です。霜降り肉に慣れた日本の皆様の舌には、とても新鮮に感じられるのではないでしょうか。

肉を切り分ける時に溢れ出る肉汁がまた最高に素晴らしいです。初めて食べた時は赤ワインのソースがかかっているのかと思いました。血が入り混じったほんのり甘い肉汁に、焼いたポテトを絡めて食べるのが最高です。ちなみにアサ―ドを食べる時、このポテトが唯一の野菜となります。

アルゼンチン人と牛肉の関係

忙しい平日は仕方なくフライパンや鍋で調理された牛肉を食べますが、時間とお金の都合さえ付けば必ず炭火焼きを食べるのがアルゼンチン人。飽きる事なく毎日牛肉を食べ続ける事が出来るのは、遺伝子レベルで体が牛肉を欲しているから。もうそれ以外の理由が思い付かない、不可思議な程に牛肉好きな国民です。

アルゼンチンの名物

アルゼンチンと言えば牛肉、そしてもう一つ有名なものがあります。タンゴです。アルゼンチンの美味しい牛肉を食べられる場所は、レストランだけに限りません。タンゴを見ながら味わう事も出来ます。アルゼンチンのもう一つの名物、タンゴに関してはこちらに詳しくまとめました。

 - まとめ記事, アルゼンチン, 世界のグルメ, 中南米