世界食べ尽くしの旅 

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ワイン発祥の地キプロス島の世界最古のワイン、コマンダリア

      2021/04/22

トルコ南方の地中海に浮かぶ小さな島キプロスは、ワイン発祥の地とされています。世界3大ワインの一つ、コマンダリアの生まれ故郷でもあるので、ワイン好きなら絶対訪れたい土地。ヨーロッパ在住20年のフードライターが世界中を食べ尽くすの記録。今回はワインの聖地キプロス島について。

ワイン発祥の地オモドス村

今回訪れたのはキプロス南部にある世界で最も古いワイン園で有名なオモドスの村。海抜800メートルぐらいの山の上にあり、空気が凛と澄んだ気持ちの良い村です。ヨーロッパ的な白い家が立ち並び、村の周辺にはブドウ畑が広がります。

オモドスの村周辺一帯がワイン発祥の地だと言われ、その歴史はなんと紀元前2000年前以上に遡るのだそう。大古からワインが造られてきた土地で、昔から地の利を生かして国外へのワイン貿易も盛んでした。

世界最古のワイン、コマンダリア

赤、白、ロゼ。どのワインもエレガントな美味しさなのですが、オモドス村、そしてキプロスの名を世界的に有名にしているのはコマンダリアと呼ばれる甘口のデザートワインです。

「コマンダリア」の名を語れるのはオモドス村を中心としたトロードス山麓にある14の村で製造された甘口ワインだけ。更にはキプロス島固有のブドウであるジニステリ種、マブロ種のみを使用したワインでなければいけません。

コマンダリアには他にも厳格なルールがあり、摘み取ったブドウは藁の上に並べ、天日で干して糖度を出す事。自然発酵で醸造する事。発酵が終了したら最低4年間はオークの樽で熟成させる事が必要です。

この厳しい条件を全てを揃えない限り「コマンダリア」を名乗れません。とても基準が厳しいからこそ、上質でムラの無い安定したワインを常に醸造する事ができるのも大きな魅力の一つです。

コマンダリアの抗えない魅力

コマンダリアワインの特徴は蜜のような甘さです。糖度が高いためアルコール度数も15度以上あります。暑くて乾燥した気候が生み出す芸術品、コマンダリアの作り方は、紀元前8世紀頃の古文献に既に登場していました。

12世紀の十字軍の時代には正式にコマンダリアの名が付き、その地位を確かなものとしました。コマンダリアのようなブドウを干して作るタイプの甘いデザートワインは、キプロスだけでなくイタリア、フランス、スペインなどにも存在します。

でもコマンダリア程長い歴史を持ち、色々なエピソードに彩られたワインは他に存在しません。ローマの軍人アントニウスは「まるでキプロスの葡萄酒のように甘く優雅なそなたよ」とクレオパトラに告白し、コマンダリアのみならず、キプロス島そのものをプレゼントした事で有名です。

12世紀、十字軍の英国王リチャード1世は、キプロス島で結婚披露宴を行い、その時に献上されたコマンダリアを大変気に入り後々まで「王のワイン、ワインの王」と呼び誉め称えました。ドイツの鉄血宰相ビスマルクもコマンダリア・ファンの一人。生涯コマンダリアを購入する契約を業者と交わしていました。

13世紀頃、フランス王フィリップ2世は世界で初めてワインティスティングの大会を開きました。ヨーロッパ各国のワインが一堂に揃い、何日もかけて味わって厳選したワインは3本。イタリア、ベニスのワインとフランスのワイン、そしてコマンダリアでした。オスマントルコがキプロスを侵略した一番大きな理由もコマンダリアが目当てだったと言われています。

キプロス島特有のお菓子

オモドス村にはコマンダリアをはじめ、素晴らしいワインを醸造するワインセラーが何件かあります。どこのワイナリーも試飲して自分の好きなワインを購入できるようになっているのですが、その際に出されたおつまみが変わっていて面白かったです。

ブドウの果汁を煮詰め、コンスターチと蜂蜜を加えて作るモチモチした感触の練り菓子です。中にアーモンドが埋め込んであって、甘さは控え目。何だかとても優しい味でワインにも良く合います。こちらも購入出来るのでワインのお供として是非お土産にして下さい。

ワインの聖地オモドス村

オモドス村はとても風情のある村です。小さいけれど素敵なカフェ、レストラン、お土産屋さんが揃っていて、散策するのがとても楽しい。そしてこの村には収穫したブドウを圧搾する、歴史の古いワインプレス機が一つ残っています。

昔からワイン作りが盛んな村なので、住民達が自由に使えるワインプレス機を役所が何個か設置していたのだそう。自分の土地で収穫したぶどうを持ち込み、自分のワインを作る。それも何だか面白い風習です。

ワインプレス機の取っ手をひねってブドウを圧搾するのですが、その際に種を一緒に潰してしまうと味にアクが出るので気をつけなければなりません。一回目の圧搾で収集した果汁はワインに使い、二回目の果汁は蒸発させてアルコール度を上げ、透明なリキュールを作りました。アルコール度数は50度近くあります。

ヨーロッパの穴場的存在キプロス島

キプロス共和国は日本の皆様には余り知られていませんが、ヨーロッパの人達からはとても人気のある観光地です。今後はもっとメジャーになっていくかと思います。キプロス島に関する色々を詳しくこちらに別記事でまとめました。

 - キプロス共和国, ヨーロッパ