オランダはとても興味深い国です。見所がとても多いのですが、なぜか誰もオランダ料理については話したがらない。グルメな国が多いヨーロッパの中で、アンチ美食の国とさえ呼ばれる異色の存在です。ヨーロッパ在住30年のフードライターが、世界中を食べ尽くすの記録。今回はオランダの食べ物について。
美食の境界線?宗教と食文化の意外な関係

私は美食の国スペインをメインに住んでいます。周りのスペイン人達はよくイエス・キリストの言葉をもじって 「人はパンのみによって生きるにあらず。前菜もメインディッシュもデザートだって必要だ」 なんて冗談をとばします。
ヨーロッパでは一般的にカトリック文化圏は美食の国、プロテスタント文化圏は美食を好まず、なんて認識をされています。ヨーロッパはグルメな地として有名ですが、確かに有名なのはスペインをはじめ、イタリア、フランスなどのカトリック教徒国が殆どです。
質素倹約の精神:プロテスタントの影響とオランダの食卓

オランダの宗教はプロテスタント。更には厳しいカルヴァン派の影響が色濃く残っている国です。美食の国のラテン人が「食べるために生きる」なら、オランダ人は「生きるために食べる」人達。古くから「食事とは味わうものではなく、空腹を満たすためのもの」との認識があります。
そんなオランダ人の食生活は至ってシンプル。経済力のある人達なのに、貧相とすら思える程の内容です。寒い国なので野菜や果物の種類が少なく、芋や豆などを使った安価で高カロリーな料理が多いのも特徴の一つです。
「味覚音痴」は本当?オランダ人の食へのスタンス

勤勉、質素、倹約を重んずるオランダに、グルメを求めてもしょうがないかと思います。オランダ人は味覚音痴とまで言われますが、美味しいものは美味しいときちんと感知出来ています。ただ単に食にこだわらないだけなのだと思います。
学生時代にオランダ人の誕生日パーティに招かれた時のカルチャーショックは、未だ忘れられません。メイン料理がパスタにハムとチーズを細かく切って混ぜただけの料理でした。そしてそんな料理に戸惑っていたのが、カトリック系の国の人達だけだったのです。
国民食「クロケット(コロッケ)」の魅力と自動販売機文化

食に無頓着なオランダ人ではありますが、好きな食べ物は存在します。コロッケです。コロッケは何処の国でも人気のある食べ物ですが、オランダ国民のコロッケ好きは世界的に有名です。
オランダを旅行した人達は無数のコロッケ屋さんの存在に驚きます。オランダにはコロッケの自動販売機まであります。お金を入れるとショーケースの蓋が開けられるようになっていて、中のコロッケを取り出す事が出来ます。
回転が速いし、そんなに作り置きもしていないそうなので、カリッとした美味しいコロッケが何時でも手軽に食べれます。街中のレストランやカフェでもコロッケは定番中の定番、一番人気の料理。日本のカニクリームコロッケのカニの味がしないコロッケみたいな味で、まぁ、普通に以外と美味しいです。
【2026年最新情報】オランダのコロッケ事情とおすすめスポット
2026年現在、オランダの物価上昇に伴い、以前は安かった自動販売機のコロッケも、現在は約3.5ユーロ(約500〜600円)前後が相場となっています。また、ほぼすべての店舗・自販機で「カード決済のみ(完全キャッシュレス)」となっているため、クレジットカードやデビットカードの準備が必須です。
観光の合間にぜひ立ち寄っていただきたいのが、アムステルダムで最も有名な老舗コロッケ店と、名物の自動販売機チェーンです。
- バン・ドッベン (Eetsalon Van Dobben)
創業1945年の伝説的な食堂。ここの「クロケット・ブローチェ(コロッケパン)」は絶品です。 - フェボ (FEBO)
オランダ全土にある自動販売機スナックのチェーン店。小銭ではなく、タッチ決済で熱々のコロッケを購入するスタイルが定着しています。
なぜ牛乳?オランダ人の高身長を支える乳製品習慣

揚げ物と言えばビールですが、オランダ人は何故か牛乳と一緒に食べます。 コロッケに限らずオランダ人は牛乳を良く飲むんです。牛乳は家で飲むものだと思っていましたが、オランダ人達は違います。何時でも何処でも牛乳を飲んでいます。
夕暮れ時に普通のカフェバーで、スーツ姿の男性達が揃ってコロッケをつまみながらコップに入った牛乳を飲んでいる姿を良く見かけました。世界で一番平均身長が高いのはオランダ人なのだそう。この牛乳好きがオランダ人達をスクスクと成長させているのかもしれません。
港町でも要注意?オランダのシーフード事情

オランダは海に面しているので「美味しいシーフードが食べられる国」なんて誤解をしている方もいらっしゃるかもしれません。でもオランダのスーパーを見れば一目瞭然。魚貝類の品揃えは貧相で残念な感じです。
オランダ人が好んで食べる魚はタラなどの白身魚系、そしてニシンぐらい。でも家で食べるより、街の至る所にある魚フライの売店で食べる事の方が多いです。魚フライなので不味くなりようがなく味は普通に美味しいです。
市場で味わう絶品「キベリング」
スーパーの品揃えは寂しいですが、市場(マーケット)に行けば話は別です。特にタラの切り身を揚げた「キベリング (Kibbeling)」は、特製のガーリックソースやタルタルソースをかけて食べると最高のスナックになります。
アムステルダム最大級の市場「アルバート・カイプ市場」では、新鮮な魚介類のフライや、後述するニシンをその場で楽しむことができます。お昼時には地元の人や観光客で大変混雑しますので、午前中の早い時間帯がおすすめです。
絶品!「ハーリング(ニシンの塩漬け)」と解禁日の熱狂

コロッケよりもオランダ人が大好きな食べ物がありました。ニシンです。ニシンは一年を通して食べらている、オランダで一番人気の魚。中でもオランダ人が心から愛して止まないのが6月の中旬前後の解禁日直後に出回る初ニシン。
ホ-ランツェ・ニューヴェ(Hollandse Nieuwe)と呼ばれ、待ちに待った解禁日となるとオランダ中が大フィーバーとなります。日本のボージョレ・ヌーボの解禁日なんかとは比較できない程の熱狂です。
この生タイプのニシン、ハーリングはオランダ人が大好きな食べ物ってだけでなく、オランダで一番美味しい食べ物だと思います。ニシンに関しては、別記事で詳しくまとめました。これだけを食べにオランダへ行ってもいい位に至福の味です。

ハーリングの美味しい食べ方とおすすめ店
ハーリングには刻んだ玉ねぎとピクルスが添えられるのが一般的です。地元っ子のように、尻尾をつまんで上を向き、豪快に一口で食べるのが「オランダ流」です(アムステルダムでは一口サイズに切って提供されることも多いです)。
アムステルダム中心部にある「フレンス・ハーリングハンデル (Frens Haringhandel)」は、王室御用達とも噂される有名屋台で、常に新鮮なニシンを提供しています。観光の合間に立ち寄りやすい立地も魅力です。
冬の風物詩:揚げドーナツ「オリボレン」

オランダで一番有名なスイーツはオリボレンと呼ばれる揚げドーナツです。冬が近くなると街中の至る所にこの「オリボレン」の売店が出現します。小麦粉、卵、イースト、牛乳で作るボール状の生地を、高温の油で揚げたシンプルなドーナツ。
寒い冬に食べる揚げたてのドーナツは本当に美味しいです。優しい味がして心がほっくりします。まさにクリスマスのシーズンに相応しい味。最近では色々な味のオリボレンが売られるようになりました。オランダ人の味覚も進化しているのです。
レーズン、砂糖漬けの果物の皮、アップル、クリームチーズなどの揚げドーナツが人気です。オランダ人は食べる前に粉砂糖やシナモンをトッピングして食べますが、ドーナツ自体が少し甘いし、何よりも大きいので、日本人は砂糖無しで丁度良いかと思います。
2026年のオリボレン屋台情報
オリボレンの屋台は、通常11月上旬から1月中旬にかけて街中に出現します。2026年の価格相場は、プレーンなもので1個あたり約1.5ユーロ〜、詰め物入りで2ユーロ〜程度です。大晦日にシャンパンと一緒にオリボレンを食べるのがオランダの伝統的な年越しスタイルですので、年末に旅行される方はぜひ体験してみてください。
お土産のマストバイ:焼きたて「ストロープワッフル」

オランダのお土産には、ストロープワッフルを買いましょう。薄いカリカリに焼いた2枚のワッフルでキャラメルシロップを挟んだオランダの伝統的なお菓子です。食べる前にコーヒーカップの上に少し置いて中のキャラメルを温めると更に美味しくなります。
お土産には日持ちのするスーパーなどで売っているパッケージに入ったストロープワッフルが適しています。でもオランダを訪れたからには、出店で作っている出来立ての手作りストロープワッフルを食べてみて下さい。
出来立ては本当に最高に美味しいです。市販品より大きくて、焼きたてなのでホカホカして、もう本当に比べようがないくらい最高に美味しい。見かけたら迷わず購入して下さい。人通りの多い道、広場によく出店が出没しています。
絶対に行きたい名店「ランスクローン」
屋台も美味しいですが、アムステルダムのシンゲル運河沿いにある老舗ベーカリー「ランスクローン (Lanskroon)」のストロープワッフルは別格です。100年以上の歴史を持ち、サクサクの生地と甘すぎないキャラメル、そして蜂蜜入りのフィリングが特徴です。お土産用はもちろん、店内でコーヒーと共に味わうのが至福の時間です。
「新しいオランダ料理」の台頭とグルメの楽しみ方
オランダ料理を食べたいと思っても、典型的なオランダ料理を見つけるのは難しいかと思います。日本の寿司、インドのカレー、などのように世界的な知名度のあるオランダ料理が存在しません。
ただレストランは何気にレベルが高いので、典型的なオランダ料理にこだわらなければ美味しい物が食べられるかと思います。これと言ったオランダ料理はないのですが、美味しい物はきちんと存在します。
前述の生ニシンや、料理ではないけれどチーズやビールのクオリティは素晴らしく、世界中に輸出されています。オランダは九州程の大きさしかない小さな国ですが、世界に誇るものが結構沢山あるんです。別記事でオランダの有名なものをまとめました。

2026年のオランダ食トレンド:フードホールへ行こう
伝統料理が少ないと言われるオランダですが、近年は古いトラムの車庫などを改装した「フードハーレン (Foodhallen)」のようなお洒落なフードコートが大人気です。ここでは、モダンにアレンジされたオランダ料理や、世界各国の料理を一度に楽しむことができます。
また、アムステルダムを中心に、環境意識の高まりから「ヴィーガン(完全菜食)」対応のレストランが急増しており、野菜料理のクオリティはヨーロッパでもトップクラスになりつつあります。「ダッチ・キュイジーヌ」は今、新しく生まれ変わりつつあるのです。
オランダという国の魅力:風車と人々の気質
オランダはグルメには弱い国ですが、それを補って余るほど魅力に溢れた国です。個人的にはオランダ人気質が一番の見所だと思っていますが、オランダと言えばやっぱり風車、オランダの国を作った立役者です。別記事で詳しくまとめたので是非こちらも読んでみて下さい。



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