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スペインのバルセロナを冬に訪れるなら絶対食べるべきお勧めのスペイン料理カルソッツ

      2017/04/26

スペイン在住歴20年近く。これだけ長い間スペインに住んでいると「これ初めて食べるっっ。」なんてトキメキが日に日に減っていきます。そんな私が随分と長い間「食べてみたい」と思い続けたスペイン料理があります。バルセロナを中心としたカタルーニャ地方の名物料理、カルソッツです。これだけの長い期間、食べる機会に恵まれなかった料理も珍しいのですが、地元であるカタルーニャ地方の人々を除けば、スペイン人だってカルソッツを食べた事がある人は少ないのではないでしょうか。

 

カタルーニャの郷土料理カルソッツは何故食べるのが難しいのか

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カルソッツとは、簡単に言えば長ネギのバーべキューです。しかし、その長ネギが簡単に手に入る代物ではありません。ワインやチーズと同じ扱いの、品質管理や産物保護の為に地域を指定し、厳しい基準を満たすモノにしか与えられない原産地証明書付きの長ネギだからです。

生産量が少ないのでカルソッツで使う長ネギを他県のスーパーで目にする事は稀です。更には収穫の時期が限られていて、今では12月から4月頃まで出回るようになりましたが本来のシーズンは2月から3月のみでした。

更なるハードルは場所。バルセロナを訪れた観光客がガウディを見たついでにカルソッツを食べてみたい、なんて思っても無理です。長ネギは炭火で焼くので、都会の真ん中のレストランで食べるような料理ではないからです。郊外の一軒家レストランで、野外に置かれたテーブルで立ち食いするのが基本です。

そしてカルソッツは思い立った時にフラっとレストランに立ち寄って、一人で気軽に食べるような料理ではありません。2人とか4人でもちょっと寂しい。それこそマイクロバスを貸し切って、家族や友達など大人数でレストランを襲撃し、ワイワイガヤガヤ食べるのがカルソッツだからです。

時と場所と人、こんなにも条件が揃わないと食べられないのがカルソッツ。やっと今回初めてカルソッツを食べる事が出来ました。もう本当に感無量です。

 

カルソッツに使われる長ネギは特別な長ネギ

カルソッツの長ネギは、とても手間隙かけて育てられます。プランターで種を発芽させ、ある程度育ったら畑に植え替えます。球根の頭が土から顔を出すくらい、時期的には夏頃に一度収穫し、涼しい場所で何週間か置いた後、育った上の部分をカットしてから再び畑に植え直します。

「長ネギは教会の鐘を聞いて育つ」という諺が古くからスペインにあります。鐘が聞こえるぐらい軽く、そっと土を被せた状態で植えるのがポイント。

柔らかくて甘くて、白い長ネギを育てるには、成長して背丈が伸びる毎に土をかけて覆います。だいたい収穫までに3~4回の頻度で成長したネギを土で覆っていくのですがその際、あまりにもしっかりネギを覆いすぎるとヒョロヒョロと細長いネギになってしまうので注意が必要です。

8月の終り頃に植え、今ではだいたい11月の中旬位から収穫が始まります。

 

カルソッツの調理の仕方

カルソッツの調理の仕方はとても簡単。長ネギを大きさを揃えて切り、網の上に並べ、昔ながらの方法なら収穫後の葡萄の木、今なら炭でおこした火にくべます。

火はとても強く燃えていなければなりません。2~3回ひっくり返して、長ネギの根元が柔らかくなり、外側全体が黒く炭化されるまで焼きます。

黒く焼けた長ネギを火から取り出し、新聞紙にくるんで暫く置きます。余熱でしっかり中まで火を通して、長ネギを柔らかくトロトロにさせるのです。焼きあがった長ネギは土で作った瓦に盛ります。

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カルソッツは何処でどのように食べるのか

カルソッツは野外で食べます。レストランの場合でもカルソッツだけは外のテーブルで食べ、食べ終わるとレストランへ戻って食事の続きをします。

カルソッツは手で食べるので、軍手やレストランによってはビニールの手袋をくれます。この手袋が無いと手がベタベタ、そして真っ黒になって、石鹸で洗ってもなかなか落ちません。

手だけに留まらず、カルソッツは食べる時にとても汚れるので、老いも若きも赤ちゃんのよだれかけのような前掛けを付けて食べます。

食べ方はとても簡単。まずは瓦に盛ってある長ネギを一本手にします。片手でネギの上の緑の部分を持ち、もう一方の手で外側の焦げた部分を引っ張ります。黒焦げの部分がズルっと剥け、ツルっとトロトロの長ネギが顔を出します。それをロメスコ・ソースにつけ、そのまま手で食べます。


カルソッツの味の決め手はロメスコ・ソース

カルソッツには赤ワインを合わせます。出来ればその土地のテーブルワインで、黒に近いボディのしっかりしたワインが最高です。ワインを飲みながらネギが焼き上がるのを待つのですが、お腹が空いている人はロメスコ・ソースをパンにつけて食べ始めちゃいます。

カルソッツに欠かせないロメスコ・ソース、味に深みがあって、ピリッと辛くて、本当に美味しいのです。各レストラン、各家庭に秘蔵のレシピがあり、引き継がれた伝統の味を次世代に伝えています。隠し味は絶対に秘密だけれども「基本のレシピだけなら」と内緒で教えてくれました。


ロメスコ・ソース4人分の基本レシピ

トーストしたアーモンド 100グラム

トーストしたヘーゼルナッツ 30グラム

焼いたトマト 4~5個

焼いたニンニク 1片

エキストラ・バージン・オリーブオイル 80cl

ワインビネガー 1/2カップ

ドライ パプリカ 1個

西洋パセリ 少々

塩 少々

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カルソッツは命がけで食べる料理、量が多すぎてびっくり

カルソッツはだいたい何処のレストランもメニューは同じです。まずは赤ワインとカルソッツ。長ネギはお皿が空になると追加され、平均して一人20本ぐらい軽く食べるそう。

でも美味しいからといって、ついつい長ネギを食べ過ぎてしまうと残りのメニューがお腹に収めきれなくなるので要注意です。カルソッツはあくまでも前菜だということを忘れてはいけません。

次に続くのが長ネギの時の残り火を利用して焼いた、カタルーニャ地方名物のブティファラと呼ばれるソーセージ、そしてモルシージャと呼ばれる豚の血を固めたソーセージ。ブティファラは肉の味がしっかり残ったジューシーなソーセージで大満足。付け合せは白インゲンを炒めたもの。

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小食な日本人なら、長ネギを食べ終わり、ソーセージに豆まで食べたら既にお腹一杯。でもここからメインの肉料理が始まるんです。先ほどのソーセージは前菜その2に過ぎなかったと言う恐怖。

カルソッツの基本メニューのメイン料理の定番は羊肉のバーベキュー。油がのって本当に美味しいのですが、量が凄すぎます。でも付け合せのジャガイモやアーティチョークまで美味し過ぎたので死ぬ気で食べました。

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 カルソッツを食べる、は週末の一日を全て費やすの意味

デザートはもぎたての水みずしいオレンジ、その後にカスタードクリームの上にキャラメルをかけて焼いた、カタラン風クリーム。この時点で食べ始めてから既に3~4時間経っています。

余りにもお腹一杯過ぎて動けないでいると「ま、ゆっくりしてきなさいよ。」とでも言わんばかりに、シャンパンとミックスナッツが運ばれてきます。そして食後酒。こうなると宴会はエンドレス、夜が近くなるまでワイワイ陽気にテーブルを賑わすスペイン人達、これこそがカルソッツです。

カルソッツが食べられるようになったのは19世紀の終り頃。タラゴナ州にある寒村、VALLEに住む一人の農夫が焚き火でネギを焼いて食べたのが始まりです。20世紀の初めになると、カルソッツは祭日の家族行事となりました。

野外で家族皆が揃い、火を囲んでネギを焼き、肉を焼き、ワインを飲む。最近ではバルセロナ郊外にカルソッツ用のバーベキュー設備が整った貸し別荘が建つようになり、家族や友人達がそこへ集まりエンドレスで陽気な宴を楽しむようになりました。

何をするでもなく、ただ皆が集まって、火を囲み、食べて飲む。観光で本物のカルソッツを味わうのは難しいかもしれませんが、機会があったら是非カルソッツ、堪能して下さい。一番大事なのは時間を忘れる事です。

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