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ポルトガルを代表する料理:ポルトガル人と干しタラの関係

      2022/07/26

ヨーロッパ在住20年のフードライターが、世界100ヵ国以上を食べ尽くすの記録。今回はポルトガル料理の基本となる干し鱈に関する全て。ポルトガル人と干しタラの深い関係を紐解きます。

ポルトガルを代表する食材

ポルトガル料理と言えばバカリャウ(Bacalhau)です。バカリャウとはポルトガル語で干しタラを意味し、ポルトガルには毎日作り続けても大丈夫なぐらい、365以上のバカリャウ料理のレシピがあると言います。

ポルトガルの人達はバカリャウが本当に大好き。海に面した国なので、バラエティ豊かな海の幸に恵まれているのにも関わらず、ポルトガルの人達は干しタラばかり食べています。

ポルトガル人が年間食べる魚介類の半分近くを干しタラが占め、国民一人当たりの干しタラ消費量は世界一。同じような食文化を持つ隣国スペインもタラを好んで食べますが、ポルトガルほど極端に偏ってはいません。

ポルトガルと干しタラの関係

ポルトガルと干し鱈の関係はとても古く、15世紀半ばの大航海時代にまで遡ります。タラは塩に漬けた後、数か月ほど乾燥させると全ての水分が抜けて長期保存が可能になります。

長い航海に最適だったので、大航海時代に必要不可欠な食材となりました。そんな時代の名残がポルトガル人のDNAに刻まれているのでしょうか。海の幸に恵まれていながら、ポルトガルの人達は現在でも、干しタラを好んで食しています。

グローバル化した干しタラ

大航海時代に生まれた干しタラは、ポルトガルから南米へ持ち込まれ、その後貿易で盛んに取引されるようになります。その結果、北半球の寒冷な海にしか生息しないタラが、本来なら縁遠いはずの南半球を含めた世界中の国々で食されるようになりました。最も古いグローバル化に成功した食べ物なのではないでしょうか。

ポルトガルの匂い

ポルトガルの特に小さな町を訪れると、何とも不可思議な匂いに包まれます。生臭いのに乾ききった、そんな独特の匂いを追うと干し鱈を売っている店に辿り着きます。

ポルトガルでは町中の至る所で干しタラが売られているので、ポルトガルを歩いていると、何だか常に干し鱈の匂いがするのです。 

バカリャウの調理法

干し鱈は調理する前に塩抜きが必要です。これがかなり面倒で難しい。タラの大きさや身の厚さによって数時間から数日間冷たい水に浸けます。その間何度も水を替えなくてはなりません。

塩抜き時間が少なすぎると塩辛く身がパサパサになり、時間が長すぎると旨味が失われ締まりのない身になってしまいます。丁度よい塩加減とプリっとした弾力のある状態に戻すには、丁寧さと経験が必要なのです。

この塩抜きの過程が、ポルトガルのバカリャウ料理の味を決定づけます。最近ではスーパーなどで、既に塩抜きされて直ぐ料理できる状態のタラを販売しています。保存が効かないので、冷凍されて売られている保存食。

ならば最初から生のタラの切り身を冷凍すればいいのでは、と思うのは外国人だけのようです。タラを塩に漬けて乾燥させる事により、身の繊維に弾力が生まれ旨味が凝縮されます。生のタラとは食感や味わいが大きく異なります。

確かに同じレシピで生のタラを使って調理しても、同じような味にはなりません。ただ外国人的には、生のタラの方がみずみずしく、それはそれでありなんじゃないかとも思いました。

でもポルトガル人的には、干し鱈でないタラをタラとは呼べません。大航海時代の先祖たちのDNAが欲するのか、冷蔵庫や冷凍の技術が発達した現在でも、ポルトガルの人達は頑なに干し鱈を食べ続けています。

今食べるべきポルトガル料理

 干し鱈は原産地や身の厚みによって値段が異なります。昔からバカリャウは庶民の味方、安価な食材だったのですが、1990年頃からタイセイヨウダラの資源量が激減し、どんどん価格が上がっています。

この調子でいくと数年後には超高級魚となってしまい、経済的に貧しいポルトガルのタラ料理は廃れてしまうかもしれません。なので今のうちに是非、ポルトガルのバカリャウ料理、満喫して下さい。

おすすめのポルトガル料理

ポルトガル料理と言えば干しタラ料理ですが、ポルトガルには干しタラ以外の料理も沢山存在します。ポルトガル料理は日本人の口にも良く合う美味しい料理。別記事でポルトガルを訪れたら絶対に食べるべき、おすすめのポルトガル料理をまとめました。

バカリャウ・ア・ゴメシュ・デ・サ 

星の数程あるレシピの中で、ポルトガル人の食卓に登場する回数が一番多い料理がバカリャウ・ア・ゴメシュ・デ・サ( Bacalhau à Gomes de Sá) 。ポルトガル北部のポルトの街にあるレストランのシェフ、ゴメシュさんが作り出した料理なので、「ゴメス氏の干し鱈」と名付けられました。

数十年前に生まれたレシピなので、歴史のある料理ではないのですが、親しみやすさから直ぐ全国的に広まり、今ではポルトガルの定番料理となりました。

日本では干し鱈を購入するのが難しいかと思います。生のタラだと上手く再現出来ないポルトガル料理が多いのですが、この料理はさほど引けを取りません。 レシピを掲載するので、是非皆さんもご自宅でポルトガルの味を試してみて下さい。

ポルトガルのバカリャウ料理のレシピ

材料 4人分 
タラの切り身 500グラム 
玉ねぎ 2個 
ニンニク 2カケ 
イタリアンパセリ 適量 
じゃがいも 500グラム 
牛乳 適量 
卵 2個 
オリーブオイル 200ml 
こしょう 少々 
月桂樹の葉 2枚 
黒いオリーブの実 適量 

1 干し鱈を正しい方法で塩抜きします。基本的には24時間冷たい水に浸けます。その間に何回か水を替えて下さい。 

2 干し鱈が入る大きな鍋で、月桂樹の葉をいれた水を沸かします。 

3 水が沸騰したら塩抜きしたタラを入れ、再びお湯が沸騰したら火を止めます。火を止めた状態で蓋をして5分ほど置いておきます。生のタラを使う場合は電子レンジで調理します。耐熱皿に並べて塩を振り、そのまま蓋をしないで2~3分調理します。 

4 茹でたタラをザルにあげ水気を切ります。茹で汁は捨てないで下さい。 

5 タラの皮と骨を取り除きます。身を細かく裂きながら小骨までしっかり取り除きましょう。 

6 タラをパットなどに移し、沸騰しない温度、70度ぐらいの牛乳を注いで30分ほど浸しておきます。 

7 タラを茹でたお湯でジャガイモを煮ます。濃い味が好みなら、塩抜きした時の水を使います。ただ塩抜きして最初の水は塩分が強く、タラの表面に着いた汚れなども含まれるので、2回目以降の水を使って下さい。新ジャがが一番相性がいいです。茹でる時に柔らかくなり過ぎないよう注意して下さい。 

8 別の鍋でゆで卵を作り、適当な大きさにカットします。 

9 エキストラバージンオリーブオイルをフライパンで熱します。月桂樹の葉、薄切りにした玉ねぎ、細かく刻んだニンニクをゆっくり炒めます。焦げないように注意しながら、大量の油で揚げ煮する感覚です。じっくり炒め煮しましょう。 

10 玉ねぎが柔らかくなったら月桂樹の葉を取り除き、火を消してから水分を切ったタラを入れてかき混ぜます。 

11 オーブンを180度に予熱する 

12 深皿にジャガイモをお好みの大きさに切って並べる。その上に先ほどのフライパンの中身を全てのせる。 

13 卵、オリーブの実で飾り付けてオーブンに入れ5分ほど焼く。 

14 最後に刻んだイタリアンパセリを上にちらせたら完成です。 

作る時のポイント 

◇正式なレシピでは、上記のように最後の仕上げをオーブンでします。家庭のレシピではボールに茹でたジャガイモを入れ、フライパンで炒めた玉ねぎとニンニクを加え混ぜてから器に盛り、ゆで卵とオリーブの実で飾り付けして完成です。殆ど味に変わりがないので、最近ではオーブンの過程を省略するのが主流となっています。 

◇ポルトガルの人達はかなり大量のオリーブオイルを使います。日本の方なら若干少な目にしても大丈夫かと思うのですが、余り少なすぎるとあっさりし過ぎてしまって本場の味からかけ離れてしまいます。 

◇やはり干し鱈を使った方が味がしっかり出るのですが、生のタラの切り身でも大丈夫なレシピです。ただ味にインパクトが多少足りなくなるのでタラの量は多め、塩でしっかり味付けして下さい。干し鱈を使う場合は基本的に塩は使いません。より本場の味に近づけたい場合は、調理前日にまんべんなく塩をまぶしたタラをキッチンペーパーにくるんでパットの上に置き、冷蔵庫で一晩寝かしてから使います。 

◇パセリはイタリアンパセリであるべきです。なければパクチーを使った方がより本場の味に近くなります。ただなくても別に問題はありません。 

  

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