ロシアはなぜウクライナを侵略するのか、ロシアとウクライナの関係
2022/04/04
ロシアがウクライナを大々的に軍事攻撃しています。ウクライナに友人を多く持つ私は、いたたまれない気持ちです。ウクライナとロシアの間で何が起きているのか。ロシアがウクライナを軍事侵攻する理由は何なのでしょうか。
ウクライナ紛争の切っ掛け
2014年、ウクライナの親ロシア派の大統領が、数か月に及ぶ反対運動を受け失脚すると、ウクライナは親欧米派の大統領を有するようになります。それに反発したロシアは、一方的にウクライナ南部のクリミア半島を併合します。
不気味なほど冷静沈着に、ロシアはウクライナに強力な反政府運動を誘発させます。瞬く間にロシアと国境を接するウクライナ東部は紛争地帯となり、泥沼化し、2014年から今の戦争が始まる2022年まで、1万4000人の犠牲者を出しています。
ウクライナの非日常
ウクライナとロシアの衝突が東部の国境沿いだけに限られていたので、ウクライナの人達は普通に生活を続けていました。国の一部が紛争地帯に陥っているなんて嘘のように平和に感じるウクライナを、私を含む多くの観光客が訪れていました。
現在、世界がコロナと共に生きる選択をしつつあるのと同様に、ウクライナの人達は戦争と共に生きる事を余儀なくされていたのです。そんな異常な日常が8年以上続いた今、遂に大々的なロシアの軍事侵攻が始まったのです。
ロシアがウクライナに固執する理由
ウクライナは1991年に独立を果たすまで、ロシアと共にソビエト連邦を構成していました。構成していた15の国々が次々と独立しロシア離れを進める中、ウクライナはロシアとの結び付きを断ち切れずにいました。
どの国よりもロシアとの繋がりが強く、ロシアのウクライナに対する執着がとても激しかったからです。ロシアは他の国々が離れてしまったとしても、ウクライナだけは絶対に手放したくないのです。その理由とは何なのでしょうか。
ロシアの軍事的戦略
ロシアにとってウクライナは、軍事的にとても重要な位置にあります。ウクライナとの国境から首都モスクワまではたったの500km。なだらかな平地が続き、視界を隔てるような山脈はありません。
ウクライナは最後の砦。現在欧米の大半の国々がNATOに加盟しているので、何としてでもウクライナを死守しなければロシアは安心出来ないのです。ウクライナのNATO加盟を阻止する事が、ロシアを守る為に必要不可欠だと主張しています。
ロシアにとってウクライナとは
ロシアがウクライナに執着するのは、軍事的戦略の意味合いだけではありません。昔からロシアはウクライナを兄弟国として特別視してきました。ウクライナはロシア民族、そしてロシア正教発祥の地です。
ロシアは自分達の原点となるウクライナの地を、心情的にどうしても失いたくないのです。ロシアにとってウクライナは兄弟国である以上に、自身の一部だと感じているのです。
ウクライナにとってロシアとは
その一方でウクライナ、特に西部の人達は、オーストリア・ハンガリー帝国に帰属していた歴史を持ち、宗教もカトリックの影響を強く受けています。言語的にもウクライナ語しか話せない人が多い。
加えてウクライナの人達は、国の成り立ちから現在まで常に自由と独立を求め続けてきた人種です。独立心がとても強い。ロシアに絶えず苦汁を飲まされてきた歴史もあるので、ロシア憎しの感情を持ち、ロシア語が流暢でも頑なに使わない人が殆どです。
複雑なウクライナ
ウクライナを複雑にしているのは、ロシアと国境を接するウクライナ東部の存在です。ロシアとの繋がりがとても強い地域で、民族、宗教、言語、歴史、全てにおいてロシア色が強い。
ロシアによる工業化の恩恵を受け、美味しい思いをしてきた地域でもあるので親ロシア派が圧倒的です。言語的に見てもウクライナ語よりもロシア語を話します。そんな状況からウクライナの東部と西部は、同じ国でありながら一枚岩となれなかった。
その結果、ロシア系の住民が多い東部では親ロシア系の過激派の活動、独立派の多い西部では民族主義者の活動が活発となり、長きに渡って衝突を繰り返してきました。
複雑なウクライナの問題を解決するには、誰もが時間がかかると思っていました。でもこんな形でロシアがウクライナに軍事侵略してくるなんて、誰もが予想だにしていなかった。
ウクライナ問題と世界の反応
過去の戦争から多くを学び、完全ではないものの平和な時代を生きていた現代の私達。ロシアがここまでするとは誰も想像すらしていなかった。第二次世界大戦後初となる、大規模で露骨な侵略戦争が始まってしまいました。
テレビに映し出されるウクライナの惨状。あんなにも美しかったウクライナの国が蹂躙されています。その報復として即座に、世界中がロシアに直接的、間接的な制裁を加えています。
残念な事に世界中で紛争が起きていますが、ウクライナには全世界が注目しています。特にヨーロッパの人達にとっては、他人ごとに思えません。地続きの同じ大陸に住んでいるからこそ、次は我が身だと強い危機感を感じています。
ウクライナ人のアイデンティティー
ウクライナとロシアの戦争が今にも始まりそうだった頃、ウクライナの友人から「もしもの時の為にサーロを買った」とのメールを受け取りました。サーロは豚の背の部分の脂肪層を塩漬けにした、ウクライナを代表する食べ物。
見た目は驚くほどにただの脂身の塊で、興味深い事にラードのように調理用として使うのではなく、そのまま生の状態で食べます。塩漬けした後に燻製などの調理過程を経ないので柔らかく、口に含むととろける感じ。
脂身独特のねっとりした食感はあるのですがシツコクさや臭みはなく、ほんのりとした甘さを感じます。ウクライナの人達は余りにもサーロを良く食べるので、周辺各国の人達から「サーロを食う人」と呼ばれています。
サーロの起源がウクライナにあるのかどうかは判明していませんが、誰も覚えていない時代からウクライナに存在していた食べ物。ビタミンや不飽和脂肪酸が豊富で、高カロリーで滋養の高い食べ物。
かつての兵士たちは、サーロを保存食として常に持ち歩き戦っていました。サーロは飢えをしのぎ、パワーの源となる役割だけでなく、捻挫や切り傷などにすり込んで薬の代わりもしていました。
そんな時代を忘れられないほど、戦争を身近として生きていたウクライナの人達。だからこそ今回のロシア軍の侵攻が噂された時、友人のように多くのウクライナ人がサーロを購入し備蓄したのではないでしょうか。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、国家総動員令を発しました。国を守る為に18歳から60歳までの男性の出国が禁止されています。運良く他国に逃げられた人、逃げられなかった人、逃げるすべがない人、あえて逃げなかった人、安全な他国に居ながら国を守る為にウクライナへ戻った人。
何処にいようと、どんな状況でも、ウクライナ人はウクライナ人であり続けるはずです。不安と恐怖の中で、ウクライナ人である事の誇りと共にサーロを噛みしめているかもしれません。一日も早くあの美しい国が解放され、ウクライナの人達に平和が訪れる事を願って止みません。
ウクライナとロシアの問題
ロシアとウクライナの関係はとても複雑です。更に詳しく別記事でまとめました。