ノルウェーの養殖サーモンが環境や体に及ぼす問題について
2021/06/15
日本のスーパーで販売されているお刺身や回転寿司などでお馴染みのピンク色のサーモン。実は全部養殖です。そしてその殆どがノルウェーから輸入しています。何故ノルウェーは世界一のサーモン養殖国となったのでしょうか。そしてサーモンの養殖の問題点とは何なのでしょうか。
サーモンの殆どは養殖

日本人のマグロ好きは世界的に有名ですが、サーモンだって負けず劣らずの人気です。若者を中心に日本人は年々魚を食べなくなってきているのですが、サーモンだけは別物。昔と比べて3倍近く消費量が伸びています。
サーモンは日本に限らず全世界で消費量が伸びているのに漁獲量は横ばい。人気の高い大西洋産のサーモン「アトランティックサーモン」は、年々漁獲量が減っています。特に1990年代からの減少が激しく、それを補うように急増しているのが養殖サーモン。
現在では世界に出回っているサーモンの7割近くが養殖だと言われています。日本が輸入している養殖サーモンの殆どがノルウェー産。北欧と言えばサーモン。私はそんな認識をしていました。でも実際にサーモンを養殖しているのは北欧の中ではノルウェーだけ。そして世界全体で養殖されているサーモンの50%近くがノルウェー産なんです。
どうしてノルウェーは養殖サーモン業が盛んなのでしょうか。それはノルウェーの寒冷な気候がサーモンの飼育に適した水温を保ち、入り込んだフィヨルドの地形が養殖に大変適しているからです。
ノルウェーの養殖サーモンの問題点

かつてサーモンは高級魚だったのですが、今では養殖のおかげで大衆魚となりました。消費者にとっては嬉しい事なのですが、サーモンの養殖には悪い面があります。まずはサーモンの養殖が引き起こす環境破壊の問題。
養殖サーモンの餌とする為に大量の小魚が乱獲され、天然サーモンや他の魚の餌が少なくなってきています。困ったことに年間大量の養殖サーモンがいけすから大海へ脱走します。脱走した養殖サーモンに縄張りを荒らされ、ただでさえ少なくなっている天然サーモンの餌が更に不足しているのです。
脱走サーモンの問題は深刻で、いくつかの河川では観測される50%以上のサーモンが養殖サーモンだったりします。閉ざされた場所で育つ養殖サーモンには独特の寄生虫がつきます。そんな養殖サーモンが大海へ脱走する事により天然サーモンのみならず他の魚介類にも寄生虫の問題が発生してしまうのです。養殖サーモンが天然サーモンと交尾し、遺伝子が混乱してしまう事も懸念の一つです。

養殖サーモンが人間に及ぼす影響
養殖サーモンは環境だけでなく、それを食べる人間にも影響を及ぼします。寄生虫や他の病気を防ぐ為に養殖サーモンに投与される抗生物質等の科学薬品は、海洋汚染になるだけでなく、養殖サーモンを消費する人間の健康にも影響を及ぼすからです。
更には養殖サーモンで使われている染料の問題もあります。天然サーモンの身は自然の中で食べるオキアミ、小エビやカニの殻にアスタキサンチンが含まれているので身が赤っぽいオレンジ色になります。
養殖サーモンはアスタキサンチンを含んだ餌を食べる事がないので、身の色が灰色っぽい感じになります。それでは消費者の人達が納得しないと分かっている養殖業者が合成色素で養殖サーモンの身を染色する事が多いんです。
私達が見慣れている養殖サーモンの綺麗なピンク色は自然の色ではなく染められた色。そして養殖サーモンは小さな場所に押し込まれ、早く大きくなるように品質改良され、太るように沢山の餌を食べさせられて育ちます。
そんな色々な問題を抱える養殖サーモンに対する反感は強くなってきていて、サーモンはもう魚じゃない、ブロイラーのニワトリ以下だ、なんて批判する人も多くなってきています。
今後の養殖サーモンのあり方

皆が大好きなサーモン。世界の需要の伸びに対応するには養殖サーモンの存在が不可欠なので、今後サーモンの養殖がどのように改善、発展していくのかに注目が集まっています。
そしてそれはノルウェーだけの問題ではなく、日本の問題でもあります。ノルウェーと言えばサーモン、サーモンと言えばノルウェー。そしてノルウェーから一番養殖サーモンを輸入している国が日本だからです。
日本だけに限らず、これからもずっと美味しいサーモンが食べられるように、全世界の人達で養殖サーモンのあり方を考えなくてはならない時代になったのかなと思います。
北欧の食にまつわるその他の問題
ノルウェーと言えばサーモン、そして森のベリーです。ベリーやキノコ狩りは北欧の人達にとって大切なレジャー、そして日常でもあります。その権利を守る北欧らしい法律も存在するのですが、最近それを悪用する人達が多くなり、大きな問題となっています。