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イギリスのアフタヌーンティー:英国貴族の優雅な食文化

   

ヨーロッパ在住20年のフードライターが、世界100ヵ国以上を食べ尽くすの記録。今回は最近日本でも人気が高まっているイギリスの優雅な食文化アフタヌーン・ティーに関する全て、歴史や作法などを解説します。

イギリスのアフタヌーン・ティー

イギリス発祥の有名な食文化アフタヌーン・ティーとは、季節に合わせた料理と可愛らしいスイーツを、美味しい紅茶と一緒に非日常的な空間で優雅に楽しむひとときを意味します。

アフタヌーン・ティーは、イギリス貴族たちの間で確立された食文化の一つですが、最近日本でも頑張っている自分へのご褒美として、高級ホテルのアフタヌーン・ティーが20代から30代の働く女性たちの間で流行っているのだそう。 

アフタヌーン・ティーで大切なこと

アフタヌーン・ティーは、イギリス人が大好きな紅茶と一緒にサンドウィッチやスイーツなどの軽食を、仲間たちと語らいながら楽しむイギリスを代表する食文化。元々は上流階級の人達だけの特権で、単なる食事としてではなく、色々なマナーや作法を伴った社交パーティの場として発展しました。

礼儀作法も重要ですが、何よりも一番はおもてなしの精神。更には室内の家具調度、装飾、食器、テーブルセッティング、装飾の花、会話の内容など、全体の調和を見ながらトータル的にコーディネートすることが大切です。

アフタヌーン・ティーのホスト役になるということは、美味しい食事を仲間たちと楽しむ以上に、センスと知識と教養が試される意味合いも持ちました。まさしくイギリス版の茶道文化とも言えるでしょう。

現在のアフタヌーン・ティー

現在のイギリスでは、アフタヌーン・ティーは上流階級の人達だけでなく、広く一般の人達にまで広まっています。それでもアフタヌーン・ティーは、何か特別な存在。お値段も高級なので誕生日やお祝い事などの、特別な日に楽しむのがアフタヌーン・ティー。

毎日のおやつタイムとしては、アフタヌーン・ティーの簡易版、紅茶とスコーンのセット、クリーム・ティーを楽しんでいます。クリーム・ティーに関しては別記事で詳しく解説しています。

アフタヌーン・ティーの歴史と由来

アフタヌーン・ティーはある公爵夫人によって1840年に生み出されました。当時のイギリスの社交界では、夕食の時間とされる19時から21時の間は観劇やオペラ鑑賞などの社交の時間に当てられる事が一般的。

その間は夕食をとることが出来ないので、事前に腹ごしらえをしなくてはなりません。3時のおやつもかねた夕食も含む食事となるので、スイーツを中心とした、腹持ちのする軽食となりました。

アフタヌーン・ティーは貴族の屋敷のサロンにあるソファーの前に必ず置かれる低いテーブルの上で楽しむのが主流だったので、ロー・ティー(低いお茶)と呼ばれたりもします。   

アフタヌーン・ティーの象徴

典型的なイギリスのアフタヌーンティーの食事は、3段重ねのティースタンドに載せられて登場します。これは通常の食事とは異なり、広いテーブルではなくサロンにある小さな低いテーブルの上で食された事から、狭いテーブルを有効活用する為に作られた食器です。

そのためアフタヌーン・ティーを広い場所で楽しむ時は、正式な作法として3段重ねのティースタンドは使ってはいけない決まりです。ただ現在では、この3層のティースタンドがアフタヌーン・ティーを象徴するものとなっていて人気があるので、通常の広いテーブルでも3層のティースタンドが使われる事が多いです。  

アフタヌーン・ティーの作法

日本の高級ホテルのアフタヌーン・ティーは、サンドウィッチやスコーン、スイーツなどの他にアミューズにスープ、温かい料理やチョコレートなどもついて大変豪華な食事内容となることが多いです。

本場イギリスのアフタヌーン・ティーは日本のものに比べればとてもシンプルで、基本的にはサンドウィッチ、スコーン、ケーキ又はペストリー。決まりとして、ティースタンドの一番下の層がサンドウィッチ、中間がスコーン、一番上の層がケーキ類となっていて、下から順番に食べるのもルールの一つです。

同じ層の中なら、食べる順番にこれといった決まりはないのですが、味の濃いものを先に食べてしまうと、味が分からなくなってしまうので、味が薄そうなものから食べた方がいいとのことでした。

アフタヌーン・ティーの主役スコーン

アフタヌーン・ティーで最も重要な要素となるのが、イギリス人が愛してやまないスコーンです。アフタヌーン・ティーの評価を決まる要素の大きな一つで、どんなに他の食事が素晴らしくても、スコーンが美味しくなかったら台無しとなってしまいます。

スコーンはバターと小麦粉だけで作る、とてもシンプルな家庭菓子なのですが、どのアフタヌーン・ティーのお店でも気合の入った美味しいスコーンを焼きたての熱々でサーブしています。

英国のスコーンに欠かせないもの

イギリスのスコーンに欠かせないのが生クリームとバターの中間のような食感のクロテッドクリーム。牛乳を遠心分離し、低温のオーブンで長時間焼いて作られるクリームで、イギリスではクロテッドクリーム抜きのスコーンは、スコーンとして認めることが出来ません。

産地はイギリス南西端のコンウォール地方。中でも世界で一番のシェアを誇る老舗のロダス(Rodda’s)のものが、一番美味しいとされています。「クラスト」と呼ばれる黄色い乳脂肪の幕が落とし蓋の役割となり、水分をほどよく閉じ込め濃厚ながらも舌触りの良い美味しいクリームとなるそうです。 

イギリス人とキュウリの関係

アフタヌーン・ティーで一番興味深いのはキュウリのサンドウィッチの存在です。アフタヌーン・ティーでは昔から白いパンにバターを塗り、キュウリだけを挟んだサンドウィッチが必ず添えられる決まりです。

栄養価の低いものを新鮮な状態で食べること。ヴィクトリア朝時代ではそれが働かなくても生活できる豊かな階級層の証となっていました。そんな食材の代表格がキュウリです。

貴族階級と対極の位置にいる肉体労働の人達は、短い時間に効率的に栄養と取ることが出来て、腐りにくい具材を中心にサンドウィッチを作っていました。そんな理由があるので、アフタヌーン・ティーのキュウリのサンドウィッチは美味しさから選ばれたものではありません。

それでもイギリス人は昔からキュウリが大好き。高貴なるものへの憧れがDNAに刻まれているのでしょうか。日本人の私にはがっかり要素の一つなのですが、今でもアフタヌーン・ティーには必ずキュウリのみのサンドウィッチが含まれています。 

紅茶の作法 

アフタヌーン・ティーでは最初の一杯はそのままストレートで飲んで、茶葉の味を楽しむのが習わしです。二杯目は一杯目よりも渋味を含むタンニンが強く出るので、ミルクをたっぷり入れて飲みます。

ただ基本的にイギリスでは、紅茶はミルクを加えて飲むことを前提として入れます。最初からミルクを加えた方が丁度良い感じになっているかもしれません。一杯目の紅茶はお店の人が入れてくれます。

二杯目からは自分で入れて飲むのが一般的。イギリスのティーポットは日本のものとは異なりストッパーがついているので、落ちないように蓋に手を添えて紅茶を注ぐ必要はありません。

ティーポットの蓋に手を添えるのは日本特有の習慣なので気を付けましょう。イギリスでは利き手の片手だけで持ち紅茶を入れるのが優雅とされています。紅茶を飲む時はソーサーも持ち上げて飲みましょう。

特にローテーブルで紅茶を飲む場合、テーブルとの距離があくのでソーサーをきちんと持って紅茶を飲んだ方が優雅で品が良く見えます。  

アフタヌーン・ティーのエチケット

アフタヌーン・ティーを楽しむ時は、服装にも気を付けましょう。男性だとサンダルなど素肌が見える履物はマナー違反となります。ネクタイまでは必要ありませんが、スマートカジュアルを意識した方が良いです。

イギリスの茶道ではありますが、日本の茶道に比べたらマナーや覚えるべき作法が少ないです。格調高い高級ホテルのアフタヌーン・ティーだとしても、マナーやしきたりは殆どありません。

元はと言えば公爵夫人のつまみ食いが発祥です。本来貴族とは自由奔放でゆるい人たち。口うるさくいうことの方が野暮だと思う人種です。ゆったり楽しむことが一番大切なので、あまりカチカチにならず、リラックスしてアフタヌーン・ティーを楽しんで下さい。 

イギリスの美味しい料理

「イギリスは不味い」とされていますが、今回紹介したアフタヌーン・ティーのように美味しいものも沢山存在します。長年のイギリス留学中に食べ尽くしたイギリス料理の数々を別記事で紹介しています。

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