オランダは何故チューリップなのか、オランダとチューリップの関係、チューリップバブル
2021/12/17
オランダと言えばチューリップ。これは世界的な認識です。それでは何故、オランダと言えばチューリップなのでしょうか。オランダとチューリップの深い関係を紐解きます。
オランダとチューリップの関係
オランダがチューリップで有名なのは、世界一の生産量を誇るからです。チューリップに限らず、オランダはヒヤシンス、グラジオラス、ユリなどの球根栽培が盛んな国で、世界の市場に出回る花の約55%がオランダで生産されています。
チューリップの原産地はトルコのアナトリア地方。16世紀の末頃にオランダに伝えられました。持ち込まれた当初のチューリップは正に「高値の華」。この色鮮やかな美しい花を愛でる事が出来たのは、極限られた上流階級の人々だけでした。
オランダの涼しい気候と、水はけは良いけれど常に湿気のある土壌は、チューリップの栽培にとても適しています。そのため17世紀頃にはオランダにチューリップが広く浸透し、爆発的人気となりました。
チューリップは他の植物より交配がしやすく、改良を重ねるたびに色や模様が変化する楽しさがあります。オランダではチューリップが広く普及しただけでなく、新しい品種が次々に開発されるようになりました。
オランダ人気質とチューリップ
花の命は短くて。花に携わるにはスピードが重要です。同時に花はとてもデリケートな商品なので、色々な面で繊細さが要求されます。これがまさにオランダ人気質にぴったり。だからこそチューリップと言えばオランダとなったのです。
例えば同じヨーロッパでも、ラテンな国のスペイン人やイタリア人に絶対この芸当は出来ません。 チューリップの世界はハイテクの世界でもあります。生育、販売、流通、各方面で綿密なITシステムが整えられています。
全ての面で迅速かつスムーズに進行されるよう、オランダ人特有の几帳面さで完璧に整えられているからこそ、オランダのチューリップは世界で一番なのです。
合理主義のオランダでは花より球根
3月中旬から5月にかけて、オランダ各地でチューリップが満開になります。でもオランダのチューリップは、花では無く球根が商品です。花が咲いた状態で放置すると大事な商品である球根から栄養が抜き取られてしまいます。
球根を太らせた状態で出荷するには、開花したらすぐに花を刈り取ってしまわなければなりません。 一度開花させる事もとても重要。花びらに変な斑が出ていれば球根がウィルスにかかっている証拠。商品になりません。
そのチェックさえ終われば、トラクターで一気にチューリップの花を摘み取ってしまいます。色とりどりに美しく咲いたチューリップの花畑は本当に美しい。でも本当にあっという間に、花だけが刈り取られてしまいます。
憧れのオランダチューリップ畑の現実
チューリップ畑の中にトラクターを発見しました。チューリップの死刑執行人、花を刈る機械です。 球根を傷つけないよう、花だけを刈り取っていきます。この機械が通った後には何も残りません。あんなにカラフルだったチューリップ畑が緑一色になります。
花の部分 だけがちょん切られ、葉っぱだけとなったチューリップ畑。何だかとても不憫で無残な姿です。機械で取りきれなかった花は後から一つ一つ丹念に、人の手によって摘み取られます。
素人の考えで「球根だけ残して、花と葉を刈り取る機械を作ればどちらも売れて一石二鳥なのに。」と呟いたら、「葉を残す事で球根を更に太らせる事が出来るから、花だけを刈り取らなきゃならないんだよ。」との答えが返ってきました。
確かに全て理に適った事です。でも花の命が余りにも短すぎて切ない。咲くと同時に無残に刈り取られ、ゴミとして朽ち果てるチューリップの花。そんな事情があるので、オランダで視界一面のチューリップを見るのは結構至難の業です。
どうしてもオランダで色とりどりの満開のチューリップ畑を見たい方は、別記事で詳しくまとめた対策法を必ず読んで下さい。必見です。
オランダの世界初のバブル事件
オランダのチューリップには、余り知られていない黒歴史があります。 余りにも人気が沸騰し、チューリップ・バブルと呼ばれる現象が起きました。稀有な品種のチューリップには当時の平均年収8年分にも値する高値が付いたのです。
珍しいチューリップを持つ事が富の象徴となりました。チューリップの取引が王族や貴族、お金持ちの間だけで終わっていた時代はよかったんです。おかしくなったのは、これに目をつけた一般大衆がチューリップの取引に参加しだしてからです。
人々は競って新種の開発に手を出すようになりました。自分の庭に珍しいタイプのチューリップが生まれる。その球根を売れば家が一軒買えるような大金が転がり込んだのです。その結果チューリップ成金の人達が国中に増えました。
価格は更に高騰し、チューリップを植えた自宅の庭を徹夜で監視するようにまでなりました。でもある日突然バブルがはじけます。 チューリップの価格が暴落し、ついには全く買い手が見つからない状況になったのです。
人々はパニック状態になりました。国や裁判所が救済に乗り出しましたが時既に遅く、国中に破産者が続出しました。これは世界で初めて起こったバブル経済事件で、近世ヨーロッパの三大バブルに数えられています。人類の歴史上、最も劇的な価格暴騰、暴落を演じたバブルとも言われています。
オランダの国花とチューリップの日
チューリップはオランダの国花です。チューリップを国花としている国は結構多く、原産地であるトルコをはじめ、ハンガリー、イラン、アフガニスタン、カザフスタンなどの国もチューリップを国花としています。
オランダにはチューリップの日も存在します。1月の第三土曜日がチューリップの日に指定されていて、各地で多くのイベントが開催されます。特に首都アムステルダムのダム広場で行われる、チューリップ摘みのイベントが有名です。寒い中かなり並びますが、無料で20本までチューリップを積む事が出来ます。
オランダに関する色々な情報
オランダと言えばチューリップ、でももう一つ有名なモノがあります。風車です。何故オランダと言えば風車なのでしょうか。オランダ人がオランダという国を作る為に、風車は絶対不可欠なモノでした。オランダと風車に関する詳細は別記事でまとめてあります。
オランダはチューリップや風車だけの国ではありません。オランダは見所満載の観光大国。おすすめのオランダの観光地を別記事で詳しくまとめました。
九州ほどの大きさしかないオランダですが、世界に誇る有名なモノが多いです。小さな巨人オランダの、世界で一番をまとめました。